34話 大目玉イベント
明日久さんに案内された空き教室には、宵絵さんではなく、金髪の女性が1人椅子に座っていた。
女性は僕や愛実さんを視界に入れると、バツ悪そうに立ち上がってた。
「ゲ」
「ん? え? あ! し、嶋さん!?」
「マジだ!」
「パイパイ姉ちゃんのメリーさんじゃんーなんでいんのー?」
学生を偽った姿ではない、金髪でメイクアップされた嶋さんが、どうしてここにいるのか。
明日久さん以外、誰も分かってない中、別の扉から梨紅さんが現れ、嶋さんにギュッと抱き着いてた。
「やっほ〜皆♪ 初めましての人はどうも〜♪ 灘梨紅だよ〜♪」
「ほ、ホンモノだぁ!? ヤベェ!? めちゃクソエロカワい過ぎるぅうううう!? げゔぇ!?」
「うっさいわ! クソドリ!」
「あ、あの梨紅さん? どうして嶋さんがここに?」
「メリーちゃんは、私の事務所に移籍したんだよ〜♪ ね〜♪」
「は、はぅ! そ、そうなんれす! あっ、せ、背中が幸せしゅぎりゅ!」
話を聞くと、偽物招待券事件後、嶋さんは事務所解雇の処置になったそうだ。
そこで梨紅さんは電撃移籍という形で、メリーさんや共犯者全員を引き入れ、発表も今日サプライズするそうだ。
「元々メリーちゃんとこの社長さんって、自分のお気に入りの子に贔屓してるんだよね〜♪」
「あーネットにも書いてあるわー売れてないグラビアちゃんが、社長と夜の街でランデブー後、急に仕事が増えたってー」
「現実でもあんだな。ほれ、参考程度にもっと聞かせろや」
「と言っても、若い女社長さんだけどね〜♪」
「百合題材ならウェルカムだ、おら話せ」
「メリーちゃんよろしくね♪」
「は、はぃん♪」
嶋さんの赤裸々で生々しい話を、真剣にスマホのメモに書き殴る六華さん。
漫画の参考題材にせよ、良い方向性に影響して欲しいところだ。
一方で赤鳥君達は、梨紅さんからサインやらグッズを貰い、ガチ勢寸前にまで惚れ惚れしてた。
「てか、水無月会長さんがココ指定したんすよね? 梨紅達もいるってなれば、なんか話があるんすか?」
「じゃないー? 詳しい話は本人から聞いてー」
気配を悟ったのか、明日久さんが扉を開けたタイミングで、宵絵さんが扉に手を伸ばそうとする姿で現れた。
「ん? あぁ、明日久が開けてくれたのか。皆も連れて来てくれて、ありがとう」
「お気になさらずー」
「あ、あの方が水無月宵絵しゃま……?」
菫ちゃんが戸惑うのも無理はなかった。
今の宵絵さんは、黒の全身タイツ姿なんだ。
それでも尚、タイトな全身タイツが抜群のプロポーションを際立たせてた。
「皆も待たせてすまなかった。早速本題に入らせて貰う」
「よ、宵絵さん。そ、その姿のままだと、話が入ってこないというか……気が散っちゃって……」
「すまない洋君、お見苦しい姿で。劇の黒子として、ギリギリまで手伝ってたんでな。んしょ」
その場で脱衣し、美しい銀髪を揺れ直す宵絵さんは、何故か中身がスク水姿だった。
余計なツッコミは無しに、耳に集中した。
「では本題だが、午後から室内プールで『濡れTフェスティバル』が開催される」
「大目玉イベってパンフにも、大々的にアピってるわな」
「六華君のご指摘通り、フェス目的で来てくれる人が多い。今回は特にだ」
「流石梨紅ちゃん! 最強最高最可愛!」
「でだ。ゲストとして梨紅君に嶋さんが参加するが、君達も参加して貰いたい」
「ほーん。ま、タダじゃ動かないっすけど?」
「参加した者だけに対価を知る権利がある」
「うし、参加すっから水着貸して下さい」
「感謝する六華君。だが、まずはお昼にしよう」
「うす!」
他の女性陣も参加に意欲的で、約束された美女美少女の濡れTフェスティバルに、赤鳥君達は壁にもたれ座り、幸せそうな顔だった。




