第五十一話 弥生、高級ホテルの食堂で怪しい男に刺される
第五十一話目です。
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「おお、目障りな程人で溢れかえっていやがる……」
食堂に出ての大正の第一声がそれだ。
普通に他の人たちに聞こえているのだから失礼極まりない。
「う……人間が多すぎるわ……」
「ヱミリア様、先に席に行って休んだらどうでしょう?」
「そうするわ。弥生! 私とカリミアは先に行ってるわね」
「分かった」
魔族であるヱミリアはこんな人間で溢れかえっているところは居心地が悪い。
精神的に辛くなってしまい、カリミアと共に五人用のテーブルへ先に向かっていった。
実を言うと、カリミアも半分は魔族、更に殆ど魔界で生きてきた故流石に人間が多すぎるところは辛いので、顔には出さないが実はヱミリアを連れてテーブルへ避難出来て内心ホッとしている。
「……ねえ弥生、私、人間やってた頃高級ホテルなんて来たことなかったから良く分からないけれど、高級ホテルの食堂ってこうも人で溢れかえっているものなのかな? ぱっと見祭りみたいに混雑してるよ?」
「確かにそうね。所詮イメージでしかないけど高級ホテルってもっと上品な感じがするし……もしかしたら既に何かしらの敵が動き出しているのかも……」
弥生と飛鳥は既に敵が自分たちを狙っていると仮説を立てた。
そしてその仮説は直ぐに現実化してしまうのであった……
「俺ラーメン買ってくる!」
大正はそう叫びながら走っていった。
「「子供か!?」」
まるで周りを全く見ない子供の様で、弥生と飛鳥は思わず揃って突っ込みを入れてしまう。
どうでも良いが、その突っ込みはハモるのであった。
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「え? 嘘……」
「どうなってるんだ……」
「訳が分からない……よ……」
「意味が分からないわ……」
「ちょっと理解しかねますね」
弥生はカレー、大正はラーメン、飛鳥は焼きそば、ヱミリアは蕎麦、カリミアはパフェを食べていたのだが。
「「「「「なんで! これ、シルルの味じゃん!!」」」」」
今まで皆、あらゆる料理をシルルに創造してもらい、食してきた。
そう、良く味わってみると、シルルの料理は食べると心地が良い。何も効果を設定せずとも食べるだけで若干心地良い感覚を感じることができるのだが、どういう訳かこのホテルの料理はその嘗て食べたシルルの料理と同様、食べただけで心地良さを感じ取ることが出来たのだ。
しかも以前食べたシルルの料理よりも数倍心地良かった。
「普通、この料理を人間が再現出来ると思うか?」
「思わないわね……」
「で、でもそれならどうして……この味が……」
「私たちが日本に来た目的をお忘れですか?」
「そう、単純にこれを創ったシルルが厨房に居るってことよ!」
カリミアとヱミリアは厨房にシルルが居ると自信を持って言ったが、何も根拠がない。
もしかしたらシルルの料理を再現出来る何者かが居るのかもしれない。
「……本当にこの料理を作ったのがシルルだと確信を持てるまでこの料理そのものに対しても警戒しておいた方が良いわね」
弥生がそう皆に告げていると、一人の男が話しかけてきた。
『お前、が……縄、文……弥生……か?』
ボソボソと弱った様な声で男が弥生に問う。
「……そう、だけど? あなたは?」
明らかに怪しい。しかし弥生は言われるがまま質問に答えてしまう。
『ジャアシネ!!』
男のついさっきまで普通に茶色だった瞳が紅く光り、それと同時にこのホテル全体を包み込む程強力で異常な殺気を放った。
――え?
気が付くと男の腕が目の前にあった。
だが可笑しい。男の腕は短く見え、しかも肘から先が見えなかった。
――人間の腕はこんなに短くないし、肘から先は一体何処に……
「「「――!! や、弥生!!」」」
「って! てめぇ! 弥生さんに何の恨みがッ!」
皆弥生の名を呼んでいる。凄く心配そうだ。
大正に至っては何故か物凄い怒っている。
――何故? 私がどうかしたの?
弥生は恐る恐る自分の胸元に視線を落とす。
「あ……」
何度も警戒警戒と言っておきながら自分が真っ先にやられてしまうとは思わぬ失態であった。
「……こりゃ心配して当然よね」
そう、弥生は胸元を男の拳で貫かれていたのだ……
「……く! おいお前! 絶対その腕弥生さんから抜くなよ? 多分ナイフで刺された場合と同じで貫通した拳を引き抜いた際に大量出血するだろうからな!!」
『ジャアヌク♪』
大正が必死に弥生を死なせない様男に命令するが、男は寧ろ面白がって不敵な笑みを浮かべながら弥生から拳を引き抜いた。
「ぐふぁっ……」
そのまま弥生は仰向けに倒れてしまう。
「「「弥生ッ!」」」
大正以外の飛鳥、ヱミリア、カリミアが倒れた弥生に駆け寄る。
弥生は既に意識を失っていたが、辛うじて呼吸はしていた。
――ッテメェ! 殺す! 貴様はこの聖剣で胸元をブッ刺して殺す! 精々弥生さんの受けた苦しみを味わうが良い!!」
一方、大正は怒りが絶頂し、殺意剥き出しになってしまっていた。
「アアアアアアア!! シネエエエ!!」
ズガァッ!! と勢い良く聖剣が男の胸元に突き刺さった。
「ハッ! ハハハハ!! どうだ! このまま九十度横に回転させて……確実に息の根を……と言っても胸元突き刺しただけで死ぬのだろうか? 弥生さんの復讐として胸元を突き刺したが……まあ良い。取り合えずこのまま死ななかったら心臓に……ってなぁ!!」
男を聖剣で突き刺して気付いたことがあった。
「可笑しい。何故だ……」
人間だろうと亜人だとうと、一部を除くが魔物だって血液が流れている。
しかしこの男、刺しても――
――全く流血しない……
to be continued...
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