第八十話 良かった……変態様は性転換為されても変態のままなのですね
今回は少し文字数多めになりました。
「シルルちゃん……なのか……?」
一番最初に口を開いたのは大正ちゃんだった。
飛鳥とカリミアは、成長し今の姿になったシルルを見たことがなかった上、戦国と令和はシルルを神様だと認識している為咄嗟に声が出なかった。
「大正くん……いや大正ちゃん。随分とお可愛いくなりましたねぇうふふふ」
ニヤニヤとそう言いながらシルルちゃんは大正ちゃんに近付いて行く。
「……た、大正ちゃんは止めてくれよシルルちゃん……」
苦笑いしながら後退る。
「シルル様……もしかしてディアボリのことで何か……」
前にディアボリを倒した時はシルルも一緒だったのだからそのディアボリに関係することだろうと戦国は思った。
「あの様な性欲の塊みたいな下劣な者は私の伍堕忌禍津厄神に要らないのです」
――!
『え?』
この場に居るドナゴナ以外全員驚く。
『私の?』
思わず皆復唱してしまう。
そう、私の伍堕忌禍津厄神と彼女は言ったのだ。
言葉通りの意味ならシルルが伍堕忌禍津厄神のトップということになってしまう。
あの最低な邪神、ディアボリの上司の様なものだと言うことだ。それはショック過ぎる。
「皆さん改めて自己紹介しますね」
全員が戦慄した。
ここでシルルが改めて自己紹介すると言うことは詰まり伍堕忌禍津厄神のトップであることを正式に発表することと同義であるのではないかと思ったからだ。
大正はそうなんじゃないかと……シルルは伍堕忌禍津厄神のトップなんじゃ無いのかと思うと同時に頭の中で全力で否定する。弥生が居ないのでこの場にいる中で最もシルルと付き合いが長いのは大正だ。故に一番不安になった。
「私の名はシルル・デヴォン。伍堕忌禍津厄神の皆さんを支配する神様です」
言ってしまった。
これでもうシルルが敵だと言う現実から逃れることは出来ない。
「嘘だ! 嘘だと言ってくれシルルちゃん! 君があんのクソディアボリの親玉なんて絶対に信じないぞ!」
大正はディアボリに対して女体化させられた恨みもあってか、頑なにシルルの言葉を認めようとしない。
「シ、シルル様。ディアボリを倒すのに協力してくれましたよね? なのにディアボリ側だったなんて……」
戦国にとっては尊敬に値する存在。
しかし実は敵だったと知り声を震わせている。
「ふっざけんな! 俺たちを騙してたのかよ!」
徐々にショックよりも怒りが勝っていき、感情が爆発して叫んだ。
「私は確かにディアボリの上司の様な者ですが仲間などではありませんよ? 勝手な行動もするし手に負えないから処分したのです。詰まりなにが言いたいのかと言うと、私にとってディアボリと言う存在は……そうですねぇ。動く不燃ゴミとでも言いましょうか」
取り敢えずディアボリをゴミ扱いしていることについてはホッとした。
しかし今のシルルの発言で彼女が不気味に感じられてきた。
幾ら悪い奴とは言えゴミ扱いする様な子ではなかった筈だ、シルルは。
神護に消される前はもっと純粋だった。
多少エッチなところを除けば。
だから目の前のシルルと名乗る水色髪の女が本当に自分の知るシルル・デヴォンなのだろうかと大正ちゃんは疑い始めた。
「お前は本当にシルルちゃんなのか? 俺の知ってるキミはもっと純粋だった。幾らディアボリがどうしようも無い屑ゴミであっても本当にゴミなんて発言する様な子じゃなかった筈だ! 答えろ! 答えろ! お前はぁああ本当は誰なんだァアアアア!」
目を血走らせながら叫ぶ。
折角ディアボリが可愛いお顔にしてくれたのに台無しだ。
「五月蝿いですねぇ。でも、私の為にそんなに怒ってくれるのは嬉しいです」
ニヤニヤしながら斬り落とされた大正ちゃんの下半身まで歩いて行き、拾う。
「そ、それは俺の下半身! 何をするつもりだ」
大正ちゃんの質問に一切耳を傾けず、血塗れの大正ちゃんの下半身に対して【能力】を使う。
