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積木君は詰んでいる3  作者: とある農村の村人
6章 西女祭招待券
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27話 拡散と手紙

 次なる七人女神、梨紅さんの出演する西女祭について、宵絵さんは更に話してくれた。


「事が大きくなったのは、灘梨紅がSNSで大々的に宣伝したのもあるが、『女帝インフルエンサー』八百万神あびるの発信で、火種が大火の如く燃え広がっているんだ」

「あ、あびるさんが……」


「灘梨紅の情報は全国的に広まり、先生方は朝から電話対応に追われてる。いつ出演するのか、招待券は何なんだと、火消しするにはもう手遅れになってる」

「そ、そんな……」


「このままだと、些細なキッカケでありもしない噂が飛び交い、批判に変われば最悪西女祭は中止。生徒や先生方が、見ず知らずの人々から後ろ指刺され、日陰を歩く事になりかねない」

「私はそんな未来に絶対にさせたくない。だから西女生徒会長として、水無月宵絵一個人として、洋君に力を貸して欲しいと頼みに来た。お願いだ洋君……」


 梨紅さんに連絡すれば、出演キャンセルこそ飲み込んでくれる筈だ。

 ただ、それだと楽しみしている人達を始め、一部の層から批判が押し寄せ、最悪の未来を後押しするだけ。

 一応、解決する術に幾つか心当たりはある。


「勿論力になります。だから、顔上げて下さい」

「……ありがとう洋君……言っておいてアレだが、無理だけはしないでくれ」

「大丈夫です。何とかなります。いや、します!」

「あぁ洋君……大好きだ!」

「うぐっ!?」


 感情に任せたハグは、数分間離れる事はなかった。


 ♢♢♢♢


 宵絵さんと別れ、自宅のリビングで早速一本の電話を繋いだ。

 待ってたと言わんばかりに、ワンコール内に出てくれた。


『洋様からのお電話嬉しいですわ♪』

「ま、眞燈ロ(まほろ)さん。実は折り入ってお願いがあります」


 北高2年の天宮寺(てんぐうじ)眞燈ロ(まほろ)さんは、北高の総理事長の末娘であり、総資産数十兆ある天宮寺財閥のご令嬢だ。

 眞燈ロさんは不幸体質で、年に数回しか登校できない程不幸が降りかかる人生を送って来た。

 そんなある日、詰み体質の僕と触れる事で、何故か不幸が一切発生しなくなったんだ。


 とんだ信じ難い経緯もあり、眞燈ロさんから慕って貰い、今回力になって貰えないかお願いしたんだ。


『成程ですわ♪ 灘梨紅さんや西女祭についての電話対応は、今をもって天宮寺財閥が引き受けますので、ご安心下さい♪』

「助かります」


『あとは西女祭当日の警備ですね♪ SPを校内外に配置させて貰いますね♪ 徘徊SPも抜かりないですよ♪』

「おぉ!」


『ただ、SNS上での拡散ですが、全てとは行きませんが、出来る限りの対処はさせて頂きますね♪』

「十分過ぎるぐらいです。本当にありがとうございます」


『うふふ♪ もっと頼ってくれた方が、わたくしとしては冥利に尽きますわ♪』


 それから少々雑談を挟み、通話を終了した後、姉さんが夕飯の買い出しから帰って来た。


「ただいま、洋。今から夕飯の準備するわ」

「おかえり姉さん。手伝うよ」

「いつもありがとう。あ、そういえば洋宛に手紙よ」

「え? 誰だろう……」

「梨紅からよ」

「え!?」


 ♢♢♢♢


 大好きな洋ちゃんへ♪

 西女祭出演については、もう誰かから聞いてよね♪

 洋ちゃんと交友の深い西女だから、洋ちゃんも行く前提で思い切っちゃいました♪

 今から会えるのが楽しみだよ♪

 でも、洋ちゃんのことだから、色々と心配してるよね♪

 例えば梨紅のファンについてだけど、今日の夜に投稿するSNSで、西女の人に迷惑かけちゃダメって、ちゃんとルールを設けるから大丈夫♪

 みんな、梨紅言うことを聞いてくれる良い子達だから、安心してね♪

 灘梨紅のお墨付きだよ♪

 もしルール違反しちゃった子がいたら……ご想像にお任せしちゃうね♪

 それでも心配なら、洋ちゃん達なりの対策のままでいいからね♪

 それじゃあ、洋ちゃん♪

 西女祭当日に会おうね♪

 愛する梨紅より♪


 ♢♢♢♢


 キスマーク付きの直筆の手紙に、ホッと一安心した。

 梨紅さんはどんな些細な約束も守る、律儀な人だからだ。

 今までも多少約束に遅れたりしても、僕や七人女神だけにしか影響せず、他の人に迷惑を掛けないんだ。


「宵絵さんにも知らせておかないと……ん?」


 封の両面を見て、ある筈のものが無いことに気付いた。


「これ……消印がどこにもない……」

「どうかしたの?」

「ううん」


 自宅まで直接届けにきた梨紅さんの、少し抜けながらも律儀な面は、見習いたい部分だ。

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