☆15話 歯磨きとおやすみ
※2024/7/7文末に満欠月ライラのイラストを追加しました!
※イラストが苦手な方はスルーで!
あびるさんの歯磨きご褒美で、正面から丁寧にゆっくり磨かれ、磨き残しがないか顔を触れながら確認されてる。
「歯並び良し、色も白くて綺麗、そして虫歯知らず。洋クンは歯も完璧やな」
「あ、ありがとう」
「ウチは八重歯やから、ちょこっと不恰好なんや。ほりゃ、見てぇゃ」
「猫みたいで可愛いと思うけど」
「にゃ、にゃふぅ……」
赤くなる顔をスマホで隠すあびるさんは、実際にSNS界隈で『あび猫様』と呼ばれる程で、つっけんどんな塩対応目当てのM気質な人が多いそうだ。
「さぁ、皆も見てないで歯磨きしなさい」
歯磨き光景を全員に視聴されてたから、ようやく解放されて一安心だ。
皆が洗面所に列を作る中、空がもじもじと歯ブラシと歯磨き粉を持ってやって来た。
「お、お兄ちゃんに磨いて欲しいんだけど……ダメ?」
「今日は特別だからね」
「ふぁーい♪」
ソファーで優しく磨き上げ、ニッコニコで洗面所に向かった空。
いつまでも甘えん坊な妹は、いつまでも可愛いんだ。
「なぁなぁ洋クン。ウチのも磨いてくれん?」
「ダメ」
「ウチの歯ブラシ舐ってもいいから! むしろ舐ってや!」
「余計にダメだよ」
シュンと項垂れ、渋々歯磨きをするあびるさん。
隙あれば私欲行動をとる七人女神は、我が家でも気を付けないと。
♢♢♢♢
歯磨きも終わり、今度はアリアさんのご褒美で、おやすみ前の1分ハグだ。
「さぁ、来てくれ」
「う、うん」
真正面からのハグで、豊満な胸が押し潰れ、とびっきりの美人顔も真横だ。
「私の方が少しばかり背が高いから、君の顔をより近くで感じられるな」
「そ、そうだね」
「オレだって洋よりデカいぜ! なんなら、こんな中で1番だ!」
「ワタシも洋さんより大きいです。抱き心地も抜群です。さぁ、次はワタシにハグを」
「あー♪ 便乗なんて、いーけないんだいけないんだー♪」
茶々入れに一切動じずに1分が過ぎ、緩むように離れたアリアさんは、色気たっぷりで火照っていた。
「ふぅ……半年振りに洋君を感じられて、幸せ一杯だ。身体も正直に反応してる」
やけに柔さが際立ってた胸のそれを見て、下着を着けてなかったんだと今更気付いた。
「今夜はいい夢が見られそうだ。おやすみ、チュ」
おでこにキスをしたアリスさんを、他の七人女神が僕の部屋へ連れ込み、やいのやいの激しく語り合ってた。
ポツンと残された僕と愛実さん。
やっと訪れた2人きりの時間に、愛実さんは顔を近付けて、優しく静かに口を重ねて来た。
「ここだけは上書きさせないから……お、おやすみ!」
「え、あ、お、おやすみ」
アリアさん達の部屋に飛び込み、語り合いに激しさが増す中、僕は数分間その場で立ち尽くしてた。
♢♢♢♢
浮き足立った心が落ち着き、姉さん達の待つ寝室に静かに入った。
「ん、遅かったわね」
「ちょ、ちょっとね。僕の寝るところは……」
「お姉ちゃんと私の間だよ! 早く早く!」
仰せのままに間に収まり、2人して僕の方へ身体を向けて来た。
「愛実ちゃんと付き合う事になったのね」
「うん」
「おめでとう。大切に大事にね」
「ありがとう姉さん」
「でも、お兄ちゃんが誰かと付き合うなんて、全然想像出来なかったよ」
「そうね。義妹になる日も近いわね」
「ね、姉さん? 流石に気が早す……ね、寝てる」
「もう寝てる時間だもんね。ふぁ……お兄ちゃん……おめでとぅ……くぴぃ……」
「寝ちゃった……ありがとう空、姉さん。おやすみ」
静かに目を閉じ、忙しなくも忘れられない一日を終えた。
そして目を覚ました時、僕の部屋で七人女神に囲まれていた。