第八十六話 カリミアの痛々しい遺体
『明治……大化』
七次元と言った彼女を初めて見た戦国と令和はその神々しさに言葉が出ない。
次元はまだシルルや【伍堕忌禍津厄神】の上位メンバーの方が上であり遭遇した際に感じるのは絶望であったが、大化の場合は味方であると言う安心感があり、逆に言葉が出ないと言ったところだ。
「俺は戦国。こっちは妄想の令和だ。宜しく」
「宜しくね、大化さん」
言葉が出ないままでは失礼なので取り敢えず挨拶をする。
「妄想なんて斬新な紹介でございますね」
苦笑しながら大化が言う。
「大化さん、早速だけど私たちはどう行動するべきかな?」
飛鳥が問う。
高次元になればなるほど知能も上がっていくので、現状七次元の存在である大化の選択がもっとも安心できるのだ。
「主と飛鳥の記憶が私の中にあるので状況は理解しているつもりでございます」
主とは自分の妄想主である戦国のことである。
その妄想主の記憶は持っていた方が都合が良いと言う理由で戦国が設定したのだが、飛鳥の記憶と言うのは、飛鳥が創造した魔力を大量に取り込んでいるからである。
そして気がつくと周りの景色が変化していた。
『あれ?』
大化を除く全員がキョトンとする。
「簡単に言うと、瞬間移動でございます」
七次元ともなると三次元の人間が呼吸をするくらい簡単に理解不能なことができるのだ。
今のをもう少し正確に言うと、瞬間移動移動ではなく意識だけ過去へ飛ばして初めからこの場所に居たことしたのだが、しっかりと説明するには人間の言語での表現の限界を超えており、テレパシーで感覚的に伝えたとしても低次元の理解力では何も分からず無駄なのだ。
「あ、あれは!」
移動した先で人が倒れていることに気が付いた飛鳥が、倒れている人に駆け寄る。
「……カリミア?」
倒れている『それ』は、額から上が削りとられたかの様に無く、しかも焼け焦げたかの様な痕すらある。
服も焼けた跡があり、ボロボロだ。
ショックなことに、服がカリミアの着ていたものに酷似している。
体格もカリミアそっくり。
額から上が無いのはシルルにデコピンをされ、物凄い速度で飛ばされたからだろう。
あちこち焼けた痕があるのは飛ばされた際に生じた摩擦熱で燃えたのだと考えると辻褄が合う。
飛鳥は『これ』がカリミアの遺体であると理解した。
「カリミアさんでございますわね?」
悲しそうな声色で言いながら大化が近付いて来る。
飛鳥の記憶の影響で、今までずっと仲が良かった友人を失った様な感覚になる。
「カリミアさん……今、生き返らせるのでございます!」
「ございます」と言う大化の口癖のせいで緊張感が半減するが、彼女は当たり前の様に生き返らせると言って見せた。
因みに「ございます」と言う口癖は、複製した魔力で無理矢理、荒技で創られたことにより、言語能力にバグが生じてしまったからである。
「ございます」と語尾につけたくなるだけなのだが、もしつけなかった場合、極度の不安を感じたりイライラしたり、鳥肌が立ったりするなど地味に厄介なバグである。
「あ、カリミアさん魂ごと消滅しているでございます。これじゃあ生き返らせることが無理でございます」
「……え?……」
それを聞いた飛鳥は絶望する。
「何だと!」
「そんな!」
戦国と令和は「期待させておいてそれは無いだろう」と怒りを露わにする。
しかし大化は全く絶望している様子が無い。
まだやりようはいくらでもあると言った雰囲気だ。
「逆に言えば過去ならまだ消滅していないと言うことでございます。ちょっと失礼するのでございましょう!」
口調が意味不明すぎるのもあり、何を言っているのか皆良く分からなかったが、次に瞬きをした瞬間、大化の隣にカリミアが居た。
「え? あれ?……」
カリミアは何故自分がここに居るのか理解できなかった。
そして、カリミアの遺体はいつの間にか消えていた。
カリミアを退場させる案もあったけどやっぱりやめた。今じゃない。




