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第四話

美都留、いや、鶴姫は、白粉に紅を唇に塗ってもらい、十二単衣に匹敵するくらい華美な衣装を纏った。金や紫や紅等に白地も加味されたまさに絢爛豪華な着物である。

失業、失恋、貯金を持ち逃げされた地味なアラサーOLから巫女になり、今は戦国時代のお姫様候補になった。

もう令和に戻らなくて構わない。この地の大名の正室に成りあがって見せるわ。

鏡は無いものの、首を上下左右に見回し見える範囲で、その豪華さは素人でもわかる。

本当に大河ドラマに出てくるお姫様のようだ。

和服で結婚式を挙げてもこれほど豪華な衣装は


依然、鶴姫の声は出なかった。

「鶴姫様、殿のお部屋に今から移動します。」

鶴姫は女中たちに案内されて、殿の部屋に来た。

「これは鶴姫、なんと美しい姫君。こちらに。」

鶴姫は女中に促されて、イケメン大名に近づいた。

そう言えば、市川家とは言っていたが、この殿様の名前を知らない。

まあ、しばらくは声が出ないし、声が出たら殿と言っておけばいいか。


イケメン大名に近づくと、優しい香の匂いがして、鶴姫は下腹部に湿りを感じる。

お宝なんかどうでもいいから、早く結婚してもいいのに。

このイケメンなら合格よ、抱かれたい。


イケメン大名の顔をまじまじと見ると三十台後半のようにも見えるが、顔を真っ赤にしているから意外と初心なのかも。

女中頭が鶴姫の耳元で囁いた。

「鶴姫様、殿の胸に飛び込むのです。そして甘えるのです。殿は奥手ですから早く奥様をめとって頂かないと。」


鶴姫は言われた通り、令和での数少ない経験を思い出し、あざとく上目使いをして、イケメン大名の胸元に抱き着いた。

イケメン大名もおずおずと鶴姫の背中まで手を伸ばし二人は着物越しではあるものの密着した。


甘美な香の匂いに鶴姫の体は火照ってくる。

鶴姫は令和で読んだ古典を思い出していた。

確かキスは平安時代にすでに口吸いとして土佐日記などに書かれてあったわ。

鶴姫はイケメン大名の顔の前に、口をとがらせて眼を瞑って待ってみた。


女中頭が小さな声で言った。

「殿、口吸いです。巫女の性愛の技でございます。

巫女だった方が姫様になられて婚約されるのですから、殿から鶴姫様の唇に口をあてがうのです。」

そうなのか、大名の姫は、キスしないのか。


鶴姫が眼を瞑って待っているとやがてゆっくりとイケメン大名の唇が鶴姫の唇に密着した。

もう鶴姫の二つの桃の先は固くとがっているし、茂みも湿りどころではなくジュワっと濡れている。

着物を着ているのにこうしてキスをされているだけで絶頂感を味わいそうだ。


女中頭が、「殿、そろそろ、お時間です。父上に会う時間です。」

女中たちに促されて、鶴姫はイケメン大名の唇から離れ、目蓋を開けた。

そこには顔が真っ赤のままの大名がいた。

「わかった。父上に婚約の御報告をする。」


鶴姫は、イケメン大名と女中頭の後ろから大名の父の部屋に移動した。

「父上、失礼します。経好です。」


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