「上半身生えてきて下さいねぇ〜」
そう言うと同時にシルルの持っている大正ちゃんの下半身が真っ白い光に包まれる。
その光はあまりに美しく、神々しくて、この場に居る全員が見惚れてしまう。
どれ程光り続けていただろう……数分か、もしかしたら数秒程度だったかも知れない。
時間感覚が壊されていた。
例えるなら地震、実際はそれ程長時間揺れた訳では無いのにも関わらず、恐怖で体感時間が大分長く感じる場合がある。
恐怖とは違うが、これがより極端になった様な現象だと思ってもらえれば良い。
光が収まっていくと、シルルの隣に【明治大正】が居た。
女の子にされた大正とは別の、男の大正が居るのだ。
「お、俺?」
「め、明治が二人だと……」
「大正ちゃんと大正君が両方同時に存在してるよ!?」
「一体何をしたのです?」
「上半身を生やし、性別を戻した……と言うわけですのね」
誰も現状が理解出来なかった中、ドラゴナが解説してくれた。
「女の子の大正ちゃんは確かに可愛いですが私が愛しているのは男の大正さんです」
甘い声で言いながら男の大正の胸に顔を埋める。
「お、おい!」
男だった時の自分と同じ姿をした男に美少女が顔を埋めているのだ。
動揺するしかない。
「……」
男の大正はシルルが自分に顔を埋めているのに顔色ひとつ変えない。
生きてはいる。が、まるで人形の様だ。
「お、おい俺! シルルちゃんがお前の胸に顔埋めてんだぞ! デレろよ!」
「おい明治! 今はそんなこと言ってる場合じゃねえだろ!」
「良かった……変態様は性転換為されても変態のままなのですね」
カリミアはホッとする。
もしかすると女の子になってしまった大正ちゃんは変態ではなくなってしまったのではないかと、カリミアは少し心配していたのだ。
変態ではなくなる……それはとても健全で良いことの筈。
しかし実際大正が変態を卒業することを想像すると寂しく感じた。
「一体何故なのでしょう?」
カリミアには理解が出来なかった。
ただ、大正が変態でなくなってしまったのならもう【変態様】と呼ぶことが出来なくなってしまう。
今更大正のことを名前で呼ぶのも恥ずかしかった。
「まさかこの私が変態様如きに恋を? いいや、それはあり得ない。しかしもしも仮に私が変態様のことを好きになっていたのだとして、それは絶対に許されぬこと。ヱミリアお姉様も大事な妹である弥生も彼のことが好きなのだから。私は我慢しなければ……まぁ、私が変態様を好きだなんて私が生きている内にビッククランチ(簡単に言うと宇宙が終焉を迎えること)が起きるくらいあり得ないことですけれどね」
「折角男の大正さんを作ったけど意思がありませんね。私の能力で作っても良いのですがそれではどこまで行っても作り者。だから、女の子の大正ちゃんから魂を奪おうと思います♡」
満面の笑みでそう言う。
「冗談じゃねえ! 皆逃げるぞ! カリミアは弥生さんとヱミリアを召喚してくれ!」
「変態様如きに言われるまでもありません!」
危機を感じた大正は全員で逃げることを提案。
カリミアはこの場にいない弥生とヱミリアを召喚しようと目の前に魔法陣を展開する。
「出よ我が妹! 縄文弥生」
この場に居ると死ぬかも知れない。
そう思ったカリミアはいつも以上に真剣になり、魔法陣に手を翳しながら弥生を呼ぶ。
その直後魔法陣が水色の光を放つ。
誰もが弥生が現れるのだと思った。
シルル以外は……
『ヴァぁっ!』
カリミアは何が起こったのか理解出来なかった。
突如額が抉れ、抉れた額と口から血を吹き出しながら目に見えないところまで打っ飛んで逝った。
「あれあれー? お姉様を呼ぶんじゃなかったんですかぁー?」
そう言いながら水色の光から姿を現したのはカリミアの額があった位置でデコピンをした後の様なポーズをとったシルルだった。
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