第八十五話 霊剣『令和剣』の創り方
どれ程経っただろうか。
令和には光と音を感じられないので時間感覚も正常ではなくなる。
「もう何時間も経っている様な気がする。頭がどうにかなりそう……」
思ったことをそのまま口に出す。
「あれっ! 自分の声が聞こえた! まさかっ!」
そして徐々に闇が薄くなっていく。
声が聞こえると言うことは飛鳥の『魔黒獄壁』の『音を消し去る力』が消えていることを意味する。
そして消し去られた光が徐々に差し込んでくる。
何故か光より音が先に戻ったが、
飛鳥が音を先に正常化しただけに過ぎない。
「キャアッ! 眩しい……私霊的存在だけどいきなり光差し込んで眩しいッ!」
令和の体感では何時間も真っ暗闇だったのだ。
そこに一気に光が差し込んだらどうなるか……あまり良い影響が無いのは確かだろう。
消し去る光の量を徐々に減らしていく。詰まり徐々に明るくしていくと言う飛鳥なりの気遣いであったのだ。
「完全に見える様になった。なんだか異様に風景が色鮮やかに見えるけど、真っ暗闇とのギャップのせいかな?」
まずは外に出られたことに感動する。
だが重要なことは直ぐに思い出した。
「一体どれ程の時間が経過して何があったのか。教えてくれる? 飛鳥」
「はぁ……はぁ……」
しかし飛鳥は物凄い疲れた顔で息を切らしている。
「大丈夫?」
ついさっきまで閉じ込められていて憎たらしいが、一応心配しておく。
「流石に疲れたわ。創造する能力で永遠に魔力は増やせるけど精神的に疲れる……」
「それで、何時間経ったの? 四時間くらい?」
少しキツめに問う令和。
結構怒っている様子。
「四時間? 三十分程度だったよ。時間感覚って不思議だねぇー」
何と、令和の体感時間はとんでもないことになっていた。恐ろしいレベルである。
だがたった三十分程度であったと言う事実以上に言い方に苛立ちを覚える。
「飛鳥……貴女は割と能天気な性格だから悪気は無いんでしょうけどッ!」
怒りが限界に達してしまい霊剣『令和剣』を一瞬で作り出し、飛鳥の眉間目掛けてぶん投げた。
令和の目は鬼の様につり上がっていた。
「ひっはぁっ! このままシにやがれぇえええ!」
もう令和の性格は完全に別人の様になってしまった。
もう可愛いくない。
ヒロイン失格である。
しかし……
「何で当たらないの!」
霊剣『令和剣』は飛鳥の眉間に今にもぶつかりそうなのだが、一向にぶつかることは無かった。
一体どう言うことなのか。空中で静止していると言う訳ではない。
加速はずっと続いている。
「創造する能力で、宙に距離という概念を創造してみた」
「意味がわからないんだけど?」
令和の頭では飛鳥の言っていることがまるっきり理解できなかった。
「まず、一見何もない様に見える空中には空気があるよね。そして原子レベルまで拡大して視て、すると酸素分子とか窒素分子とかがある訳だけど、さらに拡大すると、何にもない『無の空間』があるんだよね。もはや空気ですらないから空間という表現が正しいかはわからないけれど、いや、宇宙空間って言うし別に良いのかな? その無の空間に距離と言う概念を創造する。正し目に見えない概念だからその創造した距離に物体や霊体とかが入り込んだとしても周りから見るとその位置から動かない様に見えるって言うことだよ」
「意味わかんない」
令和は文字通り意味がわからなかった。
寧ろ概念を創造などと言われて理解できる方が異常と言える。
とは言え、次元が上がるにつれ、二次元は縦と横、三次元になると奥行きが加わると言った感じで移動できる軸が増える。三次元の人間なら、四次元。詰まり四つ目の軸は時間を移動できるものであると想像するだけならできる。
