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五話 賢者と狼と

これで合計、およそ二万五千文字。

一般的な書籍の四分の一ですね。

新キャラ登場です!


キャラについての感想などもよろしくお願いします。




「……というわけで、……模擬迷宮戦争、する。

 ……準備、できてる?」

「待てまてまて!

 何がというわけでなのか知らないが、俺は疲れてる!

 今から寝るところだぞ!?」



 灰色の巨狼との死闘からおよそ二時間経った。

 満身創痍のアースドラグモールやゴブリンどもを巣穴や集落に運び。

 通路で石化した血液や肉塊、骨片なんかを砂化して片付け。

 さらに!

 通路と部屋全てを石化して回って。

 しかも!

 ボスモンスターをちゃんと三体作りました!!


 それこそ――


「というわけで、俺は寝る!」


 ――というものだ。


「……ん。

 ……準備万端。

 ……素晴らしい。

 ……ありがとう、ますたー」

「お……おう」


 何故か、動くはずの無い人形の顔に、笑顔が見えた気がした。

 ……もう少し手伝うか。


「やっぱり、俺も手伝おう。

 模擬とは言え、戦争なんだろう?

 核玉を砕かれて死にたくないしな」

「……模擬迷宮戦争、特別規則。

 ……核玉への攻撃、核玉の破壊、禁止。

 ……勝利条件。

 ……先に相手の核玉、触れる。

 ……相手が降参する。

 ……死ぬことはないよ?」


 ふふふ。

 俺の睡眠の邪魔をするのだ。

 全力で叫んで、石にしてくれるわ!


 それにしても模擬迷宮戦争は言いにくいな。

 迷宮戦争……ダンジョンバトル。

 模擬……イミテート?

 よし!


「イミテート・ダンジョンバトルと呼ぼう」

「……把握。

 ……長いから、だんじょんばとる、と略称」

「よし。

 ダンジョンバトルに向けてまずどうする?」

「……新しくもんすたー、創る。

 ……防衛、万全。

 ……攻勢、集中強化」

「ゴーレムじゃダメなのか?」

「……決め手にかける」


 なるほど。

 じゃあさっそく作ってみるか。


「えーと。『竜』『王』『星』の三つで良いか?」

「……ダメ。

 ……相手は、虫。

 ……竜、だんじょん、入れない。

 ……『人』『怠惰』『星』。

 ……指揮官、欲しい」


 なるほど。

 自分が働きたくない『怠惰』なら、指揮や統率ができるやつが、作れるかもしれないからな。


「オーラはどうするんだ?

 目一杯入れるのか?」

「……開始は明日。

 ……ますたー、倒れる、困る。

 ……だんじょんぽいんと、代用。

 ……三〇〇〇〇ぽいんと、全部使って」

「マジで?」

「…………」


 コクコクとメイスは首を縦に振った。

 目がマジだ。

 あの灰色の巨狼を倒した時、およそ二五〇〇〇ポイントが手に入った。

 三〇〇〇〇ポイント分の魔素を込めるということは、あれよりも強いモンスターが生まれる可能性がある。

 ……俺より強そうだけど、大丈夫か?


