第八話 三百年間誰一人やりたがらなかった変態ゴブリン絶滅計画
第八話です。三百年放置されていたクエスト、変態ゴブリン絶滅計画。そんなふざけたクエストを弥生たちは受けるのであった。
良ければ評価など宜しくお願い致します。
「お姉様……怖かったですぅ!!」
シルルは涙目でそう言った。
変態に相当ハレンチなことをされたのだから当然だ。ついでに言うと、シルルの服は伸びきって乱れまくっており、胸部に至っては穴すら空いている。
そして、パンティーは変態に奪われてしまったのだが、弥生が変態ごとパンティーも消してしまったのでシルルは現在ノーパンなのだ。弥生の能力で何とか出来るのだがあえて言わない。弥生だって立派なロリコンさんなのだから。
「あ、そうだ! 解決策を思いつきました! 食べたらパンティーが創れるようになるパンを作って食べればいいんですっ!」
シルルの能力は「想像した料理を創造する」だ。いつでも食べたい料理を「無」から作り出すことが出来、その料理に好きな効果を付与することも可能なのだ。パンティーだろうがブラジャーだろうがいくらでも創造出来るようにすらなる。
しかし弥生は、シルルが能力で下着を創造出来ることに気付いてしまったことに対して残念そうにしている。
何故かと言うと、弥生はシルルのことを愛してる以前に立派なロリコンなのだから。
「ま、まあ気付いちゃったならしょうがないわね……パンティー! 履けばいいじゃない!」
「???」
弥生はヤケになっている。そんなにノーパン少女が良いか!
シルルの頭にはクエスチョンマークしかない。何故お姉様はちょっと怒った感じになっているんだろう? シルルは純粋すぎるのだ。弥生と出会わなければエロとは一生無縁の人生だったかもしれない程に……
「弥生さん! 残念でしたぁ。ぷぷぷ」
「なッ! なん、なんのことかな? ハハ!」
受付のお姉さんに笑われ、からかわれる中、弥生は下手な誤魔化しをする。
「お姉様! 早くクエスト受けましょう!」
自分で創造したパンティーを履いたシルルは焦ったような声で弥生を急かす。純粋でいい娘のシルルだが、弥生とお姉さんの会話を見て何か危機感を感じたようだ。何か、よく分からないけれど、危機感を感じたのだ。「お姉様とお姉さんをこれ以上一緒にしていてはいけない! 何か悪いことが起きそう!」そんな考えがシルルの脳内で暴れている。
「え? あ、そうね。何がいいかなぁ……シルルは初めてだから簡単なのから……」
「あ、私の能力もお姉様程ではありませんが十分チートなので難しいクエストでも問題ありません!」
弥生は思った。この世界では「めっちゃ」や「マジ」が通用しないくせに「チート」って概念はあるのかよ!!
受付のお姉さんの今の心は「弥生ちゃんに無視された」「弥生ちゃんに話逸らされた」「シルルちゃんに弥生ちゃん取られた!!」と言う感じで病んでいる。
ということで、どうやら受付のお姉さんも『弥生LOVE♡』のようだ!
「うーん、それじゃあこの『変態ゴブリン絶滅計画』で」
「そ、それは!! 誰もが嫌がって三百年以上放置されていたと言うクエスト!?」
「そ、そんな放置されてたクエストあったんですね……よくみるとクエスト用紙もボロボロ……紙って何年持つんでしょう? 流石に三百年間ずっと同じ紙で掲示板に貼りっぱなしだったなんてことはないでしょうけど……」
「ああそのクエスト用紙、本当に三百年間ずっと掲示板に貼りっぱなしだったらしいです。不潔ですよねえ〜私の弥生ちゃんが汚れちゃいます!」
「え? なに? 私の?」
弥生は気付いてしまった……そうか、こいつもか、こいつも、私にLOVEなんだ……つまりドM……
「じゃ、じゃあ行ってくるわね、ゴブリン退治、いや、ゴブリン狩りに!!」
「行ってきます!」
弥生とシルルは受付のお姉さんに挨拶をし、ゴブリン殺しに向かった。
「弥生ちゃぁーん! どうか犯されませんように!! 彼女の処女は私がもらうんですからね! ほほ、おほほほほほほおほ!!!」
受付のお姉さんの精神は崩壊しかけている。アヘ顔で高笑いする程に……
だが受付のお姉さんは知らない。弥生の処女は既に弥生が自分で創造した男によって奪われていることに、日本にいた頃、飛鳥とレズってたこと、シルルとも既にそう言う関係になってしまっていると言うことに……
〜ゴブリンの基地〜
「ここが、ゴブリンの本拠地……」
「ここを潰せば世界中から性犯罪が激減するのですねっ!」
弥生たちはゴブリンの基地の庭に到着したので感想などを言い合っていた。シルルはとんでないことを言っているが、純粋なシルルは自分がなにを言っているのかよく分かっていない様子。
ギュピッ! ギュピッ!
