31話 待ち合わせ
西女祭当日の午前9時前、西女近くのコンビニ外にて。
愛実さん達と一緒に、皆が集まるのを待っている。
姉さんと空は友達と行くそうで、別行動だ。
「お、峰子師匠と六っちゃん来た!」
「はよーさん」
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
「はよさん。あとは赤鳥達だけか?」
「だな!」
赤鳥君達は残りの招待券を、死に物狂いで入手したそうで、報告ついでに小1時間電話して来たのは、目新しい記憶だ。
「いやはや〜お待たせしたれふ〜」
「おぉー黄坂君! あれ? 妹ちゃんと一緒じゃないのか?」
「ここです! 兄者の後ろです!」
黄坂君の背後から、ぴょこっと姿を見せた、ちんまりと可愛らしい女の子。
垂れ目で明るい茶髪のポニテ、スポーティなファッションが似合ってる子だ。
「黄坂菫です! 中学3年生です!」
「六っちゃんより小さいなぁ♪ 一回抱き締めさせて!」
「か、瓦子さん! ダメれふ!」
「にょわ?!」
黄坂君の忠告も間に合わず、一瞬で愛実さんの身動きが封じられた。
前に黄坂君から聞いた話だと、菫ちゃんは柔道で全国大会に出られる実力だそうだから、簡易拘束はお手の物なんだ。
「菫は許可なく触れようとすると、防衛本能が働くんれふ〜」
「はっ! ごめんなさいです!?」
ペコペコ謝る菫ちゃんに、許可を得た愛実さんは今度こそ抱擁でほわほわと癒されてた。
「ちっこいのにスゲェな。峰子でも通用すんのか?」
「余裕れふね〜」
「ほぅ、将来が楽しみだな」
「れふね〜」
霞さん達にも、モチモチぷにぷにと存分に抱擁された菫ちゃんは、僕と目が合うと、パァッと嬉しそうな顔で近付いてきた。
「初めまして積木先輩! 先日はお見舞いの品をどうもありがとうです! お陰様で、ずっと調子が良いです!」
「初めまして菫ちゃん。元気そうな姿を見れて良かったよ」
「えへへ……今度はワタシが積木先輩の力になるんで、いつでも呼んで下さい!」
「ありがとうね、菫ちゃん」
「いえいえ! ……あれ? あの方は確か……兄者の友達では?」
「ほぉ? おや、大海殿が立ち読みしてるれふな〜」
コンビニの漫画雑誌コーナーで立ち読みする青柳君とも合流し、いつ来たのか軽く聞いてみた。
「いつ来てたの?」
「ふっ……1時間前から待機してたんだが、タイミングを測り損なったまでだ……」
「あ、青柳君……」
同情したくても詰み体質がある限り、同情が簡単に出来ないんだと、しみじみと実感した。
「にしても、赤鳥の馬鹿、遅くねぇ?」
「赤鳥君に限って、今日の遅刻は無い筈だけど……」
「電話してみるれふか〜?」
「ふっ……今、オレがやろうとしたが、譲ってやろう」
黄坂君が電話を掛けると、ワンコール内で出てた。
『あんだぁ〜太ぃ……』
「もしもし〜大地殿〜? 集合時間前れふけど、もう大地殿以外揃ってるんれふよ〜」
『集合時間……? ……んぁ? 今何時だ? ……大寝坊じゃねぇか!?』
声のテンションから察してたけど、どれだけ急いでも集合時間には絶対に間に合わない。
「やっぱ鳥頭だな、あの馬鹿鳥め」
『聞こえてんぞ! 瓦子テメェこの野郎! と、とりま悪ぃけど! 俺は現地合流っすから、よろしく頼む!』
「あ、切れたれふ〜」
きっと赤鳥君の事だから、西女祭が楽しみ過ぎて眠れず、気付けば寝落ち、って感じだと思う。
余裕をもって1時間後に現地合流しようと、連絡を入れておけば、赤鳥君も少し安心出来る筈だ
「って事で、行くとっすか! 皆! 西女まで走れぇ!」
「着いて行くです!」
「お、おい! 愛実馬鹿! こちとら無駄乳オプション付きなんだぞ!」
「これも定めだ、六華。愛実を追うぞ」
「無い分だけ速ぇー男共も続けー」
「「「お、おぉー!」」」
100mで息絶え絶えな六華さんは、結局峰子さんにおぶって運んで貰っていた。




