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36話 濡れTトゥーン

 濡れTトゥーンで一番の脅威は、ビューティービーナスチームの運動系万能人間の師走さんだ。

 しかも大型水鉄砲二丁持ちで、開始早々単独特攻して来てる。

 狙いは僕らルーキーチームで、両挟みのゲストチームを突っ切る気だ。


「来たわね! 貴方の無謀な特攻も、Merryは通さあびゅべびゃ?!」

「口より手を動かした方がイイっすよ! それー!」


 嶋さんを含めた数名が、一気にびしょ濡れ水着になりアウト。

 観覧席は現役人気グラドル達の濡れ水着姿に、大興奮だった。


「後輩諸君! お耳に入れるっす! まず前衛の黄坂後輩を潰すっすよ!」


 強者と余裕故の、有言実行宣言に負けじと、僕らも真っ向勝負。

 僕らの水狙撃を、ことごとく躱し、黄坂君を濡らしに来る師走さんは、まだ気付いてない。

 黄坂君の大きな身体で生まれた死角。

 その死角に潜む、小さな伏兵菫ちゃんの狙撃を。


「貰ったです!」

「む! へりょっす!」


 菫ちゃんの死角狙撃が、並外れた運動能力で回避された。

 その上、的確な反撃をする師走さんは、敵になると本当に厄介だ。


「それそれそれ! 霞後輩と峰子後輩の服を削ったっすよ!」

「濡れてると、動く度に破れ易くなるのか……迂闊に動けん」

「あーしが犠牲になるからーその隙に反撃してくれー」

「立派な犠牲心だけじゃ、仲間は守れないっすよ!」

「ま、マズイ! あ、し、師走さん! 河童が出た!」

「え! どこっすか!? ハッ!」


 素直で天然な性格の師走さんは、こう言った簡単な言葉で隙が生まれる。

 逃げ様にも敵陣のど真ん中、いくら師走さんでも四方八方からの同時狙撃は避けられず、濡れスク水姿でアウトになった。


「とほほっす! でも、敵ながら天晴れっす!」

「あざした! 沙良先輩!」

「うっし! 師走パイセンのお陰で、ゲストチームにも隙が出来んだ! 一気の畳み掛けんにゃ!?」

「あ、ちょ!? り、六華さべぇ?!」


 六華さんが先陣を果敢に走り出した瞬間、盛大に大コケし、後ろにいた僕は大慌てで受け止めた。

 一番の脅威は師走さんではなく、濡れてる足場なんだと、今更知らしめられた。


「ご、ごふぇん(ごめん)! 六華ふぁん! だいろぉぶ(大丈夫)?」

「ひゃ!? く、口動かすな!?」

「へぇ?」


 慌てて受け止めたせいで、顔がお尻に触れてしまったみたいだ。

 ペシペシ叩かれながら離れ、お互い1/3が濡れていた。


「積木……羨まラッキースケベ……くぅ……」

「ふっ……敵だったら一発アウトだったな……」

「2人とも大丈夫れふか〜?」

「お、おぅ。あんがと、黄坂」

「あ、ありがとう黄坂君」

「おーい! 北高チームが梨紅チームを削ってるんだ! 混ざって倒すぞ!」


 3チームの混戦は相討ちや敵討ち、人数がどんどん減って行き、その度に観覧席は盛り上がりを見せてた。


「愛実ちゃん! 梨紅ちゃんを今の内に! キャ!?」

「ら、ライラ! クソ……梨紅! これでトドメだ!」

「! それはお互い様だよ! 愛実ちゃん!」


 梨紅さんは豊満な胸元を、愛実さんは美脚を撃たれ、同時に服が濡れ落ちた。

 そして梨紅さんの言葉通り、ピンクのマイクロビキニ姿のお披露目に、観覧席の男性達や赤鳥君達が大興奮。


「いつの間にか、2人っきりになっちゃったね。洋君」

「呉橋さん……僕の水鉄砲をどうして……」

「んー? 落ちてただけだよぉー?」


 ついさっき手を滑らせた時に、呉橋さんの足元まで行ってしまったんだ。

 くるくると余裕綽々で水鉄砲を回す呉橋さんは、勿論自前の水鉄砲持ちだ。

 残り1分しかない制限時間で、僕を仕留めるのには十分すぎる時間だ。


「……逃げも隠れもしません。一層の事やって下さい」

「ノンノンノン……最後の一騎打ちこそ、正々堂々とやり合いたいじゃん? だから優しい私は、洋君の水鉄砲を返しちゃうもんね♪ ほい」


 返された水鉄砲は、プラスチックの軽さしかなく、水滴しか残ってなかった。


「ざーんねん! 洋君の水鉄砲の水、抜いちゃったもんね! あはははは!」

「くっ……」


 敵の水鉄砲の水を抜くのは、ルール違反ではない。

 勝ち確の悪戯にまんまとハマった僕に、呉橋さんはそれはもう喜びに満ちてた。


「ほれほれ〜? そこの梨紅ちゃんが使ってた水鉄砲でも撃ってみるかい? 撃てないよね? だって、自分のチームのじゃないんだもん! おひょひょひょ!」

「梨紅さんの……ハッ!」


 一か八かのに賭け、梨紅さんの水鉄砲を急いで拾い、呉橋さんへ銃口を向けた。


「んー? あれあれ洋君ー? 私に梨紅ちゃんの水鉄砲を向けて、どうちたんでちゅかぁ? 血迷ったのかなぁー?」

「勝敗は全滅か、生き残りの数……アウトも敵に直接触れること。しかし! チームごとに水の色が違うだけで、敵の水鉄砲を使うのは問題ない、です!」

「え。ちょ、ちょっと審判!? アリじゃないでしょ?!」

「問題ないです」


 勝ち誇ってた笑みが消え、怯える小動物のように震え始めた呉橋さん。


「は、ハァハァハァ……ほ、本当は私の水鉄砲、かりゃっぽ(空っぽ)にゃにょ……だ、だから見逃して!」

「ダメです」

「ぴゃああああああああ!」


 一方的にびしょびしょになった呉橋さんを見下ろし、僕ら北高ルーキーチームが勝利した。

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