第五十三話 殺される為に創られた身代わり
第五十三話目です。
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「ど、どういうこと?」
不安気にヱミリアが問う。
「……そのままの意味よ……肉体に戻す魂が無ければ、蘇生なんて、出来る筈ない……」
説明不足だったが故に間接的に自分が死なせてしまったことへの責任、後悔、そして、単純な悲しみ。
色々な感情が頭の中で暴れまわる。
既に弥生は涙目になってしまっていた。
今すぐに泣いてしまいそうなくらいに……
「だ、大丈夫だよね? 大正くん生き返るよね? だって弥生はチートだもんね! ねえ!」
ガタガタと震え、涙までも流ながら飛鳥が問う。
しかしこれではますます弥生が責任を感じてしまうだけだ。
「……く、わ、私も正直なところ、悲しいですね。あんな変態野郎でも、いざ死んだと言われますと、中々くるものがありますね。ん? 何でしょう? 目から塩分を豊富に含んだ液体が……」
カリミアは弥生たちに聞こえない様、小声でそう言った。
しかしいつもクールなカリミアであるが、内心は相当悲しんでいた。
「……う、うう、ぐす……たいしょうくん……」
悲しみの限界に達した弥生は遂にその場で泣き崩れた。
「勝手に、勝手に居なくなるなんて許さないんだからぁ! 戻ってきてよ、ばかぁ……」
全てを感情に任せ、「ばかぁ」などと暴言すら吐いてしまったその瞬間。
「全く、誰が馬鹿だ!」
聞き覚えのある男の声が階段の上の方から聞こえてきた。
しかし弥生たちの居る地点からは丁度死角になっていて見えない。
「好き勝手言いやがって!」
そう言いながら男は少しずつ階段から降りてくる。
「人のこと勝手に殺すなよな?」
徐々に男の素顔が見えてくる。
「「「――!!」」」
弥生たち三人は驚いた。それはもう面白いくらい同じタイミングでシンクロした。
「でもまあ、俺もお前らのこと言えねえよな? 現にさっき弥生さんのこと死んだと思ってた訳だし? まあお互い様ってとこだな」
弥生、飛鳥、ヱミリアは放心状態となり、何も言えない様だったのでカリミアが単刀直入に聞いた。
「貴方は死んだ筈です。ここに死体もありますし、どういうことか、説明して貰いますね! 変態様!」
変態様、そう、カリミアがいつも変態様と言う相手は一人しか居ない。
「弥生さんたちがあんな状態なのに変態様なんて、せめてこういう時くらい名前で読んで欲しいもんだ。お前って結構冷酷だよな? カリミアさんよぉ」
「そう、ですね。私の美しき声帯で貴方如きの名を発するのは少々皮肉ですが仕方ないですね。明治大正!」
現れたのは、死んで魂すら消滅してしまった筈の明治大正であった。
「言われずとも分かるぞ。説明して欲しいのだろ?」
「分かっているのでしたらさっさと説明して下さい! いや、さっさとしろ!」
なんとなく大正の言い方にイラっと来たカリミアは珍しく最後だけ敬語ではなく荒々しい口調で言った。
しかもわざわざ言い直してまで。
「(な――こ、怖ッ! こ、これはまずいマズい不味イマズイ!)ひえええ!」
「ええと、俺も弥生さんと同じ様なことしてたんだ」
「何言ってんのか分かり兼ねます」
大正はとりあえず説明することにした。
だがカリミアは理解しようとすらせず大正を罵倒した。
「お、おい! せめて話だけでも聞け!」
「……仕方ないですね。ヱミリア様たちの為にもあなたが何故生きているのか説明して頂かなければなりませんし、仕方なくですよ? 仕方なく聞いて差し上げるのですからね?」
ようやくカリミアが聞く耳を持った。しかしオタクなどがこのやり取りを見ていたらツンデレと勘違いしそうだ。
「まず、俺の能力は『何でも斬る』と言うものであると言うのは知っているだろう?」
