35話 オープニングアクト
お昼ご飯から1時間後、西女の別館にある大型室内プールにやって来た。
観覧席は既に人で溢れ、熱気に包まれている。
『皆様、本日は西女祭にお越し頂き有難うございます。現生徒会会長、水無月宵絵です』
『毎年恒例、フェスティバルのオープニングアクト『濡れTトゥーン』について軽くご説明します』
1・フィールド、水無しのプール内。チーム配置はスタート台側、反対側、サイド側。
2・参加者・参加者は水で徐々に溶ける、特殊な紙でできた衣類を纏う。下には水着着用。
3・アウト条件・衣類が着衣不能になった時点でアウト。即時外野へ移動。
4・10人1チーム・3チームとフィールド上で濡らし合う。
5・武器・色水入り水鉄砲。水補給無し。チームごとに色が違う。
6・勝敗・チーム全滅。タイムアップで生き残りが多い方が勝利。
7・即アウト・相手に直接触れる。事故の場合、審判の判断。
『それではチームのご紹介です。北高ルーキーチーム』
武装して現れた僕らに、温かい声援が送られ、蘭華さんと峰子さんファンクラブの黄色い声援が、それを上回ってた。
『前年度同様、西女生徒会と合同のビューティービーナスチーム』
僕らが現れた反対側の出入り口から、西女生徒会、呉橋さんと萌乃ちゃん、そして現北高生徒会の皆さんが姿を見せた。
「やほ♪ 皆の大ちゅきな、星ちゃんだお♪ キュピ♪」
「呉橋さん相手なら、遠慮はいらないですね」
「もう! 洋君ってば! 私のエッチぃ身体を、濡れ濡れしたいだなんて! だ・い・た・ん♪」
勝つ気満々なのか、ヘソ出しスタイルの合同チームに、赤鳥君達は別の意味でアウト寸前だ。
『そして皆さんお待ちかねの、ゲストチーム』
ノリの良いミュージックと一緒に、両入り口から二手で現れた、梨紅さんとメリーさん達。
誰しもが知る有名人の生登場で、観覧席から今日一日の声援が絶えず、流石としか言いようがない。
『では、灘梨紅さんに挨拶をして貰います』
『はーい♪ みんな〜♪ 灘梨紅だよ〜♪ 今日はよろしくね〜♪』
『それと〜♪ ちょっとサプライズなんだけど〜♪ お友達のMerryちゃん達が、なんと梨紅の事務所に移籍しちゃいまーす♪』
『そしてもう一つサプライズ♪ 今日の為に、面積の少ない水着を着てまーす♪ 見たかったら、いっぱい掛けてね♪』
100点満点超えのオープニングパフォーマンスに、会場の興奮冷めやらぬまま、僕らはチーム配置決めでチームリーダーがじゃんけん。
一番勝ちの僕ら北高ルーキーチームは反対側、ビューティービーナスチームはスタート台側。
ゲストチームはサイド側の二手に分かれ、スタンバイが完了した。
「拙者が皆を守り、特攻するれふ」
「頼ってるぜ黄坂」
「兄者の助太刀をするです!」
「無茶はするんじゃないぞ? 私も援護に尽力する」
「んしゃ! 気張ってこうぜ!」
「瓦子は無駄に身軽な分、無駄に動けるもんな。いでぇ!?」
「ずぶ濡れにしてやんよー」
「ふっ……哀れな水の踊り子になるがいいさ……」
「ケガだけはしないようにね。お互いに」
「てか、あと1人まだ来ねぇじゃねぇか」
六華さんの言う通り、僕らの人数は9人。
生き残りが勝敗に関係ある以上、人数が少ない分不利になる。
身近で頼れる助っ人に、蘭華さんの名前が上がった時、とある心強い人が西女祭を一緒に回らないかと連絡が来たんだ。
仮に蘭華さんが助っ人になれば、百人力は間違いない。
しかし、峰子さんに気を取られるあまりに、力を存分に発揮出来ないと考え、連絡をくれた彼女を助っ人にしたんだ。
「大丈夫だよ六華さん。ちゃんと来たよ」
「お待たせしました。少々、サイズの合う水着の入手と、この特殊な衣類を着るのに手間取ってしまってて」
「なんかパツンパツンじゃねぇ? ライラ?」
「濡れなければ問題ないです、愛実さん。これでバッチリです、洋さん」
「ありがとうライラさん。さぁ、梨紅さんと呉橋さん達を、存分に濡らしてあげましょう!」
「「「「「「「「「おぉー!」」」」」」」」
僕らが揃ったのを合図に、濡れTトゥーンが始まった。




