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積木君は詰んでいる3  作者: とある農村の村人
6章 西女祭招待券
31/55

30話ガチ勢

 ガチ勢魂に一度火が付いたら止まらず、嶋さんはペラペラと犯行理由を口にしてた。


「なのに、たまたま招待券を手にした興味本位だけの薄っぺらい気持ちの連中が、梨紅ちゃんに会えるなんておかしいのよ! 心底梨紅ちゃんを最推ししてる、私こそ相応しいのよ! なのに! どうして一枚も手に入らないのよ!」

「が、ガチファン……」


「だから私より惨めな気持ちを、連中に味合わせる為に、道連れを考えたまでよ!」

「そん中にアンタと同じガチファンがいてもか?」

「顔割れしてる同胞を道連れにする馬鹿が、どこのいるのよ! そもそも、道連れ作戦も私に賛同してくれた同胞だから! 少し考えてみれば分かるでしょうが!」


 組織的な犯行も、嶋さんと縁深いガチ勢の仕業。

 全てを認めた嶋さんは、退屈そうに体を伸ばしていた。


「あぁーそれで? お巡りさんにでも連れてくつもり?」

「いいえ。まず嶋さんと共犯してる人達に、今すぐ作戦終了の連絡をお願いします」

「ハイハイ」


 共犯組織に作戦終了の一斉送信したのを、バッチリと送信履歴と既読で確認。

 それでも反省の色が見えない以上、蜥蜴の尻尾切りされないよう、道連れ作戦をここで確実に終わらせる。


「嶋さん。実は、とある人にも嶋さんの話を聞いて貰ってました」

「はぁ? 誰よ? 西女の人?」

「この人です」


 通話状態のスマホから、1人の女性の声が聞こえてきた。


『話、聞かせてくれてありがとうね』


「へ? そ、その声は、ほ、本物の梨紅ちゃん?! ど、どうしてアンタのスマホから聞こえるのよ!?」

「友達ですんで。もしもの為に、公園に入る前に、無理言って繋いでおいたんです」

「な?!」


 無理も承知で、梨紅さんに頼んだら、即OKしてくれたんだ。

 嶋さんの話を聞いたのもあって、いつもの明るい梨紅さんの声色は、冷静で圧を感じた。


「そー言う事だったのかーなるほー」

「ビデオに切り替えた方がいいんじゃね?」

「だね」


 スマホ越しに存在する、正真正銘本物の梨紅さんを見て、嶋さんの顔色は真っ青だった。


『嶋メリーさん、他事務所所属の人気グラドル『Merry』ちゃん。梨紅を初期から応援し続けてくれてる、大事なファンの1人を、梨紅が知らない訳ないよ』


 誰のどんな言葉より、梨紅さんの言葉が決め手になったのか、嶋さんはただひたすらに謝ってた。


 ♢♢♢♢


 芽白さんや宵絵さんに連絡し、嶋さん達の処分は大人の人達が、きっちりと処理してくれる事になった。


「忙しいのにありがとうね、梨紅さん」

『ううん。梨紅のせいで、沢山の人に迷惑かけちゃって、ごめんなさい』


 偽物招待券事件の被害者全員は、特別処置で西女祭に招待する事になってる。

 スピード解決だった事件でも、梨紅さんも今件を重く受け止め、鼻を啜り涙目で反省している。


「んな暗い顔すんなって。梨紅の天真爛漫な姿こそ、人の心を掴んできたんだろ?」

「嶋さん達だってさーその内の1人だろー?」

「大事なファンの皆さんに、いつもの梨紅さんを見せるのが、何よりもの謝罪だと思うよ」

『洋ちゃん……愛実ちゃん……霞ちゃん……そうだよね……梨紅は梨紅らしくないと、ガッカリしちゃうもんね。フンフン!』


 両頬をペチンと叩き、気持ちを切り替えた梨紅さんは、僕らに最高の笑顔を見せてくれた。


『ありがとう、みんな♪ 西女祭で梨紅節を爆発させちゃうんだから、覚悟してね♪』

「受けて立つよ」

「望むところだ! 略奪は絶対阻止してやんだからな!」

「あーしは見守っとくさー」


 偽物招待券事件後、眞燈ロさんの迅速な対処で、梨紅さんや嶋さん達の情報拡散はされずに終息し、西女祭の本番当日がやって来た。

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