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積木君は詰んでいる3  作者: とある農村の村人
5章 コスプレイベント
25/55

24話 性別とペア

 全ての呪文詠唱付き注文をこなし、小休憩を挟んでると、最上川さんからとんでもない一言が飛んで来た。


「え、この格好で出るんじゃ?!」

「メイド服は単なる、わちの趣味。お陰で世界がまだまだ広いと知れたよ。感謝感謝」

「……ちゃんと聞かなかった僕も悪いですけど、本番は女装じゃないですよね」

「大丈夫。やって貰うのはラノベ原作の『双子勇者イチとニイ』。もるにゃーさんが男装する」

「ホッ……」


 王座奪還狙いの為、とびっきりのコスプレが用意されてると思い、割と無難な所に着地していて安心した。


「で、積木洋くんはこのキャラになって貰う」

「ん? び、ビキニアーマー姿ですよね?! これ?!」

「そだよ。主人公の仲間で人気キャラ」

「それでこそ、もるにゃーさんが相応しいです!」

「それだと王座奪還は無理。必要なのは性別の垣根を超えた意外性。それしか奪還の勝呂はない」


 至って本気な眼をされたら、反論も言い辛くなる。


「で、剃っとくでしょ?」

「……や、やりますよ! けど、金輪際女装は無しですからね!」

「キャラもそんな感じだから、よろしく」


 T字カミソリとシェイビングクリームをお供に、顔から下の除毛作業に黙々と勤しんだ。


 ♢♢♢♢


 本番30分前、数十組のコスペアと控え室で待機してる。

 美神ペアを中心に人集りが生まれ、その人気さを物語ってる。


「よーみゃん♪ 緊張してる?」

「恥ずかしさが勝ってるんで、大丈夫ではないですけど大丈夫です」

「んー♪ こう考えたらどうかな? 今日さえ乗り切れば、今後怖いもの無しになれるって♪」

「あーそれ良いかもです」


 銀髪イケメン勇者のもるにゃーさんと、ピンクビキニアーマー姿の僕に、キャッキャ喜んでる他のコスペアさんもいるのは、ちょっと気にはなる。

 そんな個性豊かなコスペアは、それぞれ時間を潰していた。


「おい、右腕。いつ始まるんだ」

「30分ですって。1分前にも聞いてましたよね?」

「知らん。こうなれば私1人で今出てやる」

「ルールは守りましょうよ!? 勇者様!?」


 真紅の双角を生やす美人女勇者さんと、大柄で物腰低い双角を生やす肌が青い男の人との、主従関係まで成り切ってるペア。


「ふっふっふ! 私の悪魔姿で全員イチコロの優勝よ!」

「副賞の温泉旅行の方が良くない? 貸切り露天風呂だってあるし」

「貸切り……い、いっぱいしてくれるなら、そっちで」

「サリーさんが可愛すぎる!」


 露出が多い悪魔コスの銀髪美人さんと、目隠れ天使コスのイケメンさんの、天使と悪魔のお似合いペア。


 特に目立つ2組も、恐らく王座奪還戦のライバルになる。


「よ、いいビキニっぷりじゃん」

「本物の女の子みたいだね! フンフン!」

「お二人もお似合いですね。天狗とがしゃどくろの擬人化?でしたっけ」

「おうよ。妖人(あやかしびと)っつう、漫画原作のな」

「後輩の子が作ってくれたんだよ! 毎回毎回凄いクオリティーでビックリしちゃうよ!」


 がしゃどくろコスの怜さんは、無数の髑髏に纏われたような、骨々しさと際どい露出を取り入れた、アートに近いデザインだ。

 天狗コスの奈南さんは、赤ベースに白模様をあしらった軽和装で、羽や扇などの装飾や小道具付きだ。


「なーにゃんは今回露出してないんだね♪」

「前ん時、過度な露出で挑んだらよ、観客、審査員、出場者が軒並み興奮して失神しちまってよ、イベが中止よ」

「だから露出は自粛してるの!」


 もしかすると、最上川さんはこの事を知った上で、王座奪還を企てたのかもしれない。


「てか、つるっつるになってんな」

「え? あ、まぁ、見えちゃあれなんで、剃りましたよ」

「えぇ!? 大胆過ぎるよ?!」

「ご苦労なこった。こちとら絆創膏一枚貼っちまえばいい、天然のパイんっぐ?!」

「それ以上はお口チャックでーす♪」


 ほぼほぼセクハラな発言も、ビキニアーマーを身に纏ってる僕は、何とも思っていなかった。

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