 まあ、なるようになるだろう。


 ◇◇◇


 傷つけないように細心の注意を払って、ダンジョンコアに触れる。

 取り出すのは、


 ――『人』のフォーム

 ――『怠惰』のエッセンス

 ――『星』のアトリビュート



 要領は前回と同じだ。


 まず『人のフォーム』を床に置く。

 『竜』とは違い、雑に扱えばすぐにでも壊れそうな透明な容器だ。

 矮小にして脆弱。

 どこまでも愚かで、弱々しい。

 だが『竜』とは比較にならないほどの膨大な可能性を感じる。

 かつても今も引きこもり続けている俺とは大違いだな。


 次はエッセンスか。

 粘性のある黒い液体。

 『怠惰のエッセンス』。

 瓶の栓を爪で切断し、その中身を容器へと注ぐ。

 ドッッロッ、としたそれは、一向に瓶から流れない。

 すぐに容器に納まった『勤勉』とはえらい違いだ。


 そして、『星』。

 星と言われてまず思い浮かべるのは、前世で暮らした水の惑星だ。

 あれは青かった。非常に青かった。

 陸と海が永遠に続く思えるほど広大な星。

 それが、手に納まるほどの球体だと思うと、何とも言えない感じだ。

 『星のアトリビュート』は、フォームの入れてすぐに『人』と『怠惰』を七色に染めた。

 『地』の偉大さや重厚な雰囲気とは違う優しさがある。

 自然の色だろうか。

 だが、薄暗い黒が混じる。

 『人』は移ろいやすいのか……。



「メイス、魔素を」

「……分かった」


 メイスに頼み、魔素をポイントで出して貰う。

 徐々に小さくなるが、アースドラグモールの時に比べればはるかにでかい。

 まだ、足りないらしい。


「……ますたー。

 ……もう少し、込めて」

「言われなくとも」


 俺は体内のオーラを捻出し、フォームに込める。

 感覚的にアースドラグモールの倍は込めた。

 完成した結晶は竜気(オーラ)に染まり、また変化していく。


 周囲から魔素をかき集めたそれは、肉体を、いや。

 ――霊体を作り出した。



 纏うローブは、闇のごとき襤褸。

 見た目とは裏腹に強大な力を感じるが、掴みどころが無い。

 その体は、死を想起させる骸骨。

 発するオーラは、相手を恐怖させ、身を竦ませる。


 死を超克した偉大なる魔法使い。

 かつては『死体』を意味した名を冠するモンスター。


「リッチか」

「……把握。

 ……以後死霊賢者を、りっち、と呼称」


 新たに生れたそいつは、ため息をつきながら挨拶をしてきた。


「ふぅ。初めましてー。

 ワタシはー。はぁ。リッチでーす。

 よろしくー。ふぅ」


 挨拶一つで疲れたと言わんばかりの様子だ。

 一応俺はこのダンジョンで一番偉いはずだ。

 敬ったりされないのだろうか?


 だが最も気になるのは――


「お前。何で流暢に喋ってるんだよ」


 ――こいつが俺の話す言語を完璧に話せていることだ。


「んー? マスターのー。はぁ。思考をトレースしたよー。ふぅ」

「そんなに疲れてるなら、まずため息を止めろ」


 はぁはぁ、ふぅふぅ、と。

 いちいち面倒臭いやつだ。


「メイス。こいつの能力を説明してくれないか」

「…………解析、……不能」

「あー。はぁ。鑑定解析ならー。はぁ。遮断してるよー。ふぅ」

「今すぐ止めろ!」

「はぁ」


 こいつといると調子狂うな。

 しかもいちいち言動が面倒臭い。


「俺、こいつ苦手だ」

「……同族嫌悪?

 ……寝ぼけたますたー、こんな感じ」

「マジか!?」


 恐怖を撒き散らし、死を連想させるような、最初の雰囲気は薄れ、何をするのも疲れましたと言わんばかりの言動だ。

 こんなのと同じだと……!?


「メイス、なんか、ごめん」

「……ん。……問題無い。

 ……解析結果、言う」


 割りとすぐに許してくれたメイスは、目の前のリッチの情報を説明した。


「……死霊賢者、りっち、と呼称。

 ……魔法に精通した不死者。

 ……特徴。

 ……物理透過。

 ……肉体系状態異常無効。

 ……浮遊。

 ……気力量、魔法力、器用、高い。

 ……雌。

 …………ランク、B+

 ……特技。

 ……死者作成。

 ……魔法。

 ……研究。

 ……総評、ますたーより有能」

「おい!」

「……事実。

 ……惰眠、貪る、ますたーより、

 ……寝ない、不死者、有能」

「ふぅ。ワタシはー。はぁ。働かないよー。ふぅ」

「だ、そうだが?」

「……大丈夫。

 ……命令、絶対遵守。

 ……怠惰だから、動かないかも。

 ……だけど、配下(・・)にやらせれば、

 ……動かずに、命令、遂行できる。

 ……でしょ?」

「ふぅ。命令ならー。はぁ。やりますけどー。はぁ。できればー。はぁ。研究してたいですー。ふぅ」

「肺どころか、肉体も無いんだから、ため息つかなくてよくないか?」


 何度も言うが、はぁはぁ、ふぅふぅ、とうざい。

 早く喋れ!


「生前からのー。はぁ。癖ですー。ふぅ」

「……ん。

 ……癖なら、仕方ない。

 ……私も、似たようなもの」

「メイスは良いとして、リッチ。

 お前は減らせ。ため息を吐き続けると、幸せが逃げるぞ?」

「……!!

