大いなる神の遊戯
ちょっと、昔話をするか。
と言っても何となく覚えてくれれば十分だ。
ああ……。あれは確か。俺が前世で、家に引きこもっていた時だ。
突然、天井から光の柱がゆっくりと降りてきた。
何だろうな、と考えていたら、俺は天に召された。
うん? 死んだのかって?
ちょっと違うな。
正確には、〈神界〉に召喚されたと言うべきか?
まあ、〈大神〉に喚び出されたんだ。強制的にな。
俺が周りを見渡すと、左右には人間が五人。そして、それぞれの正面に得体の知れない何かが居た。
後で教わったんだが、それが〈大神〉だった。
〈大神〉には第一位から第六位までの位階がある。その神位階って言うのは、戦闘力で決まるらしい。
で、〈大神〉の一柱が言ったんだ。
ここに喚んだ六人には才能がある。
私たち、六柱の〈大神〉がそれぞれ目の前にいる人間に〈恩寵〉と特別な〈技能〉をやろう。
それを使ってゲームをして貰う。
ルールは簡単。
最後まで生き残っていた一人が勝者。
六人の中で最も強いやつを神にしてやる。
何か質問はあるか?
ってな。
いや〈大神〉ってのは凄いな。
意味不明なその状況を、完璧に理解させられた。
は? とか思うこともできなかった。
これはサバイバル・ゲーム。
生き残ったやつが神になるゲーム。
そして自分たちは駒。
これは、〈大神〉たちが、自分の駒同士を戦わせて遊ぶっていう、神の遊戯。
逆らうことは不可能だ。
そんな状況下で質問を飛ばすやつがいた。
右端から二番目のやつだ。
何か報酬は無いのですか?
だってさ。
俺は思った。
神にしてやるって言ってたじゃん。ってな。
〈大神〉もそう返した。
だが、右端から二番目のやつは続けた。
それは優勝賞品ですよね? 僕は参加賞が欲しいのです。それも今すぐに。
〈大神〉は少しだけ悩む素振りを見せると、こう返した。
戦闘力が変化しない範囲でならどんな願いでも一つだけ叶えよう。何を望む?
巨万の富? 一国の支配? 不老長寿にすることもできる。さあ何を望む?
俺は必死に考えようとした。どうやったら永眠することなく、家でグータラと過ごせるかと。
それはもう必死に考え始めた。
で、考え始めたところで、もう一人が質問ではなく、苦情を飛ばした。
一つじゃたりん!
と。
俺はバカかと思ったな。
仮にも相手は〈大神〉。神だ。
まあ、神である証拠は無いが、少なくとも俺はそう理解させられた。だから神だと信じていた。まあ、今でも信じているが。
俺は思った。敬語も使えないほどバカなのかと。
そいつ――一番右端のやつは周りを気にせずそのまま続けた。
俺たちを勝手に呼びつけた対価も付けろ!
偉そうなやつだなぁ、と思った。
デカイ声で、威圧的に言うんだもん。
俺は怖くて震えたね。
ガクブルだった。絶対にあいつには関わりたくないね。
まあ、それは置いておいて。
寛大な〈大神〉は怒ることもなく、二つまで願い事を叶えてくれるって言うんだ。
いやぁ。太っ腹だね。
ついつい祈りを捧げちゃったよ。
確か、龍神教だっけ? どこで入信できる?
え? 神像の前で祈るだけ?
じゃあ今度立派な像を作ってみるか。
まあ、そんな感じで、生きるか死ぬかのサバイバル・ゲームが始まったわけだ。
右端のやつはその後もずっと質問攻めにしてたし、ときたま左右のやつらも質問してたけどな。
時間かかるなぁって思ってたら〈大神〉が、
この空間は時が流れないから、いつゲームの舞台に行っても良いし、いつまでも質問してて良い。
って言ったんだ。
それを聞いたら、右端のやつの質問する速度が緩やかになった。
けど、ずっと質問してた。
先に舞台に行っても意味ないし、俺はとりあえず横になって寝た。
だって眠かったんだもん。
仕方ないね。
召喚されたの深夜零時だもん。
高校生は寝る時間ですよ。
それでどうしたのって?
いや、ずっと寝てたけど?
ああ、起きた後?
ぐっすり寝て俺が起きたら、他の人間は誰も居なかったね。
で、俺もせっかくだから質問してみたんだ。
ゲームの舞台ってどんなところって。
そしたら、剣術と魔法が発達した魔物が蔓延る異世界だって言うじゃん?
その後に、他の五人はどうなったのかって聞いたら。
すでにその世界に転移済み。後はあなただけですよって言われた。
その後に〈大神〉は改めて問うた。
「どんな願いでも、戦闘力が変化しない範囲でなら二つ叶えます。さあ何を望みますか?
というかさっさと願い事を言って下さい!
いつになってもゲームが始まりません!!」
その時、俺はビビっちまって、すぐに思いついた願いを言ったんだよ。
「どんな願いでも二つか。
えっと……。じゃあ俺。
『とっても強い王様の子どもに生まれ変わって』『自宅警備に徹したい』です」
そして俺は六人の中で唯一、転生をしたんだ。
世界屈指の強さを誇る、地竜の王族。
星王竜の息子に。
まあ、卵から産まれる前に迷宮に召喚されたから、両親の顔なんて知らないけどな?
作者のモチベーションが上がるので、
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