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なろうラジオ大賞投稿作

交差点の交通量調査に幽霊は含まれますか

作者: こだれ

 保育園の前で、園児用の黄色い帽子とバッグを着け、眼鏡をかけた通流(とおる)は、怪異(かいい)を待っていた。


 大学生だと言うのに園児のコスプレをしている時点で、通流自身も怪異ではあるが、これには理由があった……多分。


『……来たわよ、交差点の向こうから』


 通流の上司の夜美(よるみ)が合図を送る。

 訪れる怪異は<ターボ(ばばあ)>と呼ばれる都市伝説の類。それがこの街には、実際に居るのだ。


 怪異は轟音(ごうおん)を上げて交差点に進入する。信号も、急な進路変更による遠心力も関係ない。時速100キロはゆうに超えているスピードで、減速のないまま曲がっていく。




 ゴゴッ! ゴゴッ! ゴゴッ!



 もはや足音ではない。地面を蹴り、その全てを推進力に変えた怪異は、疾風のまま保育園へ向かう。



 

 ゴゴッ! ゴゴッ! ゴゴッ!



 通流は覚悟を決める。怪異と相対するのは自分一人。

 



 

 ゴゴッ! ゴゴゴゴッ!


 

 雑多な反響が次第に揃っていく。




 ゴゴゴゴゴゴッ!



 その轟音に空気が震える。




 ゴッ


 ゴゴゴンッ



 足を止めた怪異が近づき、





 その口を、開いた。





『通流! お迎え、遅くなってごめーん!』




 通流は、交通量調査のバイトをしている。その調査項目を見た時、驚きを隠せなかった。


「自動車、自転車、歩行者……幽霊?!」



 幽霊は成仏の為、霊山を目指し行列を作って歩みを進める。その三途の川の様な成仏の列の道は、現実では普通に道路としても使われているのだ。



「バイト初日は驚きましたよ。眼鏡が無ければ幽霊は見えないから、今でも慣れませんけど。そして、この調査で、まさか亡くなった母に出会うなんて」


「ふふ……。あの怪異は成仏の列に影響を与えていたから……でも、ちょうど良かったわ」


 通流の母は、通流を保育園に迎えに行く最中、亡くなった。しかし、その迎えに行かねばという気持ちが怪異の種となり、<ターボ婆>へその姿を変えた。

 怪異となった母の後悔は迎えを待つ息子。ならば、息子の姿を見せれば、怪異騒ぎも収まるという事で、あの()()()姿()であった。



『ねえ、通流ちゃん。あの地縛霊さん、列の渋滞の原因になってるんじゃない?』


「……本当だわ。通流君、交差点の渋滞緩和の為、また仕事よ」


「夜美さん。コスプレ、しませんからね。というか母さん! 何で()いて来てるの!?」




 生を終えた後の営みも運ぶ、この世の道路と交差点。


 交差点を渡る時の確認は。右見て、左見て、右を見る。


 では、何故、2度も右を見るのでしょう。



 それは、アナタに迫る()()を、確認する為……なのかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルや導入部分の珍しさがとても面白くて楽しく拝読しました! ターボ婆の正体や解決策も好きですし、そのあとの賑やかなやりとりも好きです! 終わり方も日常にリンクする感じがとても好きです!…
[良い点] タイトルだけで読みたくなる発想の素晴らしさに、ターボ婆が最初から最後まで良い味を出していました。 ちなみに、三次元的な交通量はどうなのでしょう? 地面から出たり入ったり。 [一言] 実は…
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