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積木君は詰んでいる3  作者: とある農村の村人
6章 西女祭招待券
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29話 偽物と犯人

 放課後、帰り支度をしてると、芽白さんが教室に現れ、生徒会室まで一緒に移動した。


「え。西女招待券の偽物が出回ってる?!」

「北高生にも被害が出てね。これがその偽物の現物」

「どれどれ? ん? ほぉ? すげぇ巧妙な偽物で分からん!」

「若干紙質が違うぞぉー愛実。フォントも似てるヤツで、パッと見じゃ絶対気付かんわー」


 現物を知らない人なら普通に信じてしまう、そっくりな偽物。

 梨紅さん問題が解決したばかりなのに、幸先不安だ。


「普通、対価を求められそうだけど、タダも同然で貰ったそうなの」

「偽物を配るだけ配る人って事ですか」

「うん。それも各所で複数犯の組織的なね。千沙ちゃん、瑠衣ちゃん。犯人情報をお願い」


 2人はスマホ片手に犯人情報を話してくれた。


「被害者の北高生徒によると、学生服を着た若い女性、マスク姿でスタイル抜群、茶髪ボブが特徴だそうです」


「学生服を情報と照合したら、市販で買えるのだったよ♪ つまり! 犯人は学生を偽ってる!だよ♪」


「場所も学生が足を運びそうな所ばかり。狙われてるのも小中高の学生。放課後に声を掛けられてるのが、どこも共通してるの」


 組織的な複数犯で、対価もなしに偽物を配る。

 ただの悪戯目的だとしても、西女や人々が被害にあってる以上、見過ごすわけには行かない。


「今朝、宵絵さんからSNSの件を聞いて、もし今件も積木さんに力を貸して貰えないか、直接話して返事を聞きたかったの」

「勿論力になります」

「だな!」

「てか、師走パイセンはー?」

「今件の見回りで、北高周辺を爆走巡回中だよ」


 爆走巡回する姿が容易に想像出来るのだから、師走さんは分かり易い人だ。


 ♢♢♢♢


 帰りの車両内、具体的な解決策を話し合ってると、不意に声を掛けられた。


「ねぇ♪ そこの北高の1年生♪」

「「「ん?」」」

「急にごめんね♪ 実はここだけの話……西女祭の招待券、沢山貰っちゃって持て余してるの……だから、貰って欲しいんだよね♪」


 茶髪ボブでスタイル抜群、そしてマスク姿で学生服。

 犯人情報にピッタリ当てはまる若い女性は、僕らの中で犯人だと確定した。

 詰み要素として現れたのなら、詰み体質も今回ばかりはファインプレイだ。


「とりあえず、やっ(捕まえ)とく?」

「だなーって事で、パイパイお姉ちゃん。相手が悪かったねー」

「へ? わっ!? ちょ、ちょっと手離してよ!」

「無理矢理振り解いて逃げても無駄ですよ。彼女の脚の前じゃ、貴方は無力です」

「は、はぁ!?」


 駅近の公園まで連れて行き、ベンチで座って貰ったお姉さんも、色々と察したようだった。


(しま)メリー、22歳、フリーター以上」

「自己紹介どうも。で、嶋さんはなんで偽物配りなんかしてんです?」

「正真正銘、本物よ。逆に偽物だって証拠はあるのかしら?」

「こちとら本物を持ってんだわい! ちゃんと目かっぴらいて見なさいよ!」

「待て待て愛実ーあーしに任せなー」


 愛実さんと入れ替わる霞さんは、鞄から1枚の紙を取り出した。

 確か帰り際に芽白さんから貰った紙だ。


「嶋さんさーこの紙見てみー」

「何よ……『西女祭招待券、完成デザイン詳細まとめ』ですって……」

「西女のパイセンから預かったもんだから、これは本物ーそんじゃ、嶋さんのと早速隅々まで比べようかー」


 嶋さんにとって、北高の生徒会長から貰った『西女祭招待券、完成デザイン詳細まとめ』だと見せても、ブラフだとしか思われない。

 だから霞さんは、わざと西女の名前を出す事で、紙の信憑性を高めてるんだ。

 そして嶋さんはお手本のような焦るリアクションで、効果覿面だった。


「ま、待ちなさい!」

「んー? あれー? フォントが似てるようで違うねー? 文字サイズも所々間違ってるー」

「ぐぎぎぎ……!」

「おややー? 紙質もサイズ感も違うじゃんー? 嶋さんー? 説明、してくれますよねー?」

「に、偽物よ! これで満足?!」


 あっさり認めた嶋さんは、それでも反省の色は見えない。


「ゲロッた所で私は痛くも痒くもないわ。偽物で泣きを見てる連中一人一人に謝罪でもして欲しいなら、いくらでもしてあげるわよ」

「……謝罪は後にして、理由話して下さいよ」

「理由? はん、道連れよ」

「なんだって?」

「だってあり得ないでしょうが! 招待券無しじゃ、最可愛最高の梨紅ちゃんに会えないないんて!」

「圧ヤバー」


嶋さんは俗に言う、梨紅さんガチ勢だった。

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