第九十話 デヴォン家
シルルが能力を得る前の話です。
今回は挿絵があります。
Blenderという3Dモデリングソフトで「シルル・デヴォン」をモデリングしたので挿絵にしてみます。
始めての挿絵なので、とりあえずテストのような感じで簡単なポーズのシーンを選びました。
ここはディープレッドワールドにある人間が暮らす町である。
そこの町の宿屋に住むデヴォンという若夫婦の間に、シルルと言う娘が産まれた。
シルルには弥生によって光に変えられた記憶が残っていたのだが、数日も経たぬ内に薄れ、思い出せなくなってしまう。
それから十年の月日が流れる。
「暇ですね」
宿のカウンターの隅で接客をしている父、サンジョー・デヴォンを眺めながら呟く。
年の近い友人がいないシルルは暇を持て余していた。
思い出すことができないとは言え、縄文弥生として生きてきた経験は心の底で忘れることはなく、子供にしては妙に落ち着きがあり周りからは大人びて見えている。
シルルと同年代の子供は存在しているが、元気に騒ぐ子供たちと精神年齢の高いシルルとでは価値観が合わず、仲良くなることはこれまでなかった。
「サンジョーくんちょっと来て」
サンジョーの妻、詰まりシルルの母であるペルム・デヴォンが呼ぶ。
「ペルム! どうした?」
即座に妻の居るキッチンへ向かおうとしたが、接客中の若い男性客の困った顔が目に止まる。
「あ……ペルム! 悪いんだけどもうちょっと待っててくれ」
すぐには行けないことを大きな声で伝え、接客に戻る。
「失礼しました」
「ああいや……急ぎってほどでもないので奥さんを優先してください。私は少し待たせていただきますね」
サンジョーの失礼な発言に対して怒るどころか笑いながら自分を後回しにすることを提案する。
「ありがたいのですが……しかし……」
「お父さん。ここまで言ってくれたのに断るのも失礼かと思います」
どうしようか困っているサンジョーに、シルルが助言をする。
「あ、じゃあシルル! お前にならなんか任せられそうだしちょっと頼むよ! 今行くぞペルム!」
シルルは時折親であるサンジョーとペルムに対して助言をして助けることがある。
いつしか無条件な信頼を得、結果、僅か十歳にして仕事を任せられることも増えてきた。
「そう言う訳ですのでここからは娘の私、シルル・デヴォンが対応させていただきます」
仕方ないなと思いつつ、サンジョーの立っていた位置へ移動する。
「その年で接客ができるなんて凄いね」
「そんな、大したことではありませんよ」
「いいや、大したことだよ。キミと同じくらいの年の弟を連れてきているんだけど、比較すると雲泥の差だと思う」
「あ、はは……」
男性客がシルルを絶讃していると、背後から少年が近づいてくる。
「悪かったな! 大したことなくてよぉ」
不機嫌そうに男性客に話しかけたのはその弟である。
「弟、お前何処に行っていたんだ?」
「うるせぇ黙ってろカス!」
男性客は普通に常識的な口調で質問をしただけだが、十四歳の弟は反抗期であり、何を言っても怒ってしまう。
「あ、その。あまり喧嘩みたいになるのは困ってしまいます」
兄弟の喧嘩に口を挟むことに気が引け、遠慮気味に言う。
その瞬間、弟が固まった。
「お、おいどうしたんだ弟!」
心配になった男性客が弟の肩に触れる。
「うお! なんか高熱だぞ! 一体どうしたんだ」
明らかに平熱とは言い難い体温をしていた。
「大変! 検温しましょう」
そう言って、シルルは掌を弟の額へ充てる。
「あ、あひぃいいいいいい!」
どう言う訳か、弟は興奮して変な声を上げてしまう。
「お、おい弟ぉ! おかしいぞ! 一体どうしたんだ」
男性客は本気で心配をする。
「あっ! お前まさか!」
しかし直ぐに心配する必要がないことに気が付く。
「い、言うなよ!? こっ心の準備がまだ出来てねぇからな!」
シルルにバレないように男性客にそう言うが、焦り、逆にシルルを勘付かせてしまう。