 ……りっち、幸せ、逃がすの、絶対だめ!!」

「分かったよー。ふぅぅ」



 長くため息をついている気がするが、まあ良いか。

 はぁ。どうやら、喋り方に難のあるやつばかりが、生まれるようだ。

 まあ、アースドラグモールなんて、キューキューだもんな。

 意志疎通できるだけ、ましか。

 それにしても、この面倒臭がりが、どんな研究をするのか、逆に興味が湧くな。

 研究室でも与えてみるか。

 ついでにダンジョンの罠でも作って貰おう。



 ◇◇◇



 趣味が魔法の研究らしいリッチに、三の四十から四十九階層を自由に使って良いと言ってみた。

 もちろん、ある程度の迷路や配下のモンスターが通れる通路などは残すように言った。

 その時に教わったことだが、ダンジョンは最低限、人間が通れる通路で、人間が生存できる環境でなければならないらしい。

 もちろんメイスから教わった。


 そうするとなぜ今回、『竜』ではなく『人』を使ったのかが分かる。

 相手が虫のダンジョンだと最低限の大きさしかないだろうから、竜では中に入れないな。


「……ますたー。

 ……ぼすもんすたー、どうなった?」

「ん? ああ。

 ちゃんと三体。作成したぞ?

 フレッシュゴーレムに、グレーウルヴ・アイアンゴーレム。

 あとは、グレーウルフだな。

 これは作ったというより、ペットにした感じだ」

「…………?

 ……実物、見る」


 そう言うと、メイスはダンジョンコアに近づき、何かしらの操作を始めた。

 すると空中にホログラムが浮かび上がった。

 立方体を縦に三つ重ねた直方体。

 ダンジョンの領域すべてを映し出しているようだ。


「……いた。

 ……死肉人形。……ランクC-。

 ……灰色狼の幼体。……ランクC。

 ……灰色狼を精巧に模した鉄ごーれむ。……ランクB-。

 それぞれ順に、ふれっしゅごーれむ、ぐれーうるふ、ぐれーうるぶ・あいあんごーれむ、と呼称」

「……………………」

「……………………」

「……………………」


「……どうした?」


 何故か、急にフリーズしたメイスに恐る恐る話し掛ける。


「……可愛い、ぐれーうるふ。

 …………!

 ……ぺっと、の意味を推測。

 ……愛玩動物。

 ……どう?」

「まあ、合ってるぞ?」


 何故かクエスチョンを付けてしまったが。

 仕方ない。

 それにしても、メイス。

 犬とか狼とか好きなのか?

 まあ、可愛いからペットにしたんだ。

 じゃなきゃ、あの馬鹿デカくて怖すぎる灰色の巨狼と同じ種族なんて飼わない。


 あの巨狼を倒したあと、一の一階層を石化しに行く途中で見つけたのだ。


 灰色と言うより銀灰色の毛並み。

 強そうではあるが、小柄な体躯。

 俺に従順の意を示したその態度。


 完璧なペットだ。

 これなら恐くない。


「せっかくのペットだし、名前をつけるか」

「……!!!」

「ど。どうした?」

「……命名、するの?」

「ん? お、おう。ダメなのか?」

「……問題はない」


 つまり、ダメで無くはないと。

 うーん?

 あ!


「メイスも名前欲しいか?」

「……!! ……ん!」


 あ、とっても欲しそう。

 それにしても名前かぁ~。

 メイスで良い気がするな。

 ああ、いやでも、これはあくまでも『メイドのホムンクルス』の略。

 うん? 『メイド服を着ていて、ホムンクルスのような左右対称な無表情』だったっけか?

 まあ、どっちにしろ。

 もうちょっとまともな名前をつけよう。


 メイドのオートマータ……。

 ダンジョンコア……。

 勤勉……。

 人形……。

 ドール……。

 

 お! メイ(・・)ドのダンジョンコ()で、


「『メイア』はどうだ?」

「……『メイス』、じゃ、ないの?」

「うぐぅ」


 よし!

 何か考えろ!


 ダンジョン……。

 地下……。

 地下牢獄……。

 地下迷路……。

 迷路……。

 メイズ……。ラビリンス……。


 おお!!


「よし! お前の名前は、メイドのラビリンスで、『メイス』にしよう!」

「……ん!

 ……ますたーへの忠誠を対価に。

 ……名を、頂きます」


 どこか儀式のような、形式的な言葉を口にするとメイスは、ふふっ、と笑った……



 ……気がした。




 詳細はわからない。

 笑ったかもしれないし、違うかもしれない。


 なぜなら俺は、命名と同時にぶっ倒れて、意識が暗転したんだから。


 でも、その時は不思議と胸の奥が温かかった気がするな。




理由は分かりませんが、今日はPVが多めです!

ブックマークが二件も増えて、割りとテンション高めです!

今後も読んで頂けると幸いです!!


面白いと思って頂けたら、ブックマーク、評価などお願いします!

誤字報告も歓迎です。

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