19話生徒会親交会
放課後、約束通り生徒会室に寄ったが運の尽き。
待ち受けてた正装に着替えさせられ、親交会の場所までバス移動してる。
「久し振りの夏洋ちゃんは格別ですなぁ♪ はぁはぁ♪」
「夏洋お姉ちゃんも今日で見納めだから、沢山撮ってあげるね!」
「萌乃ちゃん、撮ったヤツ共有してね」
「土台が女性寄りですが、ここまで変われるとは興味深いです」
「積木夏洋ちゃんに、今の感想を聞いてみましょう♪」
「もうどうとにでもなれ、だよ」
生徒会の皆さんに囲まれてる積木夏洋は、女装時の積木洋の名前だ。
呉橋さん経由で知ったのか、ライラさんたっての希望だそうだ。
愛実さんもカメラ女子になって、ホクホク顔だ。
「くはぁー! やっぱ洋の女装、最高に最強だわ!」
「愛実さん……」
「その顔もイイ! もっと撮らせてくれ!」
恋人の興奮も止められず数十分、親交会が開かれる『古民家カフェ•小鳥の宿木』に着いた。
「時間通りですね、呉橋会長」
「まね! ん? ほよ? なぁ、ライラちゃんよ。他の子達が見当たらんが?」
「本日はワタシだけです」
「親交会なのに? ま、いいけど! てか、立って出迎えないでさ、座敷部屋で待ってれば良かったのにぃ〜」
「ワタシが好きでやってるので。さぁ、行きましょう」
「うぃー!」
僕と愛実さんに視線を合わさず、淡々としてるライラさんの略奪は、既に始まっていた。
「ほほー! ここが座敷部屋かい! いいところじゃなのぉー!」
「木のいい匂いがする! スンスン! ふわぁ……」
「ほんなら、好きな場所に座っ……ら、ライラちゃん? な、何故に洋君……じゃなくて、夏洋ちゃんの腕に絡みついとるんだい?」
「ここが1番好きな場所なので。ワタシの事は気にせず、座って下さい」
「いや! 彼女舐めんな!?」
「両手に花っすね! 夏洋後輩は人気者っす!」
「沙良先輩、訳ありですよ、きっと」
「そうなんっすか?」
「隣狙ってたのに……むぅ」
「さぁさぁ♪ 座りましょうか♪」
上座に新生徒会、反対側に僕らが座るも、僕の両サイドは一色触発も同然だった。
「夏洋さん好みの甘味は、ここからここのメニューになります。ので、好きなだけ頼んで下さい。ワタシの奢りなので」
「い、いやいや! ちゃんと出すよ!」
「勝手に決めるなよな。んじゃ、夏洋! 一緒に決めような!」
「いい度胸です。推定Bカップ未満のくせに」
「し、C未満だし?! 無駄乳で頭までお堅いんじゃねぇのか!」
「均整のとれた身体が羨ましいのですね。まぁ、貴方には成れないでしょうがね。ふっ」
「な、何ぉおお!?」
「愛実さん落ち着いて!」
一歩も引くどころか、臆せず直進してくるライラさんは、重装甲戦車そのものだ。
このままだとライラさんの優勢は覆らない。
敗走が頭を過ぎる中、瑠衣さんの言葉で状況が変わった。
「ねぇねぇライラちゃん♪ いつも甘いお菓子とジュースばっかり飲み食いしてるって本当?」
「はい? 誰がそんなデマを流したんですか」
「デマじゃないよ♪ 昔のライラちゃん♪ が自分で言ってたんだよ? 忘れちゃったの?」
「……竹塔瑠衣さん……貴方は何者ですか」
「これ見たら思い出してくれる?」
見せてくれたスマホ画面には、小学生5年生夏合宿の集合写真。
幼さが勝るも大人びたライラさんの姿もあった。
「どう? 私もいるんだけど思い出せるかな?」
「竹つん……竹つん……んー? どこにもいなくないか?」
「ライラちゃんはみっけたけど、確かにおらんなー」
「あ! もしかしてこの子かな!」
萌乃ちゃん先輩の指差す先は、仲睦まじい10人のギャルの1人だった。
ロングの茶髪、耳や舌にピアス、バッチリ決まったメイク、
気崩されたド派手なファッション。
清純派の瑠衣さんとは遠い、真逆の姿に、ライラさんは顔を青ざめていた。
「ま、まさか……る、るちょぱ……」
「あー♪ 思い出してくれたんだね♪ ライライ♪」
ライラさんと瑠衣さん、2人のリアクションで、小学生ギャル・るちょぱが同一人物だと確定した瞬間だった。




