三話 集会
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では、三話。どうぞ。
土竜が誕生すると、すぐさまメイスが説明してくれた。
「……亜竜種土竜族。
……地竜爪角土竜、です」
「言いにくい! アースドラグモールだ!」
「……以後、あーすどらぐもーる、と呼称」
うん。角の生えたモグラだな。
「それで、どんなモンスター?」
「……竜爪、竜角の生えた巨大土竜。
……特徴。
……土、岩、虫、食べる。
……大食い。
……力、耐久、器用、高い。
……雄。
……ランク、C+。
……特技。
……穴掘り。
……総評、素晴らしい」
ほぉ。穴掘り。良いな。
しかも大食いだが、土を食えば平気。
確かに、素晴らしいな。
「よし。アースドラグモール!」
『クックッ、キュー』
「メイスの指示通りに地面を掘って、ダンジョンを拡張しろ。
ある程度広くなったら、巣穴作っていいから」
『キュッ、キュウ!』
アースドラグモールは、可愛らしく返事すると、逃げるように核玉の間から出ていった。
「嫌われたか?」
「……土竜、光、苦手。
……ここ、常に、明るい。
……あと、巣穴、喜んでた」
「…………アースドラグモールの言葉、分かるの?」
俺は率直な疑問をメイスに伝えた。
「……もんすたー、なんとなく、意志疎通、可能。
……私の特技。
……ぼっちだった、から」
「悲しいこと言うなよ……」
ちょっとだけ、メイスに親近感が湧いた。
「仲良くしような!」
「……ん!」
空元気も元気の内だよな?
◇◇◇
「それで、あと十二個のファクターを出せるわけだが、どうする?」
メイスの指示通り、アースドラグモールがダンジョンを掘り進め始めてから、少し経った。
決めるのは今後の方針だ。
「……土竜で十分。
……階層は…………百階くらい?」
「どこにそんなダンジョンポイントがあるんだよ」
「……機能的な一階層、深さ一きろめーとる。
……ここに、五十階作る。
……二階層で、百階」
つまり、階層ごとの深さは一キロメートルもあるから、二十メートルくらいずつ、五十階分作る。
二階層あれば、百階まで作れる。
なるほど。
「一の一階層から、一の五十階層。
さらに二の一階層から、二の五十階層まで作るのか?」
「……! ……ん!」
あっているようだ。
メイスの意見だ。
全面的に任せよう。
「じゃあ、後、任せた。
なんか、眠くなってきた。
おやすみ……」
「…………おやすみ、ますたー」
◇◇◇
あれから俺は眠りに眠った。
ここぞとばかりに眠りこけた。
考えてみれば、俺は生後一年と経たない赤子なのだ。
眠って当然だろう?
赤子は寝るのが…………。
って、これは前にも考えたことがあるな。
まあ、それにしてもどれくらい眠ったんだか。
腹減ったな。
メイス、どこの土食っていい?
あれ、メイスはどこだ?
「メイス……?」
「……はい、ますたー。
……どうかした?」
「いや、いるなら良いや」
「…………寝ぼけた?
…………壊れた?」
「いや、たぶん大丈夫。
俺、どれくらい寝てた?」
「……三日、寝続けた」
三日か。だいぶ寝続けたな。
この前までは、十時間に一度は起きていたはずだが。
「なんでだ?」
「……急激、気力、消費したから」
「気力ってなんだ?」
「……妖気、竜気など、総称。
……生気とかも、ある」
なるほど。
アースドラグモールを作った代償か。
というか、モンスターを作る度に疲れるのか?
そこのところをメイスに聞いてみた。
結果。
ダンジョンポイントで代用出来るらしい。
ようするに、魔素を込めれば良いのだ。
ダンジョンポイントを魔素と交換する感覚だ。
そうでもないと、ダンジョンコアやダンジョンマスターより強いモンスターを作れないのだ。
モンスターの強さ、すなわちランクは保有している魔素量で決まる。
ただ、空気中にも魔素とかがあるため、区別をつけるため、体内の魔素量を気力量と呼ぶらしい。
生命は、空気中から魔素を取り込んだり、体内で生成したりする。
余って溢れ漏れるのが、いわゆる妖気や竜気らしい。
生気とか死気とか魔気、霊気、血気と色々ある。
細かい。
非常に細かい。
「よし、まとめてオーラと呼ぼう!」
「……以後、おーら、と呼称」
まあ、魔素はそのままで良いな。
「そういえば、ダンジョンの状況は?」
「……順調。
……現在、一の六階層、完成。
……あと、二十二日、第一階層、完成」
すごいな。
さすがは勤勉な土竜だ。
一日で二階分も掘るとは。
「それで、俺のやることは?」
生れた直後は、寝ていたが、サバイバルゲームに参加している以上、防衛は必須だ。
できればグータラしていたいが、永眠はしたくないからな。
それに現在進行形で引きこもっているからな、わりと気分は悪くない。
「…………無い」
「あ、じゃあ寝るわ。
おやすみ……」
それから俺は、寝て起きて、時々食べて寝た。
いやぁ、素晴らしいね。
人間の三大欲求の過半数が満たされている。
肉欲?