「ぐへへへ、可愛い幼女! 頂きまぁあす!!」
ガバッ!
「シルル! 危ない! 逃げて!」
気持ちの悪い足音とともに、一人のゴブリンがシルルを背後から襲おうとしてきた!
「やめて下さい! この変態!!」
バギャァッ!!
ヒュ〜〜ーーッ!
ドスン!
ズザザザザーッ!
弥生は信じられない光景を目の当たりにした。
いつの間に身体強化を施した料理を作って食べていたのか、シルルが目にも止まらぬ速さでゴブリンに裏拳をし、百メートル程吹っ飛ばし、更に三百メートル程ズリズリ地面を擦った。痛そうだ! だが弥生もシルルもやり過ぎたかな? だとかちょっと可哀想だとか絶対に同情などしない。
「す、凄いじゃないシルル!!」
「え、えへへ。私、戦いに能力を使ったの初めてなんです」
「ますます凄いじゃない!」
弥生はシルルをベタ褒めしまくる。それはもう変態なんじゃないかって思う程に……
「お姉様、ここがゴブリンの基地の庭だということを忘れてはなりません! きっとまだその辺にゴブリンが潜んでいるでしょうから」
「そうね! とりあえず能力でこの辺に潜んでるゴブリン全部雑草になれ!」
潜んでいるゴブリンをいちいち相手にするのが面倒に感じた弥生は、能力で潜んでいるゴブリンを全員雑草に変えてしまう。何故雑草なのか気になるだろうが、弥生が適当に雑草でいいやと思っただけに過ぎない。
「おお! 凄いですお姉様! ゴブリンの臭い臭いが一気に消えました! ……思ったのですが基地内のゴブリンも雑草にすれば良いのでは?」
「それは駄目よシルル! 流石に詰まらなくなっちゃうじゃない? その気になれば宇宙が滅んでも生き続けられる私にとって、暇と言うのは最大の敵! 今のうちに楽しめることは楽しんでおかなきゃね!」
弥生たちが基地の入り口に近づいている中、気付いたことがある。木など、ちょっとした物影が雑草で凄いことになっていたのだ。どう考えても自然に生えたとは到底思えない程に。弥生はさっき「この辺に潜んでいるゴブリンを雑草に変えた」詰まりこの不自然で異常な量の雑草は全て弥生が雑草に変えたゴブリンなのだ! そして、ゴブリン一体につき公園とかに生えている雑草一つ分、雑草の上に雑草は生えないので雑草に変わったゴブリンは全て地面に生えている。そしてその雑草は、一塊で直径五百メートルにも及ぶ。
隣の雑草の塊とくっついてしまい、一塊でどれ程のゴブリンがいたのか分からない。
そう! 気がおかしくなりそうな程ゴブリンは居たのだ。それに気が付いた弥生は心底ほっとしている。
「こいつら雑草にして良かったぁ!」
「?? (どうしたんだろうお姉様)」
そうこうしているうちに、基地の入口へ辿り着いた。
「来たか! 待っていたぞ? 縄文弥生!」
弥生たちが基地の入り口まで行くと、割と格好いい感じの他とは違うゴブリンが弥生の名を呼ぶ。
「あなた、誰?」
「私の名は逝祁麺 誤撫娌ん」
「そのまんまじゃないですか!!!」
バカみたいな名前にシルルは突っ込みを入れる。
「……そうか、その辺に潜んでいるゴブリンに貴方は含まれなかったのね。だから雑草になっていない!」
「やはり不細工部下共が雑草になったのは貴様の仕業だったか縄文弥生!」
「ええそうよ! 貴方にも消えてもらうけどねっ! 『雑草になれ』!!!」
シーン……
驚くことに、このゴブリンには弥生の能力が効かなかった。やはり特別なのだろうか? 弥生の能力に不可能はない! どんな願いだろうと叶えられる。その気になりさえすれば宇宙を終焉させたり膨張宇宙論を引き起こして宇宙を作り直したり出来る程なのだ! それなのに、このゴブリンに弥生の能力は効かなかったのだ。こいつは、全てを超越しているというのか? 宇宙よりもっと高次元の存在なのだろうか?
