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積木君は詰んでいる3  作者: とある農村の村人
4章 新生徒会
21/55

20話 満欠月ライラ

 『るちょぱ』こと瑠衣さんと過去に何かあったのか、ライラさんの優勢に亀裂が生まれた。


「では改めて、元小学生モデル『るちょぱ』だよ♪ 懐かしいでしょ? ライライ♪」

「そ、その気弛んだ声、知性を感じない動作、年不相応の化粧面の面影と、嫌でも重なりましたよ……」

「酷い言われよう! でも、合宿の2日間、同部屋で沢山話してくれたよね♪」

「前提が違います。今後二度と会わない人間だと、当時の認識が甘く、貴方の口車にも乗せられ、身の上話を話させられただけです」

「ノンノンノン♪ 記憶を改竄しちゃダメだよ♪ ライライが自分から色々と話し始めたんだよ?」

「ち、違います!」


 よっぽど掘り返されたくないのか、身を乗り出してまで止めに掛かってる。

 それでも瑠衣さんの口は止まらない。


「じゃあ、1人っきりの時に、一日中ジャージで過ごして、お風呂にも入らないで、深夜にカップラーメンと2Lコーラをラッパ飲みするのが、人生の至福って言っ」

「でまかせもいい加減のして下さい! それ以上口を開いたら、怒りの制裁を下し」

「ちなみに♪ 今のはライライちゃんのお母さん情報だよ?」

「お、お母さんですって?!」


 目にも止まらぬスマホ捌きで、お母さんに事実確認したのか、優勢は完全に崩れていた。

 同時に瑠衣さんが味方で、心底安心してる自分がいた。


「もう……煮るなり焼くなり好きにして下さい……」

「ライラ後輩はどうしたんっすか?」

「根っからのズボラ女子だと、明かされたのです」

「ギャップ萌えってヤツだよ! たぶん!」

「ライラさん大丈夫? 私達はそんな事しないよ?」

「暗堂会長……」


 白肌女神と呼ばれてる芽白さんの言葉に、若女神も静かに頷いていた。


 ♢♢♢♢


「るちょぱの言う通り、ワタシは外面が良い子ちゃんだけの、ガリ勉ズボラ女です。幻滅しましたか、洋さん」

「それはないけど、ライラさんを身近に感じれるようになったかな」

「え……」

「だな。さっきはお堅いとか、散々言って悪かった! ごめん!」

「い、今まで騙してたんですよ?」

「騙されたと思わないよ。むしろ新しい一面を知れたのが嬉しいよ」


 誰だって知られたくない一面はあるんだ。

 僕も詰み体質なんてものを、誰にも知られたくなかった。

 ただ今は、信じられる人に打ち明けるだけで、1人で悩む必要はなかったんだって思てる。

 ライラさんの場合、暴露って形で幻滅されたと、秘密にしてた分ショックが大きいんだ。


「てかさー外面で良い子ぶって、1人ん時はズボラライフ、大体そんなもんだよ、世の中の人間って」

「星さん……」

「私を見てみ? 良い子ちゃんとズボラをオープンにしてるし!」

「呉橋さんはオープンにし過ぎなんで、少し抑えた方がいいですよ」

「そうやって人は言葉に殺されるのだよ、洋君。ま、無傷ですがね! にょほほ!」


 吹っ切れてる呉橋さんの姿と、幻滅せず受け入れた僕らを見て、ライラさんは目元を軽く拭っていた。


 ♢♢♢♢


「……単に要領が良いだけで、いつも期待に応えてばかりでした。期待される度、何かに秀でた人が周りに集まり、より期待されました」


「そんな日々を送る内、丸1日家で1人っきりの時がありました。期待のない1日は一体何をすればいいか、数時間戸惑いました」


「ただ、無自覚の積もり積もった期待のストレスに、本心は正直でした。コンビニでコーラやらお菓子を買い漁り、気付けば真っ暗な自室でだらしなくパソコン前で過ごす自分がいました」


「何ものにも代え難い至福に、心の底から笑顔になってる自分がいました。それから家で1人っきりになる度、ズボラな自分になりました」


「そんなある日、急遽帰ってきたお母さんに、ジャージ姿でカップラーメンを貪り食うズボラ場面を見られました。期待に応え続けた良い子なワタシを、誇りに思ってくれたお母さんの顔が見れず、言い訳を沢山考えました」


「しかしお母さんは優しく抱き締めて『今まで気付けなくてごめんね。もう我慢しなくてもいいんだよ』と言ってくれ、やっと自分らしくいられると安心しました」


「お父さんもお母さんと同じで、期待なんかよりワタシの意思を尊重してくれ、家ではズボラ、外では良い子の分別ができ、心にも余裕が生まれました」

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