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積木君は詰んでいる3  作者: とある農村の村人
6章 西女祭招待券
29/55

28話中学生と譲渡

 翌日、宵絵さんのモーニングコールで、西女祭の電話対応やSNSでの拡散が解消されたと、嬉しそうに報告してくれた。


『まさか天宮寺財閥からの力添えとは、想像してなかったぞ、洋君』

「規模的に考えて、それしか無いと考えただけですよ」

『それだけじゃない。当日の校内外、巡回の厳重な警備まで手配してくれた。お陰で心置きなく準備に取り掛れそうだ』

「なら良かったです。また何かあれば力になりますね」

『ありがとう洋君。君への好きも更新されて、嬉しい限りだ」

「あ、ありがとうございます」


 真っ直ぐな好意に、朝っぱらから照れ臭くなった。


 ♢♢♢♢


 通学車両内で愛実さんと霞さんと会話してる時、ふと中学生の女の子が声を掛けてきた。


「あの……西女祭の招待券って、余ってたりしませんか?」

「ごめん! 自分らの分しかない!」

「そうでしたか……急にすみませんで」

「待ちなー嬢ちゃん。もうちょいしたら、西女のパイセン達と合流するから、頼んでみなー」

「い、いいんですか?」

「もし頼みづらなければ、僕達もいますんで」

「す、すみません。色々と……」


 西女祭に限らず、大きな行事には幅広い層が訪れるんだ。

 この中学生の子がもし、西女進学希望なら、それこそまたとない機会だ。


 千佳さん達と合流後、愛実さんの後押しもあり、中学生の子は自分の口で頼むことが出来た。


「なんとなんと〜丁度残り1枚だけあります〜ので、献上しちゃう〜」

「わっわ! ありがとうございます! あ、あの私! おニ人みたいな、垢抜けたイケイケ女子を目指してます! 何かアドバイスとかありますか!」

「まずはお化粧慣れだね〜ナチュラルメイクからだよ〜? あと着崩しはスカート丈詰め必須ね〜膝上までやってみようか〜」

「が、頑張ります! メモメモ……」


 真里さんのアドバイスを、生徒手帳に書き殴り、次なる千佳さんに期待の眼差しを送っていた。


「私の場合、誰かに本気で恋すれば、自分は磨けるよ」

「お姉さんは恋してるんですか!」

「うん、10年以上同じ人をね。だから今の私がいるの」

「ほわわわわ! ち、ちなみ! その人は一体どんな人なぷぅ!?」

「恋の仕方は人それぞれ、これ以上は内緒」

「お、お姉様!」


 何かに目覚め、覚醒した中学生の子は、何度もぺこぺこ頭を下げ、僕らの前から離れて行った。


「てか、洋ー宵絵会長さんからも5枚貰ってんだろー? 何で話に出さんかったんだー?」

「渡す人を決めてるんで」

「んー? あ。蒼さんに空、あと赤鳥かー。んでも、あと2枚あるぞー?」

「黄坂君と青柳君だろ?」

「愛実さん正解」

「うっし! まだまだだなカスミンは!」

「うるへーパイセン達も何か言ってやって下さいよー」

「みんなで来てね〜沢山サービスしちゃうよ〜」

「中身はまだ内緒だけど、きっと喜んで貰えるから」

「そーじゃなくてーまぁ、いいかー」


 呆れ混じりの笑顔を見せら霞さんに、ポンポン触れる愛実さん達だった。


 ♢♢♢♢


 教室に着いて早々、赤鳥君達に1枚ずつ招待券を手渡した。


「おほぉ! に、西女生徒会長の匂いがしてるぜ! スンスン!」

「ふっ……争奪戦は始まったばかりだ、大地……厳重に保管しておけ……」

「貴重な招待券、しかも西女生徒会長さんのを、拙者達が貰って良かったんれふか?」

「譲ってもいいか、ちゃんと許可を貰ってるから大丈夫」


 気を遣ってくれた大漢な黄坂(こうさか)(ふとし)君も、心置きなく招待券を大事にしまってくれた。

 一応譲る条件として、当日1時間だけ宵絵さんと一緒に西女祭を回るんだ。


「言い忘れる前に、感謝するぞ積木……」

「いえいえ。青柳君達は残り集められそうなの?」

「ふっ……林間学校で一緒のグループだった西女女子に、懇願の連絡した甲斐あって、お情けで頂いた……」

「な、なら良かった」

「拙者は妹から貰ったれふ。積木殿と会えるのを楽しみにしてだれふよ」

「僕も楽しみだな」


 何度か話題に出る黄坂君の妹さんと、当日会える日が今から待ち遠しい。

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