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積木君は詰んでいる3  作者: とある農村の村人
3章 集う七人女神
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9話 再会

 お昼ご飯を挟みつつ中学時代の話、七人女神の話を終えた。


「成程なぁ……とりま、近い内に、七人女神と再会すんだな?」

「うん。愛実さんが巻き込まれないよう、頑張るから!」

「何言ってんだ? 巻き込まれ上等! 洋と一緒に乗り越えるって、腹括ったし大丈V!」

「愛実さん……ありがとう」

「にひひ♪」


 心強い味方が傍にいる。

 もう僕1人の問題じゃないんだ。

 手を重ねてくれる愛実さんのお陰で、後退りせずに向き合える。


「お取り込み中ごめん……悪いニュースが入って来た……」

「悪いニュース? 一体何なんだ、しららん」

「アリア、昨日から日本に帰って来てるって……」

「え!?」

「事前連絡無しかい!」


 半年間一度も連絡を取らずとも、アリアさんの女優活動伝いで、何をしていたのかは大まかに把握している。

 近況だと映画撮影で多忙な日々を送ってると、ニュースに取り上げられてた。

 まさか帰って来てるとは思わなかった。


「きょ、今日の午後、サプライズで会いに行く予定だったみたい……積木君に……」

「午後って……もうなってんじゃん!?」

「白姫さん! 色々とありがとう! お会計お願い!」

「あ、あい」


 慌ただしい退店のまま、早足で最寄り駅まで向かった。


「洋! こんまま私も家まで着いてくから!」

「うん! ちゃんとアリアさんに直接伝えないだもんね!」

「おう! ヤバ!? あと5分で出ちまう! ダッシュダッシュダッシュ!」

「早っ!? ま、待って愛実さん!? 脚がぁ?!」


 不完全燃焼な初デートに文句一つ言わず、心身共に手を引いてくれる愛実さんは、本当に僕には勿体無い彼女だ。


 ♢♢♢♢


 数時間振りの我が家は、玄関先から感じたことのないプレッシャーを放ってた。


「こん感じ、もう来てるな……」

「うん……行こう、愛実さ」

「誰か外に……あ、おかえりお兄ちゃ……へ? め、愛実さん?」

「空。詳しい事は後で話すけど、愛実さんと付き合う事になったから」

「お邪魔するね! 空ちゃん!」

「つつ付き合ってる? か、かのかかかののじょっじょって事ぉお!?」


 バグった空の横を通り、玄関の赤いヒールが真っ先に入ってきた。

 プレッシャーの元凶はリビングにいると、静かに扉を開けた。


 艶やかな赤のストレートセミロング。

 お手本の様な姿勢の良さ。

 気品ある清楚な白タイトYシャツ。

 そして肌身に響く圧倒的なオーラ。


 七人女神の1人、乙夜街道アリアその人がソファーに座っていた。


「半年振りだな洋君」

「あ、アリアさん……」

「ほ、本物だ……生造形エグ……」


 紅茶を飲む所作一つで、映画のワンシーンに見える、息を呑む美しさ。

 画面越しとリアルとでは比べ物にならない。


「して、君の隣にいる彼女がそうなのかい」

「う、うん。彼女の瓦子愛実さん」

「か、瓦子愛実です! 洋の彼女です!」


 ソファーから立ち、ゆっくりと歩み寄って来たアリアさん。

 170越えの高身長、細身で抜群なスタイル、ハリウット級の美貌は、半年間の目覚ましい成長を遂げた証だった。


 目の前に立たれ、同じ歳とは思えない大人な風体で、愛実さんの全身を見ていた。


「愛実ちゃん。君は洋君に何処まで本気になれる」

「ほ、本気ですか? ず、ずっと隣にいるつもりです!」

「なら、親しい友人関係でも変わらないだろう。君の本気は所詮、学生の恋人ごっこだ」

「だ、だったら! あ、アリアさんの本気はどうなんですか!」

「私は洋君に全てを捧げられる。そして洋君の全てを欲してる」


 何一つ包み隠さない強欲の言葉を、臆せず堂々と言えてしまうアリアさん。

 言葉の重みに負け、愛実さんの次の言葉が出てこない。


「ぐうの音も出ないか。確固たる意志のない者ほど、先が見えないんだ」

「ふぐぅ」

「違うよアリアさん」

「ほぉ」

「僕達のことは僕達が決めるんだ。だから、アリアさんには関係ないよ」

「よ、洋ぅ……」


 離れないよう握り返す手こそ、僕らの確固たる意志。

 反論が効いたのか、アリアさんが自分を抱き締め、息を荒立て始めた。


「あぁ……そ、そんな事を言われたら、ますます君が欲しくなるよ、洋君……」


 ルビーにも勝る瞳を輝かせ、並大抵じゃない色香を出してる。

 心が一瞬揺れ動かされても、愛実さんの手は決して離さない。


「あぁ洋君……君の家にお泊まりする今日が楽しみだ……」

「な、何いいいぃいいぃい!?」

「と、泊まるの?!」

「蒼さんと空ちゃんの許可は得てる。何ら問題ないだろう」

「私もアリアと久し振りに話したいもの」

「わ!? 姉さん!?」

「お、お邪魔してます!」


 リビングに入って来た姉さんが、現状の積木家の最高責任者だ。

 許可を得てる以上、何も言えない。


「残りの親友達も、夕飯時までには集うだろう」

「え」

「し、七人女神も!?」


 我が家の一つ屋根の下で七人女神が集結、しかもお泊まり付き。

 とんでもない詰み場の確定に、アリアさんが勝利の微笑みを浮かべてる。


「半年振りの再会に、積もる話もあるんだ。愛実ちゃんはそろそろ帰」

「わわわ私も泊まっていいですか?!」

「め、愛実さん!?」

「な」

「いいわよ。夕飯の腕が鳴るわね、ふふ」


 七人女神と愛実さん、一触即発にならない事を願うしかない。

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