第六十九話 霊剣・令和剣(ルウェーナブレード)
発光し出したルウェーナは、次第に光の粒子へと変化して行き、センゴクの右手の中へ向かい、徐々に光の粒子が剣の形へと変化していく。
「お、おいセンゴク! お主、いいい一体何をしたのじゃ!?」
驚き、少しの恐怖すら覚えながらディアボリが言う。
「顕現せよ! これが令和剣だ」
その台詞と共に、剣の形へと変化していたルウェーナの光が収まり、透き通る程の透明度のエメラルドグリーン色をした美しい剣が姿を見せる。
「そ、それがルウェーナなのか? おい! 説明を求むのじゃ!」
「うっせぇなあ。RPGやってる男なら大抵、一度くらいは美少女が剣になる妄想をしたりするだろ?」
キレ気味に言うが、そんなこと言っても魔王に伝わるだろうか?
「儂には理解出来んなぁ! 日本人と言うのは欲望の塊なのじゃ?」
案の定ディアボリに美少女が剣になると言うのは理解不能であった。
しかし日本人を馬鹿にしたことがセンゴクには許せなかった。
「てめえ。何も知らねえくせに何日本人馬鹿してんだぁああ!!」
そう叫びながら令和剣をディアボリに向かって振り下ろす。
「ふっ。無駄だと言っておろうに」
調子に乗ってガードなど一切せずダイレクトに令和剣を喰らう。
スゥーーッと静かに、しかし高速でディアボリの頭が右左綺麗にパカッと割れてしまう。
「え? なんじゃ?」
ディアボリ自身、自分に何が起こったのかが理解出来なかった。
視界が何やら可笑しい。ピントが合っていない。常にものが二重に見える。しかも結構離れて二重になっている。
「センゴクが、二人?」
勿論これは令和剣に頭を綺麗に斬られたことにより、頭がパカッと開き、左右の目に距離が出来てしまった為だ。
「う、うわっ! なんじゃ! 何故再生せぬのじゃ!」
カパッと割れてしまった頭は一向に回復する気配がなく、血も流れていない。
その代わり、斬り口から黒い煙の様なものが吹き出て来ており、徐々にその煙は先に出て来たのから順に消えていった。
「俺も詳しくは分からんが、そのドス黒い煙みてえなのはお前の魂なんじゃないのか? 多分だが、俺のルウェーナには女神デーアガールの加護が掛かっている。高次元の存在である女神の加護を持っていればお前を斬っても再生されず、普通に攻撃として通ると言うわけだな。しかしそれだと、最初ルウェーナの攻撃がお前に効かなかったのは何故だ? 剣となったことにより加護を最大限に発揮できたと言うことかな?」
そう言っているうちに、ディアボリの斬り口が広がって来ていた。
「ぐぉおおおお! わ、儂の、顔が……顔が欠けて、力が出ない……あ、新しい顔を……元気百倍にしておくれぇええ!」
斬り口を中心に、ディアボリの細胞が煙化してゆき、遂には両目も煙化し、何も見えなくなってしまう。
「うううぉおおおおおのれえええええええ!!」
なす術がなくなり只管醜く叫ぶ。
「魔王ディアボリ! 今の内に貴様を打つ! うおおおおおおお!!」
詳しいことは分からないが、ディアボリが煙化し出した今がチャンスと考え、ディアボリの脚を目掛けて令和剣を薙ぎ払う。
「食らえええ!」
またしてもスゥーーッと静かで綺麗に脚が斬れ落ちる。
「グウウウアアアアアアアア!!!! 儂の脚いいいいい!!」
目はもう無いが、感覚で脚を失ったことはわかった。
脚を斬ったのは逃げられなくする為だ。そんなことしても、本来なら空を飛んだり瞬間移動するなりして逃げることは出来るが、今のディアボリは魂が煙化している為上手く魔術が使えない。
「や、やめておくれセンゴクゥウウ!! 何でもしてやるから命だけはああああ」
「フォオラアアアアアアア!!!!」
ディアボリが愚かに命乞いをするが、センゴクは無視し、ディアボリの身体全体を切り刻んだ。
「アアアアアアアアア!!」
斬られている間、ずっと叫んでいたが、声帯すら煙化してきたので段々と叫ぶことすらできなくなって来た。
「……」
魔術も使えない為、この間の様に魔術で声を創ることすら叶わない……
そして――ディアボリの、いや、ディアボリだったドス黒い煙だけがこの食堂に残るのであった。
三十秒後、ドス黒い煙は完全に消え去った。
「……終わった。結構キツかったぁ。死ぬかと思った。いや、一度死んだ様なもんか……」
そう言いながら令和剣を抱く。
「ありがとう。ルウェーナ……」
『ううん。当然のことをしたまでだよ?』
令和剣からエコーの掛かった美少女らしき声が聞こえて来る。
「ルウェーナ?」
令和剣に名を呼んでみる。
すると令和剣は発光し、人の形へと変化してゆく。
「ま、まさか戻れるのか?」
そしてその光が収まり、ルウェーナの姿が見えて来て、笑顔で「ただいま」と言う。
「ああ。良かった。剣から戻れる様に設定(妄想)したけどちゃんと戻ってくれるか心配だったんだよな……」
「私は、何度でも貴方のところに戻って来るよ? だって私は貴方の妄想なんだから!」
そして二人は辺りを見渡す。
「どうしよっか……」
「日本に帰りたいんだが……」
などと文句を言っていると、背後に膨大な魔力を感知した。
――な!!
「お兄ちゃんくん伏せてッ!」
膨大な魔力の圧に、思わずセンゴクは固まってしまう。
辛うじて動くことの出来たルウェーナが何かが飛んでくるのを予知し、伏せる様に言うが……
『ズヴァッ!』
気付いた時には二人共、黒い何かで首を両断されていた……
そして、膨大な魔力は徐々に人の形を成していく。
その人の形をした何かはこう言い放った。
――再ログイン。完了……
と……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここは高次元の世界。
周りは真っ白で文字通り何も無い。
そんな場所から戦国をモニタリングしている二柱の神が居た。
「あわわわわ。どうしよう幻想紅蓮! ディアボリが予想以上に手強いよおお!」
センゴクを自分の世界に送り込んだ張本人。いや、張本神とでも言えば良いであろうか。
その女神デーアガールが焦った様子で紅雨神の肩を揺さぶりながら言う。
デーア自身、ディアボリがこれ程まで強いとは予想外だったのだ。
「落ち着け。高次元の者が低次元の者と物理的に接触するのにアバターを作成するのは当然だろ?」
紅雨神がデーアの腕を掴んで言う。
「でも、ディアボリは自分の霊体ごと次元降下したからディアボリだけでアバターを複製するのは……」
「ディアボリに協力者が居るのだろう。奴や延展神護が関係している可能性もあるな……我の方で調べておくとするか」
そう言って、紅雨神は歩いてデーアの元を後にする。
「あ、待って! 戦国君やられちゃったのにどうしろって言うのよ」
デーアが走って紅雨神を追いかける。
「ああ。それを言っていなかったか。大丈夫だ。取り敢えず今居るディアボリのアバターは無限神に片付けてもらう」
「無限神?」
――無限神シルル・デヴォン。お前は知らなかったか?
次回、久し振りシルルが登場。