「なんで! 私の能力が効かないなんて……」
「私の能力は二つ、一つはあらゆる者の思考を読むこと、もう一つは、なにか、能力を一つだけ無効化する。だ」
「そうか! 分かりました! だからあなたはお姉様のことを知っていて、お姉様の願いを叶える能力を無効化した訳ですね?」
「その通りだシルル・デヴォンくん! 君たちに勝ち目はない! 大人しく私の性奴隷になれ! ぐふ! ぐわあああはははははくぁくぁくぁくぁwせdrftgyhyふじこlp;」
ゴブリンは今まで聞いた中で最高に気持ち悪い笑いをする。だがシルルはゴブリンのミスに気が付いた。
「残念ながらこの勝負、あなたの圧勝にはなりません! お互い苦戦するでしょう!! 創造! 『炎のクッキー』!!」
バリッ!
「はむはむ」
「???」
シルルは何かの効果を施したクッキーを創造し、それを食べた。ゴブリンはこいつ何戦場でおやつなんか……と思っている。
「……食べ終わりました」
「ああそうかい、美味しかったかい?」
「それが遺言ってことで良いんですね?」
「は?」
ボッ!!
シルルの掌から灼熱の炎が出る。
「喰らうがいい!! 『燃の光線』!!」
ドォオッ!!!
「なにぃいいい!!! 『水の壁』!!」
バァッ!! シュォオオオオオオ!!!
シルルが食べたクッキーには、炎を操る能力があった。炎を操る、火属性魔法とは違い、炎そのものを操るので魔力は関係ない。しかし炎を操るだけでは炎を出すことは出来ないので、魔法で掌に小さな炎を出し、それを操って大きくし、放ったのだ。詰まり微量ではあるものの、魔力は使うのだ。
ゴブリンはシルルのぶっ飛んだ威力の魔法に驚くものの、水魔法で水の壁を作り、シルルの攻撃を防いだ。炎と水なので、ぶつかった瞬間水が物凄い勢いで蒸発する。それと同時に炎も消えていく……
「な……お前もこれほどの実力だったとはな……そうか、お前の言った圧勝にはならないとはそういうことか、私は一つの能力しか無効化することが出来ない、お前の能力を無効化するには縄文弥生の願いを叶える能力を有効化しなければならない。そうすることにより、お前のその妙な力を無効化出来る。しかしそうすると能力が戻った縄文弥生に瞬殺されてしまうだろう……なんでもありの縄文弥生は世界で最も恐れるべき存在。能力の戻った縄文弥生を相手にするなど自殺行為に等しい……となると仕方なくお前と戦うしかないということか……」
「その通りです!でも次は外しません!!創造!『風の焼きそば』!!!」
「はぁ? 焼きそば? シルル! 焼きそばなんて食べてる場合じゃないでしょ!!」
弥生の言うことは最もだ。戦場で食事など馬鹿のすること、いや、馬鹿でもしない。しかしシルルはそれをしている。さっきのクッキーは一瞬で食べ終わるから一つのアイテムのような感覚だが、流石に焼きそばはないだろう。普通に昼食に食べるようなしっかりとした量の焼きそばなのだ。
「貴様!! 気でも狂ったか!! のんびり食事しやがって!! 殺してくれと言っているようなものだぞ? ああそうか! 私には敵わないと悟ったのでせめて死ぬ前に大好物の焼きそばを食べておきたかったのか!!」
「そんな! 諦めないでシルル!! さっきみたいに炎で!!!」
だがシルルは焼きそばを食べ続ける。ゴブリンはシルルに近づいてゆく。
「だが私はそんなお人よしではないんでね? 死んでもらおうシルル・デヴォン!!」
そして、ゴブリンは素手でシルルに殴りかかる!!
