第六話 シルルの過去と能力
第六話です。ロリっ子の父親は屑でした。
良ければ評価など宜しくお願い致します。
〜三年前〜
「一つ訪ねたいのだが、街人よ」
「あ、旅の方ですね……って!!! 紅雨神さま!?」
この世界を創造した神、紅雨神はこのように時々地上に姿を現わす。この世界の住人の殆どは紅雨神を信仰、または信仰とまではいかなくとも尊敬はしている。なので紅雨神が街へ来ると必ずと言って良い程物凄い歓迎されるのだ。
「紅雨神さまだ!」
「紅雨神さまが来て下さったぞ!!」
「皆! 道を開けぇえ! 紅雨神さまがお通りになられる!!」
「平伏せええ!!!」
人間たちの紅雨神に対する信仰はご覧の通り凄まじいのだ。
「……人族らよ、頭を上げよ。我はただ質問をしに来ただけだ」
紅雨神が頭を上げるよう命令すると、街人たちは即座に従い頭をあげた。しかし憧れの神様からの直接の命令だ、皆内心は大興奮、紅雨神に失礼のない様頑張って表情を維持しているが、中には興奮して鼻血を出してしまう者も多々。
「あ、ええとですね。なにをご希望でしょうか」
最初に話しかけた街人が冷静に対応する。が、こいつも当然緊張のあまり顔がめっちゃ硬くなっている。
「……ふむ、そうだな、一先ずこの街のことを見て回りたいのでな、先ずこの街に来たら必ず泊まるであろう宿屋を紹介してもらえぬか?」
「わ、分かりました! 私、全身全霊をかけ! 紅雨神さまに宿屋を紹介させて頂きます!!」
「ふむ、期待しているぞ」
「(ふぉおおおお!!! あの憧れたった紅雨神様がこんな近くに! しかも期待され……これは失敗出来ひんぞ!!)」
信仰熱心なのは良いことだ、紅雨神は良い神様なので彼らが破滅へ向かうことは先ずないだろう。
そして、こうして向かった宿が「宿・ラヴホ」なのであった。
〜宿・ラヴホ〜
「ここがこの街一番の宿・ラヴホか……」
「はい! ここの看板娘が可愛いと大変評判なのです! 冒険者たちは必ずここで泊まります!」
「ほう。つまり冒険者たちは欲望の塊と……」
「ま、まあ確かに……その通りといえばその通りかもしれませぬ……」
「こんにちは! 私は看板娘のシルル・デヴォンです。よろしくお願いします」
シルルは昔から受付を担当していた様だ。
「そうだな、汝、一先ず一泊で頼めるだろうか?」
「(うわぁ、やっぱりカッコいい喋り方だよなあ)」
紅雨神を案内している街人は、紅雨神の喋り方に心を奪われる。
「わかりましたぁ。それにしてもお兄さん、変わった喋り方ですね! 何処から来たんですか?」
まだ幼いシルルは紅雨神のことを知らない。なので目の前にいる本物の神様のことをただの旅人と勘違いし、少々無礼な言動になってしまう。
「な、シルルちゃん! シルルちゃん! このお方は神様であられるぞ! お前はまだ幼いが出来る限り無礼な態度は取らん様にな! 頼んだぞ?」
「はぁーい! カミサマってなんですか?」
「ちょ! シルルちゃん!」
シルルは昔からだ、昔から純粋すぎたのだ。故に敬語は使えるけど無礼な態度になってしまうことが多くあり、その都度色んな人から注意を受けている。身内や常連客、紅雨神をここまで案内した街人もその一人だ。
「まあ良い、汝、シルル・デヴォンと言ったな?」
「はい! そうです!」
「(いいなあ紅雨神さまに名前呼んでもらえて〜)」
「な! 何者だあ貴様ァ! 我が娘に変な喋り方で話おってぇ!」
紅雨神に話しかけたのはシルルの実の父親だ。彼もまた紅雨神のことを知らない。それ以前に神を信じない愚か者なのだ。目の前にこの世界を創造した神がいるというのに……
「あ、お父さん、この人カミサマって言うんだってー」
「なに!! 神だと!? 貴様あ! 新手の宗教かなんかだな! 今ここで成敗してくれる!」
「なあ! 貴様紅雨神さまになんというご無礼を! 許さん! 許さんぞ貴様! 私がお前を倒す! 紅雨神さま、手出しは御無用です」
「ほほう? 強さに自信があるのか? 期待してやろう」
バッ!
