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32話 展示とトレードマーク

 西女本校の入場ゲートで、招待券を各自厳重に確認して貰い、入場者カードを首に掛けられ、無事会場入りができた。

 校舎までの道には、西女生徒の出店が並び、既に数百人もの人達で賑わってる。


「なんか夏祭りを思い出すな!」

「花火も綺麗だったよね。もう2ヶ月前になるのかー」

「早いよなー! これからずーっと、夏祭りとか一緒に行こうな!」

「あ、先に言われた」

「にしし♪ そんだけ洋の気持ちを知れてんの♪」

「あーし達にイチャコラ劇場を見せてるのかーやるぅー」

「「あ」」


 軽く赤面する僕らは、もう少し場を弁えよう、と空気で決め合った。


 出店で色々買い漁ってると、野外展示スペースで大盛況の人集りが見え、興味本位で向かった。

 人集りの中心に峰子さんの双子の妹蘭華(らんか)さんの姿が見え、アチラも僕らに気付き、満面の笑みでやって来た。


「蘭華、凄い反響じゃないか」

「まぁ姉様♪ 嬉しいですわ♪ それに皆様も、ようこそ西女祭へお越し下さいました♪」

「なんかやってんのかー?」

「わたくし達のクラスによる、渾身の作品を展示してます♪ 是非是非ご覧になって下さい♪」


 蘭華さんの指パッチンで、目の前の群衆が道を開けた。

 どうやら展示品は何かしらの像で、近付くにつれて正体が明らかになった。


「ら、蘭華さん。こ、これって……」

「姉様の等身大胸像ですわ♪ キャ♪」

「確か夏休み中に型を取ったが、これだったのか」

「にしても、まんまじゃねぇか。ほれ、峰子。横に並んでみろよ」

「む? こうか?」


 横並びで尚分かる、生き写しとも呼べる造形に、人集りで立ち眩みが発生してた。

 場と胸像話題になってる今は、余計な口出しをしないのが、賢明な判断だと思う。


「てか、こんだけ作れんなら、パイオツマウスパッド作れよ」

「実際、初期の試作品で作りましたわ。ただ中毒者が続出したので、妥協してコチラになりました」

「峰子パイパイの再現だもんなーそりゃ、無我夢中になるわー」

「そういうものなのか?」


 胸を持ち上げた腕組みで、小首を傾げる峰子さん。

 黄坂君と青柳君に至っては、本人と胸像を交互にガン見してるぐらいだ。


「ちなみですが、胸像のお胸にお触れになると、サイズUPするご利益があります♪」

「これ以上いらねーよ」

「2人は除いてなー」

「さわさわさわさわ……豊胸豊胸……サイズUPサイズUP……」

「大きくなれです……大きくなれです……」


 愛実さんと菫ちゃんの真剣な手付きが、切実さを物語ってる。


「てか、本物の方がご利益あるんじゃね?」

「ハッ! 六っちゃん! ナイス! って事で、いいか峰子師匠!」

「ワタシもいいですか!」

「む? 構わないぞ」


 右と左に別れ、峰子さんの胸に触れ始めた2人。

 見てるだけで分かる、ズッシリと柔らかそうな豊満な胸に、人集りは興奮の息を荒げてた。


 ♢♢♢♢


 蘭華さんと一旦別れ、校舎内を回る事に。

 一応、千佳さん真里さんのクラスには、赤鳥君と合流後に行く予定だ。


「お、いたいた! おーい!」


 噂をすればなんとやら、予定よりだいぶ早く、赤鳥君の声が聞こえ、振り返った。

 何故か鶏冠セットでは無い、髪を下ろしたイケメンモードだった。


「すまんすまん! 今日が楽しみ過ぎて、夜更かしぶっこいてたら、そんまま幸せ寝落ちしちまってた!」

「そうれふか〜何はともあれ、無事合流できて幸いれふ〜」

「いつもの鶏冠セットはどうしたの?」

「大遅刻でセットなんかしてたら、それこそマジギレ案件だろ。前髪あると落ち着かねぇー」


 赤鳥君のトレードマークである鶏冠ヘアーは、ブラコンの実姉である南朋(なお)さんが、他所の異性が寄り付かない様に、入念に仕込んできたものなんだ。


「おい、大地、太、洋……3次元女子らの様子が変だ」

「「「へ?」」」


「赤鳥じゃない奴から赤鳥の声がしてる、誰だよ」

「雰囲気が大地に似てる別人じゃないか?」

「ワタシが先輩達をお守りするです!」

「ナンパか? 声出せば勝つぞ、おぉ?」

「お呼びでないんでーおかえりはアチラになりまーす」


「いやいや!? 正真正銘唯一無二の赤鳥大地ですけども!?」


 疑いしかない女性陣に、懸命な本物アピールをする一方。

 イケメンモードの効果か、赤鳥君の通って来た道には、無数の女の子達が赤鳥君に釘付けだった。


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