「やめて!!」
弥生が即座にシルルの前に立ち、庇おうとする。ゴブリンはそんなこと気にもせず、弥生ごとシルルを殴り殺そうとする。
今の能力を失った弥生は無力だ。死んで転生する前の、普通の女の子と同じだ。こんな魔物に勝てるハズがない。
「さあ死ねええええええ!!!!!」
――『燃壁』!!!
ボオオオッ!!!
弥生とゴブリンの間に炎の壁が現れる。
「な、ちょ! ぎぃんわああああああああああああああああああああ!!!!! あづいあづい!!! ぐううくぁああああくぁwせdrftgyふじこlp;」
勢いがつきすぎていたゴブリンの拳は止めることが出来ず、そのまま炎の壁の中へ突っ込んでしまった。大火傷だ。パニックになって水魔法で消火も出来なかった。
「シルル……あつっ!」
「お姉様、今の無力なお姉様がこんな無茶しちゃ……めっ! ですよ?」
「可愛い……ってそんなことより!」
「ご馳走様でした」
「お粗末様でした……ってそうじゃなくて!!」
シルルが可愛すぎたせいで弥生は思わずノリ突っ込みをしてしまう。
「お姉様。ちょっと待っていてください、すぐ片付けますから、ね?」
ドォウ!!!
「うわぁ!!」
瞬間的に突風が弥生を襲う。
「でも不思議、三百メートルくらい吹き飛ばされて木に激突したのに傷一つ付かないなんて……それどころか全く痛くない……」
シルルが創って食べた焼きそばには風を操る能力があった。戦えない弥生を突風で遠くへ避難させ、木にぶつかる瞬間すさましい追い風を発生させたので弥生は無傷で済んだのだ。
「さあ止めですよ。『竜巻刃』!!」
「ひ、ひぃいいいいいいい!!!!たしゅけ」
ブゴォオオオオオオオオオ!!!!!
シルルは風を操り竜巻を発生させ、更に斬れる様に風を加工、風一つ一つが刃物の様になり、それをシルルは剣の様に手に握る。因みに炎と違い、無風地帯でなければ風は何処にでも吹きうる。完全に魔力0でいくらでも風を操ることが出来る。
「はぁああああああああ!!!!!」
スゥパァアアアアアアアアン!!!!!
シルルがその竜巻刃を剣の様にゴブリンに向かって振り下ろすと、なんということでしょう……物凄いことに……物凄い……グロい……ゴブリンの頭から右半身と左半身に真っ二つに割れ、地面にはいつの間にか赤い水たまり、いや、池が……
「「ぐううわああああああああ!!!!」」
「まだ息があるんですか? ゴブリンの生命力は高くていいですね~」
真っ二つになったにもかかわらず、ゴブリンの意識は未だにある。
「もう黙って下さい。すぐに、楽になりますから♪」
そういってシルルは竜巻刃をゴブリンの頭部に突き刺す! 因みに右半身、左半身がが独立して叫んでいるので常にエコーが掛かったような声になる。なのでシルルは右半身と左半身両方の頭をぶった切ろうとしたのだ。
「やめろおお!!」
「このロリィイイイイイ!!」
遂に右半身と左半身が独立し、別々の言葉を発するようになった! 因みに「やめろおお!!」が右半身で「このロリィイイイイイ!!」が左半身だ。
――『漆黒之炎』!!
ズドォオオオオオオオオン!!!!!!
突如上空から文字通り、黒い炎がゴブリンを襲う!!
シルルはとっさに風を操って遠くへ避難、弥生は元々遠くに居たので無傷だが、弥生のところにまで衝撃と炎の熱は伝わった。ゴブリンと基地は跡形もなく消え去ってしまった……
「な、誰ですか!!」
「私? 私の名前はヱミリア・エクタシィ」
――魔王よ
to be continued...
最後まで読んで頂きありがとうございます!
良ければ第九話も宜しくお願い致します。