38話 準備と独占
投稿再開です!
西女祭から数日の放課後、帰り際に赤鳥君が話し掛けてきた。
「ちょっくら話があんだけど、いいか?」
愛実さんと霞さんと教室に残り、神妙な面立ちの赤鳥君が口を開いた。
「西女祭でさ、積木が会長さんと回ってる時、俺が濡れTフェスを心行くまで堪能してただろ?」
「鼻の下伸ばさんように、必死になってクールぶってたな」
「茶々入れんな、瓦子。で、濡れTトゥーンで絶賛活躍してた俺の勇姿を観てた、ピチピチの濡れT女子達に囲まれたんよ!どぅへ」
「話長くなるのかー?」
「洋、カスミン、帰ろ。コイツの話は時間の無駄」
「待て待て待て待て! 前置きはここまでだから!」
愛実さんの次はないからな空気に、赤鳥君も流石に姿勢を正し、咳払いを一つした。
「でよ、チヤホヤされてる時にさ、女子の1人がポロッと言ってたんだ。『闘技の女帝』が参加してたら、一人勝ちしてたよねー、って」
「それって、イヴの事じゃん」
類稀なる運動神経や功績から『闘技の女帝』と、呼ばれてるイヴさん。
最近もプロ相手に大差をつけて勝ったと、大々的に話題になったばかりだ。
「あぁ。ほんで、木林森イヴの近況を知ってそうなその子に、情報収集がてらにちょいと聞いてみたんよ」
「おぉー気が利くじゃーん」
「でしょ? したらドンピシャ、同じ高校に通ってる子だったのよ!」
「イヴさんと同じって事は、一全体育高校……」
プロやオリンピック強化選手を数多育て上げた、日本屈指の体育高校だ。
イブさんを筆頭に、今年は黄金期と呼ばれてる程、優秀な同世代の子が多く、華々しい功績を更新し続けてる。
しかも全員が女の子で、尚の事大注目されてる。
「でよでよ! なんで濡れTトゥーンに参加しなかったのか聞いたら、木林森は今週の土曜日の為に、何かの準備で大忙しだとよ!」
「準備って事は……」
「あぁ! 次に動くのは、木林森イヴだ!」
身体を使った略奪戦なら、僕らの勝ち目は0に等しい。
ただそれは、あくまでも何もしてなかったらの話だ。
心身共に鍛えた球技大会から数週間経っているけど、まだまだ衰えてはいないんだ。
どんな条件で、どんな環境なのか、近い内に連絡が来る筈だから、念には念を込めて身体のポテンシャルを維持するんだ。
♢♢♢♢
悶々と略奪戦対策を考えながら帰宅後、着替えるのに自室に入った。
「長期戦か短期戦か……単体戦か団体戦か……どっちでもイケるのがイヴさんだからな……ブツブツ……」
「思い詰めてる顔もいいねん、洋チン」
「ひゃ!? そ、その声は、ひーちゃん!? って、何で下着ぃ!?」
「着替えてたんだよん、へへ」
ベッドで横になってるブロンドのハーフ美人さん、ひーちゃんこと北坂向日葵ちゃん。
進学校東海高校1年生で、東海高校四大美女の1人でもあり、僕と幼少期を1年過ごした、幼馴染4人の内の1人だ。
そして、高校で再会した際に、花嫁候補の1人として花嫁修行に励んでると聞いた、翻弄系女子だ。
「ワタシの生着替えを見ながら、洋チンも着替えてもいいよん」
「しないよ!?」
脱衣所まで急いで向かい、ちゃっちゃと着替えを済ました。
案の定、脱衣所を出るとタートルネックに着替え終えたひーちゃんが、スーンとわざとらしい臍曲げ顔で待ってた。
一緒にリビングに行き、ソファーで隣り合って座った。
「それで今日はどうしたの?」
「愛実チンと付き合うって聞いたから、お祝いしにきたんだよん」
「え? そ、それじゃあ、花嫁うんぬんが……」
「それとこれとは別だけけろ。ワタシ達の最終目的はお嫁さんだから、道中で彼女の1人や2人出来たところで動揺しないよん」
明確な最終目的のお嫁さんに、自分が行き着くのなら、誰と付き合おうが構わない。
これはひーちゃんの冗談のない本音だ。
「でも、妬けちゃうには妬けちゃうから、今だけ独占しちゃうよん」
「め、目が怖いよ、ひーちゃん」
「大丈夫だけろ。これから先は、とろける様な体験が待ってるだけだよん……」
退路を塞ぐ様にじわじわと、ソファー端へと詰め寄ってくるひーちゃんが、僕に向けてファサッと何かを顔に被せて来た。
肌の温もりに近く、いい香りがする黒色のそれは、紛れもなくひーちゃんの下着だったものだ。
どうやってタートルネック状態から脱いだのか。
はたまた、最初から着けてない状態だったのか。
どちらにせよ、既に豊満な胸が僕の身体に触れ、無闇に動けなくなってる。
「じゅるり……それじゃあ、いただきま」
「ま、待っ!?」
大接近するひーちゃんが止められない中、インターフォンが鳴り響き、動きが止まった。
直後、数人分の慌ただしい足音が近付き、扉が激しく開かれた。
「あぁぁぁぁぁぁああああああ!? よー君とイチャイチャするなんてズルィイイイイイイイ!」
「ふ、ふーちゃん!?」
「抜け駆けしたのに、もう来たのねん!」
「ひーちゃんの抜け駆け魔ぁああああ!」
「見え見えなロケットタックル程、回避しやすいものはないよん! ほりゃ!」
「え。あ、ちょ!? ふ、ふーちゃん止まっぶ!?」
ひーちゃんの回避によって残された僕は、強烈な豊満胸埋めを食い、ふーちゃんを受け止められた。
そんなツインテールの白髪美少女、兼森吹雪ちゃんこと、一歳上のふーちゃん。
ひーちゃんと同じく、東海高校四大美女の1人で、幼馴染の1人、そして花嫁候補の1人。
宵絵さんの実妹で、苗字違いは親戚のを名乗ってる。
「ふ、ふーふぁん、だいふぉーふ?」
「あん♪ 大好きって言ってくれたの? 私もよー君が大好き♪ いっぱいおっぱいにむしゃぶりついていいからね♪」
「んぐっ!?」
「おいコラ吹雪! 洋さんが窒息するだろ!」
「にゃん!?」
「ふぱっ! あ、ありがとう、しゅーちゃん」
「え、えへへ……そ、それよりごめん洋さん! 勝手にお邪魔しちゃって!」
ふーちゃんを引き剥がして助けてくれた癖っ毛赤髪ショートの美少女、しゅーちゃんこと市瀬秋子ちゃん。
東海高校四大美女の1人で、同じ歳で生徒会長に就いてる、幼馴染で花嫁候補の1人だ。
「あれ? 蒼お姉ちゃんと空ちゃんがいませんけど、まだ帰ってないんですか?」
「ん? 呼んだかしら、桜」
「ぴゃああああああ!? あ、蒼お姉ちゃん! 背後から声を掛けるなんて酷いです!」
姉さんの声掛けで足腰が震えてる、桜のロングストレートヘアーの美少女、さーちゃんこと榮倉桜ちゃん。
東海高校四大美女の1人で、花嫁候補で幼馴染の同じ歳の子だ。
連絡無しに4人が集まったとなると、交際の祝福ではなく、並々ならぬ事情があるに違いない。
土日はお休みです!