シルルの父は紅雨神の信者に手をかざし、魔方陣を展開させるとそこから高圧のレーザーを放つ。
「死ねえ!!! 『超高圧極太光線』!!!」
ドゥギュウオオオオオオン!!!!
……即死だった、紅雨神の信者は跡形も無く消え去り、消滅してしまった。
「!! お父さん! なんで!」
まだ幼いシルルにとって、目の前で人が消滅するというのはあまりにも刺激的すぎる。そして残酷だ。シルルは青ざめた顔で父に問うのだった。
「我が愛娘シルル! 俺が正しいのだ! 黙って見ていろ!!!」
「違う! お父さんは絶対間違ってる!」
「お前は黙って俺に従っていれば良いのだ!!!」
シルルの父は昔から自分の考えが全てだと教えられてきた。シルルはそれに騙されず、父の間違った思考を正そうとする。
「今から、汝を殺めるが、宜しいか? サンジョー・デヴォンよ」
紅雨神は自分の神の力を使い、名乗ってもいないシルルの父の名を知った。だが頭の可笑しいシルルの父、サンジョー・デヴォンは何故自分の名を知っているのか疑問に思わなかった。
「殺ってみろおおお!!!」
サンジョーが紅雨神に殴りかかるが、サンジョーは紅雨神に触れることが出来なかった。霊体のように、手で触っても手が擦り行けてしまうのだ。
「な、何故だ! 何故触れんのだ!」
「なに、簡単なことだ。今いる我は紅雨神の魔法で作られた霊体だ。触れなくて当然だろう?」
「なんだと! で、では本物は一体何処にいる!?」
「もっと高次元に居る。汝らには到底理解出来ぬような次元だ」
そう言って紅雨神は右手をサンジョーにかざす。
「戻りたまえ、我が魔力へと!!」
スゥーーッ
『やめて!!』
「きぃゃあああああああ!!!! から、だが!」
紅雨神はサンジョーを消滅させようとしたのだが、サンジョーの嫁が何処からともなく現れ、庇ってしまったので予定が狂った。
「お、お母さん!」
「チッ邪魔が入った……だが続けるぞ『戻りたまえ! 我が魔力へと!!』」
紅雨神はもう一度サンジョーに手をかざす。
スゥーーッ
「ぐぅわあああああああ! から、だが! ぐおおおおおお」
サンジョーの身体は、徐々に脚から頭にかけて光の粒へと変化してゆき、最終的に紅雨神に取り込まれていった。
「この世界は我が創造したのだ。故にお前たち生物は我にとって人形のようなものだ。お前たちは子供のころお気に入りのおもちゃを大事にしていただろう? それと同じだ。我は基本お前たちを大切に思っている。だが可愛くないおもちゃは要らないだろう、だから我はサンジョー・デヴォンを魔力に戻したのだ。この世界の生き物、いやこの世界そのものは我が魔力で出来ている、故に魔力に戻すことも自由自在。生き返らせることだってな! ちょっとこいつを生き返らせるか、こいつは相当我に忠実だったからな」
紅雨神はサンジョーから吸収した光の粒を消滅した街人の形にしていった。
「わ、私は……死んだ筈……」
「街人よ。サンジョーは我が殺した。安心したまえ」
憧れの神様に助けられたことを知った街人は、暫くの間思考が停止した。
「わ、私はあああ紅雨神さまの手で直接生き返らせてもら……」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「紅雨神さま……」
「シルル・デヴォン……お前には申し訳なく思っている。我の都合で両親を殺してしまったのだからな」
「別に、いいですよ、お父さんとお母さん親馬鹿だったから寧ろスカッとしましたありがとうございます!」
「!! フッ面白い。一つ望みを叶えてやる! お前の母は父とは異なり善人だ。生き返らせることが出来る、母を生き返らせるか望んだ能力を一つ手にするか。選べ」
「勿論、能力でお願いします!」
母も親馬鹿でうざいとシルルは思っていたので「能力」というには即答だった。
「そうか、ではどんな能力だ?」
「う〜ん、うちは宿屋だしお料理も作るから……『想像した料理を創造する能力』でお願いします!」
「ほー面白い! 良かろう!」
こうして、シルルはあらゆる料理が作れるようになったのだ。
弥生の料理が数分で完成したのや、厨房に調理器具が一切存在しなかったのはこういうことだったのだ。調理器具はないんじゃあなくて、必要なかったのだ。
to be continued...
最後まで読んで頂きありがとうございます!
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