⭐︎12話 嫉妬と怠惰と見定め
※2024/4/19文末に灘梨紅のイラストを追加しました!
※イラストが苦手な方はスルーで!
ライラさんの来訪から10分程、姉さん達が買い出しから帰ってきた。
七人女神の1人と一緒に。
「ぉ邪魔するぜっぇええええええ! ハッ! 洋! ずっとずっと会いたくてたまらなかったぜええええええ!」
「ぐ、ぐるじぃ……イヴざん……」
「よ、洋から離れろ! ば、馬鹿力過ぎるぅ!? ぬぎぃいい!?」
秒で飛びつき大しゅきホールドの木林森イヴさん。
前面に豊かな感触が押し潰れ、掃除機にも負けない荒い鼻呼吸、猫みたいな顔擦りを同時にやってきてる。
愛実さんの引き剥がしにも、ビクともしない拘束力は、半年前よりグレードアップしてる。
「ふふ、喜ばしい再会ね。越子はまだ来てないのね」
「夕飯までには来るそうですよ、蒼義姉様」
「おいアリア! 抜け駆け義妹やってんじゃねぇよ! オレだってやりてぇのにズリぃ!」
「勝手にやればいいやろ。そういや蒼ちゃん、ぬいぐるみ好きだったやろ? 前にファンプレで、今人気のヤツ貰ったから上げるわ」
「物で好感度上げなんて、一時的なものです。ので蒼さん、この2日間お手伝いをさせて下さい。全身全力でやらせて頂きますので」
「ワタシもぁ、夕飯のお手伝いしたいからぁ、なんでも言って欲しいなぁ」
「梨紅は家事できないし、夜のご奉仕まで時間あるから♪ 今の内に空ちゃんをペロペロしちゃおう♪」
「にゃん?!」
異性が増えれば増える程、カオスに成り果てる。
七人女神の詰み場ともなれば、同性の愛実さんも近付けず、非常に脅威になってる。
「そ、空ちゃん! い、今助けにゃぷ!?」
「今度は愛実ちゃんをペロペロしちゃおっと♪」
「め、愛実さん!?」
甘く可愛らしい声と謎の粘液音、そして頭上に舞う衣類。
梨紅さんに何をされてるのか気が気でない中、インターフォンが鳴り、姉さんが対応してた。
「今行くわ。洋、越子が来たから出て頂戴」
「わ、分かった! イヴさん、一旦降りてくれる?」
「イヤ! こんまま一緒に行く! 離そうとしても絶対離れねぇからな!」
「イヴ、洋に頼んだの。わがままじゃダメよ」
「うっ……わ、分かったよ蒼の姉さん……」
イブさんを始め、七人女神は姉さんに対し、素直に従う傾向にある。
自由を手に入れ、真っ先に愛実さんを助け出した。
七人女神の視線を背に、愛実さんと玄関へと向かった。
「お、お待たせ越子さん!」
「来た」
「いらっしゃ……目がギンギンだけど大丈夫?」
「洋に会うのが楽しみ過ぎて、久々にエナドリ飲み過ぎた」
「え、自分でエナドリ封印してたのに?」
「うん。ちゃんと今日まで封印してたよ。身体壊してお金稼げなくなったら、将来、洋を養えなくなっちゃうもん」
エナドリ解放の代償なのか、いつものローテンションがハイになり、饒舌になってる。
「ところでぬちゃぬちゃな子が彼女?」
「ぬちゃぬちゃ? わっ!? め、愛実さん!? ごめん!? 気付かなくて!?」
「だ、大丈夫……た、単なるマッサージローションっぽいから……」
「梨紅の仕業かな、ドンマイ。タオル貸してあげる」
「あ、ありがとう……」
「慎ましやかなおっぱいは、皆同志だから」
フォローになってないフォローに、下唇を噛む愛実さんは、タオルで身体を拭いまくった。
♢♢♢♢
越子さんが来たことで、積木家に七人女神が集結。
リビングに一同に会し、アリアさんが改めて再会の音頭とった。
「今日は私のサプライズに付き合ってくれてありがとう。突然の訪問を快く受け入れてくれた蒼義姉様、空ちゃんには感謝しきれないです」
「いいのよ」
「どういたしまして!」
「そして洋君、愛実ちゃん。君達2人が結ばれたことを、まず心から祝福しよう。おめでとう」
「あら、そうだったの? お赤飯も用意しないとね」
「ね、姉さん」
「アリア、私のことは気にせず続けて頂戴」
本当に赤飯準備に取り掛かる姉さん。
少し間の抜けた姉さんのお陰で、圧のある空気が若干解れた。
「しかしながら、中学時代を共に過ごした私達からすれば、愛実ちゃんは洋君に相応しいと思えない」
「で、アリアの滞在期間中に、2人を各々見定める事になったぜ!」
「いつ誰が見定めに来るかは内緒や」
「今日明日は対象外ですので、ご安心下さい」
「7人全員を認めさせた暁には、梨紅達は洋ちゃん達の絶対的な味方になるよ♪」
「見定めの際は協力プレイあり、上限無しで何人でもオッケー」
「もしぃ逃げちゃったりしたらぁ、ようくん達を絶対認めないってことになるから、よろしくねぇ」
「何もよろしくないんだが?!」
「愛実さんの言う通りだよ! 勝手にお兄ちゃん達の幸せを試すだなんて、間違ってるよ!」
「見定めは私達の問題であって、君達の問題ではない」
反論をいくらしようとも、アリアさん達はもう引き下がらない。
それ程までの言葉の重みと、真剣さなんだ。
ここから先は真摯に向き合ってこそ、対等な関係になれるんだ。
愛実さんの手を握り、意志を汲んでくれたのか、キュッと握り返してくれる。
「アリアさん達の見定め、必ず愛実さんと乗り越えてみせるよ」
「その言葉、君達の覚悟として受け取る。あびる」
「言質に動画、しっかりと証拠は押さえたわ。もう後戻りはできんよ、お2人さん」
「うん、分かってる」
「洋と一緒に進み続ける!」
七人女神に覚悟が通じ、大きな圧から解放された。
「やはり私の目の狂いはなかったか……さて、堅苦しい話はここまでにして、今は再会を祝おうじゃないか」
「んしゃ! 家中を飾り付けすんぜぇ!」
「作業分担で効率的にいきましょう」
「あおさんのお手伝いするねぇ」
「梨紅は味見係がいいなぁ♪」
「アホ、サボりは厳禁や。ビシバシ体動かして痩せや」
「皆頑張って。アタシは洋と空と愛実とゲームしてるから」
「働かないものにはご飯はないぞ、越子」
ドタバタと賑やかな時間は、夕飯時まで続いた。