「そりゃ当然知っていますよ」
「まあ聞いてくれよ、お前に見せたことあったか忘れたけど、何でも斬れると言うことは詰まり、炎や水の様な形ないものでさえ斬れてしまうのだ。それで過去に弥生さんの能力を斬ったりしてたんだ」
「ほへぇ~」
カリミアはウザい合槌を打ちながら話を聞いている。
当然大正はウザいと思いながらも我慢して話を進める。
「――で、だ。紅雨神から授かったものも普通の魔術も同様。特殊な能力ってのは魂に直接宿っている。というか埋め込まれていると言えば良いかな? まあいい。俺は魂すら斬ることが出来る。魂を斬ったら死ぬんじゃね? と思うかもしれんが、それだけで死ぬなら俺だって弥生さんと並ぶ程の最強能力者だ。魂を両断すると、なんと魂は二つに分離してしまうのだ! もう察しただろうか? 後は身体を用意してそこに俺の半分を宿らせただけ! 因みに身体は土魔法で頑張って創った! あれ実は土なんだぜ? 信じられるか? オマケとして水魔法で身体の中に水分を、火魔法で体温を上げ、人間の肉体を最大限再現したんだ」
「ヱミリア様聞きました? あなた方が抱き着いているソレ、土だそうですプププ」
ニヤニヤしながらカリミアは土で出来た大正の死体に泣きながら抱き着いていたヱミリアたちを笑った。
確かに本物の大正の死体だと思って号泣し、抱き着いていたものの正体がただの土の塊だったと思うと……笑え――ては来ないか。笑うのはサイコパスくらいなものだろう。
兎に角、カリミアは何やら最近調子に乗っている気がする。
従姉妹とは言え、従者が号泣している主人に対して「プププ」なんてありえねえだろ!
「大正くん。良かった。でも、ごめんね?」
実は泣きながら大正の説明を聞いていた弥生が大正に謝罪する。
「なんで、謝んだ?」
別にお前に謝られる様なことをされた覚えはないと思った大正はそのまま質問した。
「だって、その、私の作戦をちゃんと大正くんに伝えられなかったから……そのせいで大正くんの身代わりが……」
弥生は不安そうにしながら上目遣いでそう言ってきた。
とても可愛い!
「ああ、そのことか。別に気にしなくて良いんだけど、まあお互い様だな。俺だって敵が居ることに気付いて身代わり創ってた訳だし。それに、俺の身代わりは殺される為に創られたんだから」
「……うん、そうね! 身代わりだものね」
大正の言葉で弥生はいつもの調子に戻ることが出来た。
「いや〜、それにしても大正くんが死んだんじゃなくて良かったよ」
「……もう、今回みたいに何か作戦でもあったなら事前に報告してよね!」
飛鳥とヱミリアも大正が生きていることを知り、心底ホッとしていた。
――ンンッ!
皆がホッとしている中、突然カリミアがわざとらしく咳払いをした。
「ああ、カリミア。そんなわざとらしく咳払いしなくても気付いてるから」
「それはそれは。ヱミリア様たち美少女に囲まれてニヤニヤとしていましたのでてっきりこんな超分かりやすい敵達にすら気付いていないのかと」
口に手を当てながら大正を馬鹿にする。
「マジで? 俺そんなニヤニヤしてた?」
「ええ、していましたよ。それはそれは引く程に」
「二人共! 下らないこと言ってる場合じゃないわよ!」
大正とカリミアが色々言い合っていたが、ヱミリアが止めてくれた。
「囲まれたね、いつの間に……」
飛鳥も真面目な表情になる。
――初めから、このホテル全体が敵だったのよ……
to be continued...
最後まで読んでくださりありがとうございます!
良ければ次回も宜しくお願い致します!
中々仲間が死んだりしませんが、今後死ぬ予定はあるので「どうせ実は生きてんだろww」などと思わず読んで頂けると幸いです。




