第八十四話 裏切りか!? 古墳飛鳥 ―価値観の溝―
「次元が一つ上の飛鳥にはどうやったって勝てやしない! チキショォオオオ!」
可愛くない方向にキャラ崩壊をする令和。
「とりあえず、ちょっと落ち着いてよ。誤解だから」
流石に焦り出す飛鳥。
別に裏切る訳なんて絶対に無いのに何で疑われているのだろうと令和の反応が理解出来なかった。
「でも操られてないって……」
「霊的な力の塊の令和ちゃんが魔力分けようとしたら一歩間違えれば死ぬからね!」
叱るように言う。
叱ると言うのは怒鳴るなどとは違う。
本当に相手を想っていなければ叱ることなどは無い。
令和も理解した。
飛鳥は本気で自分の為に止めてくれたのだと。
「だけど、私は元々お兄ちゃん君の一部。元に戻るだけ。在るべき場所に還るだけ!」
死ぬのではなくただの妄想の中の登場人物に戻るだけだと思っている。
元々自分を生物と思っていないのだ。
実際生物とは言い難い。妄想が具現化しただけなのだから。
「あんた何言ってんの!」
しかし周りがそんな自分を貶すような考えを肯定することはない。
そもそも異なる価値観で理解が出来ない。
人間と言うのは良く争う生き物だ。子供の喧嘩から国規模の戦争までスケールは違えど根本的な原因の殆どは分かり合えない分かろうとしない価値観の違いによるものだ。
詰まり、今の時点で令和か飛鳥のどちらかかが相手の考えを分かろうとしない限り、争いに発展する。
分かりきっていることではあるが、今回の場合飛鳥の方が圧倒的に強いのでこのまま行くと飛鳥が力ずくで自分の正しいと思う考えを突き通すことになる。
と言ってもそもそも令和は『魔法檻』に閉じ込められているので何もできやしない。
「貴女の言いたいこと、少しは分かってるつもり。でもこれは、この考えは変えられない! だって私は平成戦国の為だけに産まれて来た! 友達とかは二の次ッ! 彼の居ない世界に私が存在する理由は無い。皆無ッ!」
ただのヤンデレかメンヘラにしか見えないだろう。
しかしそうではない――
ヤンデレとかメンヘラなど人間の視点から見る感想でしか無い。
文字通り戦国が自分の為に創った妄想そのものである彼女にとって、形はどうであれ、戦国の役に立つことこそが生きる……いや、存在する意味。
人にもよるが、生きる意味を自由に変更可能な人間のような者たちとはある程度価値観の違いを理解してもらうことは可能だが真に分かり合うことは非常に困難。
「その平成戦国は貴女が消えたら悲しむよ!」
「五月蝿いッ! 生きる意味を簡単に変えられる五次元の神々には分からないでしょ! 私には妄想主である平成戦国が全てッ!」
「だからそんなことしても平成戦国は喜ばない! 寧ろ悲しむからね!」
遂に言い争いに発展してしまった。
どちらも引かない。
だからこそ争いの終わりが来ない。
その様は溝の様に醜く、しかし価値観の壁は非常に薄い。片方がただ受け入れるだけでその壁は消し去ることが出来る。
のにも関わらず、やはり一歩も引く気がない。
二人共馬鹿では無い。相手の言い分も分かっている。令和に至っては本当にただの自己満足であることを理解している。
あとは飛鳥の話にきちんと耳を傾けるだけで良い。
飛鳥は本当に自分が正しいと思っている。だが同時に令和にとってどれだけこの選択が困るのか理解しているつもりだ。
もう二人の間に壁など無いのかもしれない。
あるのは細く狭い溝。
二人揃ってその溝に嵌り、抜け出せない。
このままでは埒があかない。
そうしている内に戦国は一歩一歩死に向かっている。
「こんなことしてる内にお兄ちゃん君死んじゃうから!」
「そうだね」
そう言って『魔法檻』の檻の部分を真っ黒な壁に変える。
「え? 外の様子が全く分からない。何も見えないし聞こえない」
もはやこの魔法は『魔法檻』とは別物だ。
『魔黒獄壁』と呼ぶことにしよう。
この魔法はただ閉じ込めるだけでなく、外の光と音を百パーセント遮断することができる。
「――!」
今令和は「ちょっと何するの! 古墳飛鳥ァアアアア!」
と叫んだつもりなのだが何故か声が出ない。
「(どう言うこと……でも声帯は動いて感覚的に声は出ている……声を出した瞬間に消されてる? そう言えば自分の身体も見えない)」
令和は気付いた。
音や光を遮っているのではなく消し去っているのだと……
流石にそろそろ主人公である縄文弥生登場させないとな……
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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ところでもう三月? この前2022年になったばかりだと思うんだけど時間感覚バグってる。




