18話 同伴とアイディア
北高と黶学の生徒会親交会は、きっとライラさんが関わってる筈だ。
「なんか黶学の会長さんがさー? 洋君と同中みたいで、是非とも同伴して来て下さいって、朝一で連絡が来たんよ」
「会長って、満欠月ライラさんですか」
「そのライラちゃんです! てか、洋君って生徒会長の知り合い多くない?」
「呉橋さんもその1人ですよ」
「そうでした♪ あーこりゃ一本取られましたわぁ!」
本来生徒会でもない僕の同伴許可は、そういう事なんだ。
乗り越えるべき七人女神の1人は、僕1人で乗り越えるつもりはない。
「呉橋さん。愛実さんも一緒でもいいですか?」
「ほ? あ、そーいえば付き合い始めたんだっけ? おめっとさん! 幸せにすんだぞ! ぐしぐし!」
「星さん、積木さんは真面目に言ってるんですよ」
「ちょっとしたお茶目よ、お・茶・目♪ 芽白♪ ま、1人2人増えても大丈夫っしょ!」
「もう……責任は私か星さんが取るから、心配しないでいいよ」
「って事で、よろぴーなっつ♪ ぽりぽり、うまし」
お裾分けのピーナッツ数粒貰い、感謝しつつ口に運んだ。
「あ、そだそだ。北高出る前に、洋君には正装に着替えて貰うから」
「正装?」
「とりま放課後なったら、生徒会室に来てちょ♪」
無邪気で可愛らしい微笑みに、嫌な予感が過った。
♢♢♢♢
生徒会室を後に、1-Bの扉を開いた。
「お! 来たな積木! 早くこっち来い!」
「わ?!」
クラスメイトの赤鳥大地君に、教壇まで背を押された。
愛実さんが隣に並び、神流崎さんと緑岡君も並んでた。
「ほんじゃ改めて! 我が1-Bに、2組のカップルが爆誕したぜ! ヒューヒュー!」
クラッカーに拍手と、祝福の嵐に包まれた。
「そんじゃ神流崎さんから一言ずつ、どぞ!」
「気持ちは嬉しいですが、頼んでません」
「あ……す、スンマヘン……」
「だ、大地君。ゆ、夕季さんと僕の事は、今後静かに見守って貰えると嬉しいかな?」
「犬次郎君の言う通りですよ。分かりましたか赤鳥君。それに皆さんも」
静かに頷くクラスメイトは、テンションもシュンとなった。
「ま、夕ちゃんの照れ隠しもそこそこにさ、赤鳥も皆もサンキューな? そんで、私達をよろしくな!」
「よ、よろしくね」
祝福してくれた1-Bの皆は、今年いっぱい七人女神関係で巻き込むかもしれない。
だからこそ、七人女神との関係を、皆に向かって手短に語った。
♢♢♢♢
昼休み、誰も教室から動かず、教壇に立つ僕と赤鳥君に視線を向けてる。
「えぇーつまりだ。積木と同中だった、乙夜街道アリアをはじめとした超有名人女子達7人が、結婚前提に瓦子から略奪にし来ると……」
「うん。黶学の生徒会長でもあるライラさんが、今日動く筈なんだ」
「今日ってマジ急過ぎんだろ。てか、あの満欠月ライラだろ? 偏差値75の黶学を首席入学した、マジもんの才女……その上、美人でスタイル抜群、生徒にも先生にも人望が厚くて、巷じゃ『学問の若女神』って崇拝されてるって話だろ?」
「みたいだね」
お泊まり会でライラさん本人からそう聞いてる。
親交会でも若女神パワーを遺憾無く発揮する筈だ。
「正直、気持ちだけじゃ勝ち目はねぇよ」
「かと言って逃げる気もないよ」
「でもよ……な、なぁ。皆も積木達が乗り越えられそうなアイディアとかないか?」
「じゃあ、弱点を見つけるとかは、どう?」
「それだぜ! 大米さん!」
球技大会でサブリーダーを務めてくれた大米桐子さんの言う通り、弱点があれば勝てる見込みはある。
ただ七人女神の弱点は、3年間一緒に過ごしててもなかった。
「愛実とラブラブチュッチュ見せつけてやれよ」
「く、来亥さん……相手を余計に焚き付けるだけですって」
漫画家の卵の来亥六華さんのアイディアは、流石にやる勇気が出ない。
「体力勝負なら白黒ハッキリ分かるぜ!」
「脳筋の風渡さんは、発言をご遠慮してくださいませ」
「お、おぅ! 悪かった!」
水泳部風渡ありすさんのアイディアが通っても、ライラさんは運動神経も抜群だ。
部活の助っ人として全国大会出場を勝ち取る実績持ちだ。
時間の許す限り、続々とアイディア出してくれるも、勝算は無かった。
「しょ、初っ端から負け確なのか?!」
「ごめん赤鳥君、皆。でも、ありがとう」
「お、おい。ど、どうすんだ積木? 無謀な特攻だけは絶対止めとけ?!」
「いざって時はそうすると思う」
「だな。皆! ありがとな!」
「ふっふっふ……楽しく見学してたけど、大丈夫だよ積木君、愛実ちゃん♪ ライラちゃんは私に任せて♪」
「る、瑠衣さん?」
「竹つん?」
自信満々で胸を張る瑠衣さんを、今は信じるしかない。