たまに侵入する小鬼のお肉を食べてるよ。
砂にしてからだけど……。
そんな感じで日々を過ごしていたら、いつの間にか二階層も追加されていた。
時々アースドラグモールが献上しにくる鉱石が、最近の嗜好品だな。
中でもお気に入りは、鉄鉱石だ。
コリコリしてて美味しいのだ。
醤油をつけて、イカみたいな感じに食べたいな。
『地底』に魚介類は望みすぎだな。
ふと、気まぐれにメイスを見てみると、粘土質の土をコネコネして遊んでいた。
可愛いところがあるな。
「メイス、粘土で遊んでるのか?」
「…………」
首を横に振られた。
どうやら違うらしい。
「何やってんだ?」
「……傀儡人形、作ってる」
「ゴーレムか」
「……ごれむ?」
「ゴーレム。
術者の命令通りに動く土人形だ」
「……傀儡人形を以後、ごーれむ、と呼称。
……今、粘土ごーれむ、作ってる」
「クレイゴーレムだな」
「……把握、くれいごーれむ」
メイスは、俺と会話しながら、一メートル程の土人形を作った。
すると、スカートの中に手を入れ、とても小さな気石を取り出すと、無言でゴーレムの胸に気石を取り付けた。
「――――」
不断とは違った雰囲気の無言だ。
まあ、無言に変わりはないが。
「何をしたんだ?」
「……地属性魔法、『傀儡作成』」
「魔法!」
そうだよ!
魔法だよ!
言ってたじゃないか!
剣と魔法の世界だって〈大神〉が!!
「メイス!」
「……!」
「俺に魔法を教えてくれ!」
「…………分かった」
この日、俺の怠惰な日々に終わりが告げられた。
魔法。
夢にまでみたこんなファンタジーのためなら、一日十四時間睡眠を、七時間睡眠に減らすのも惜しくはない。
さあ、メイス!
今すぐに魔法を――――
「……ただし。
……だんじょん、作るから。
……一日、一時間まで」
ガーーーーン。
どうやら、十三時間は寝られそうだ。
◇◇◇
ダンジョンにおいて、階層を増やすのにはおよそ五〇〇〇ポイントがかかる。
だが『地底』というのは、文字通り地面の中。
空や風も無いため、『平地』よりも安価な、二〇〇〇ポイントで階層を追加できる。
ただし、このダンジョンの初期階層は『地底』だ。
初期階層と同じ階層は、通常の半額。
つまり一〇〇〇ポイントで作れる。
さらに、ダンジョンコアとダンジョンマスターが地属性なので、合わせて二割引。
また俺の星属性は、地属性の上位。つまり地属性に含まれるので、さらに一割引。
よって第二階層『地底』は、七〇〇ポイントで買えたらしい。
破格だな。
ただし、第二階層はいわゆる異空間だか、亜空間だかに作られているらしいので、地脈だか星脈だかから吸収できるダンジョンポイント量は、変わらない。
第三階層を作っても同様だった。
さてこのダンジョンができてから三四〇日が経過した。
現在、ダンジョンポイントは、三六〇ポイントある。
アースドラグモールと、いつの間にか配下になっていた緑色の小鬼達――ゴブリンと呼ぶことにした――が、ダンジョンを日夜拡張している。
そして、ゴーレムもだ。
あれから毎日一時間――前世での約百分間――ゴーレム作りを教わった。
ダンジョンの防衛機能にするつもりだ。
最初こそ、ずんぐりむっくりのクレイゴーレムしか作れなかったが、今ではより上位のストーンゴーレムすら作れる。
石?
そんなの石化のブレスでいくらでも調達できる。
むしろ、土人形を作って、ブレス吐いて、気石を埋め込む方が早いくらいだ。
他の魔法はおいおい教わろう。
とりあえず、俺は地竜だからな。
地属性魔法でも極めてみたいね!
「……ますたー。
……準備、できた?」
準備? なんのことだ?
「今日は、何か予定があるのか?」
「……だんじょんの集会、ある。
……こあとますたー、集まる。
……『ファクター』、情報、近況、交換する。
……友達いない、から、ついてきて?」
「……………………」
そういえばそんなこと言っていた気がしないことも、なくもない。
「んーーーー。
……すまん。留守番するわ
何があっても、ダンジョンから出たくない」
「……そっか」
ああ。例えメイスの頼みでも、俺は、絶対に家から出ない。
そう決めてるんだ。
「……留守番なら、三つ、仕事して」
「まあ、それくらいなら」
「……全通路、石化。
……部屋全部、石化。
……ぼすもんすたー、三体、作成」
「え? マジ?」
「……言質、とった」
「あ、はい」
ま、まあ。
家での仕事くらい、やったろーじゃねーかー!!
今日は徹夜だ!
死ね~~!!
「終わり次第、寝るからな!?」
「……ん。
……じゃあ、行ってきます」
「行ってらー」
俺は適当な挨拶で、メイスを見送った。
その後、メイスは光に包まれて、消えた。
「へぇ。集会って、転移か何かで集まるのか」
俺は一匹で寂しく呟いた。
ダンジョン作らなきゃ。
次で一章最後です!
集会については、幕間でもう少し書きます。
あ、『幕間』って読み方知ってますか?
私は、以前まではばくまって読んでました。
『まくあい』ですって!
まあ、知ってる人の方が多いでしょう。
小説読んでる人が多いでしょうから。
追記!
作者のモチベーションが上がるので、
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