「そうでした! 実は体温計を常備していたのです」
ニヤリとしながらシルルはカウンターまで戻ってしゃがみ込み、カウンターの下に引き出しがあるのだがそこから体温計を取り出し、弟の元まで移動する。
「脇を出してください!」
「ふぉふぁッ!?」
真面目な眼差しで言うが、弟は動揺しすぎて言葉が出なかった。
だがシルルは弟が合意していないのにも関わらず、弟の上着脱がしていく。
「わあぁーわわわわ」
見ていた男性はそれしか言えなかった。
「ひっひぃいいいい」
弟は動揺を通り越し、恐怖を覚えた。
身体が小刻みに震え、血の気が引き青ざめる。
「お、俺これからなにされちゃうんだぁああああ」
勿論体温を計られるだけだが、色々と男子中学生らしい妄想をしてしまう。
その妄想で興奮し、血色が良くなっていく。
プラスマイナスゼロである。
「むっ脱がしにくいので腕を上げてください! 万歳ですよ?」
頬を膨らませながら言う。
「あっ可愛い」
弟は思ったことを思わず口に出してしまった。
そして無意識に万歳をする。
「そんな素直に言えるなんて、中々できることじゃないですよ~。凄いですね、弟さん」
嬉しそうに微笑みながら弟の後ろへ周る。
「え? 何で後ろに?」
いきなり後ろに立たれ、慌てる。
「うっうわあああ! 何をするんだ!」
強引にシルルに服を脱がされてしまう。
「ちょっと失礼しますねぇ」
シルルはニヤリとしながら弟の右耳元で囁く。
「お、ぉおおおお! なんか鳥肌がッ!」
女性に耳元で囁かれた経験が無い弟は鳥肌を立ててしまう。
と言っても女性に囁かれた者は恐らく一握りしか存在しないに違いない。高音質なASMRを想像すると良いだろう。
「ひょわぁっ!」
囁き声に気を取られている内に左脇に冷たい感触が来た。
「ふ、うふ。そんなに驚きますかぁ? 体温計ですよ」
弟の反応が大げさで、ついクスリと笑ってしまう。
冷たかったのは体温計の銀色の部分である。
「はい、もう万歳やめていいですよ。腕を下ろしてください」
「うあっ! なんか疲れるなと思っていたら上げっぱなしだったのか!」
シルルに夢中になりすぎていた弟は両腕を万歳し続けていたことをすっかり忘れていたのだ。
「それでは十分間程私と密着していましょうね」
またもや耳元で囁く。
「えっえええ!? なんで! 嬉し……じゃなかった! 体温計なんて長くても一分くらいで『ピピピピ』って音鳴るでしょ!」
顔を真っ赤にしながら動揺し、動いてしまう。
「あっダメですっ! そんなに激しく動いたら……」
予想外の弟の反応にシルルは驚くも、動けば正しく計れない為注意をする。
が、しかし。
『ビー』
体温計がエラー音を発した。
「もぉおっ! 駄目じゃないですか! めっ! ですよ? 体温計は動いたらエラーになってしまうんですよ? 常識ですよ! やり直しです。この体温計は実測式ので時間が掛かるんです」
ぷんぷんと怒るシルルに対して弟はにやにやしている。
気になる女の子に怒られて興奮しているのだ。
「ちょっと私の方向いてくれますか?」
弟に対して言ったわけだが、そうすると至近距離で見つめ合うことになってしまう。
「わわわ分かった」
ドキドキしながらシルルの方に首を回転させる。
「絶対に放さないでくださいね?」
そういって右腕で弟の左腕を抑えた。
体温計を固定する為である。
余った左手で弟の頭を掴む。
「……」
同様しすぎた弟は声を出すことができない。
そのままシルルは弟に顔を近づけていく。
まさかキスされるのかと思った弟は目を思いっきり見開く。
しかしくっつけたのは唇同士ではなくお互いの額であった。
挿絵は如何でしたか?
今後どうするかは未定ですがシルルの挿絵は増えるかもしれません。
今のところ挿絵にシルルしかいません。縄文弥生もモデリングしたのですが失敗作、現在は明治大正をモデリング中ですが、公開は先になりそうな予感です。