しかしその上の五次元、五つ目の軸は何なのか、ここまで来るともうよく分からない。
次元が上がるにつれ、次元が下の者からすると意味がわからなくなるとはこういう訳なのである。
「まあそういう訳で令和ちゃんに勝ち目はないし、これは返すね」
飛鳥がそう言ったと思ったら霊剣が令和方へと向きを変え、そのまま令和目掛けて飛んで行く。
「うっうわぁ『霊剣化解除』」
いきなりのことに驚くも、取り敢えず霊剣を自分の身体に取り込む。
そもそもこの剣は令和が変身し、戦国が使用するものだ。
令和が変身する武器を自分で使用すると言うことは自分の身体から霊剣を作り出すと言うことである。勿論全身の身体を使った訳ではなく、一部だけ使用した為、剣としての性能は劣る。
因みに身体の一部を使ったくせに見た目の変化はないのだが、妄想が具現化した霊的存在にとっては些細な問題で、他の部分、例えば右手を剣に変えたとしよう。すると右手は消える訳だが、左手を薄く切り取って右手に貼り付け、あとは剣に変身させた要領で右手に変身することによって右手は復活するのだ。
しかし全身を少しずつ薄くして剣を作った方が良いとも考えたが全身が弱ってしまう為駄目だ。分かりやすく手で例えたが実際は戦闘で一番無くても何とかなるかなという部分を犠牲にする。
何故具体的に何処を剣にしたのかをハッキリ言わないのか。それは令和が知られると恥ずかしいからである。
残念だが各々で想像、いや、妄想するしかない。
そして、話は戻るが霊剣はいつでも自分の身体に戻すことができる。
霊剣が自分に刺さる前に自分の身体に戻したのだ。
「はぁ……まあいいよ。どう転んでも私じゃ飛鳥には勝てないみたいだし。ちょっと頭に血が上り過ぎちゃって冷静じゃなかった」
ようやく令和は落ち着きを取り戻した。
「それで、結局どうなったの?」
「戦国くんは疲れて地面の上で眠ってるよ。痛いだろうから膝枕してあげると良いよ」
そう言いながら飛鳥が地面に大の字で寝転がっている戦国を指差す。
「あ、そんなところに」
少し離れたところに寝転がっているのを発見する。
霊剣で暴れたせいで少し砂が体に積もってしまっている。
令和にとって妄想主が絶対的で何よりも優先だ。
小走りで膝枕しに行った。
「よいしょっと」
「……れ、れい、な?」
膝枕をすると直ぐに戦国は目を覚ました。
「凄く疲れてそうだし、もっと寝てて良いんだよ?」
「駄目だ。それどころじゃないだろ?」
令和が心配そうにするが、戦国は直ぐに立ち上がる。
「古墳さん。俺、魂創って直ぐ倒れたからどうなったか分からないんだけど……」
実は戦国は魂を完成させて直ぐに意識を失ってしまい、今に至る。と言っても意識を失っていたのは十分程度なのだが、その間、代わりに飛鳥が仕上げをしくれた。
「私は特別なことはしてないよ。ただ、完成した魂に明治大正ちゃんの肉体と言う器に宿ってもらう様お願いしただけ」
謙遜しているが、完成した魂は自分よりも高次元。戦国が作成した為友好的なのは確実だが、圧倒的な力を持っているのだ。会話をするだけで身体が震える。
「よかった。今どこに?」
見渡す限り、大正ちゃんの身体は何処にも見当たらない。
「初めまして皆さま。七次元に相当する。【明治 大化】と申します。どうぞ、宜しくお願い致します」
気が付くと戦国の目の前に彼女、大化は居た。
高次元の理解不能な力の一端である……
これまで元号や地質年代の名前(シルルとかデヴォンとかカリミア(カリミアン)とかエディアカランとか)をキャラ名にしてきましたが、「大化」という元号の原点の名を持つ者が遂に登場しました。




