第四話 人間に召喚されたと思ったら魔族だった
第四話です。このお話は異世界転生だけでなく、異世界召喚まで同時に登場してしまうのです。しかも少女を召喚したのはタイトルにもある通り、人間ではなく魔族であった。
もし宜しければ評価など宜しくお願い致します。
魔王の城に、日本人の女の子が召喚されていた。
その女の子はありとあらゆるものを創造する能力を持っていたのだ。女の子を召喚した【カリミア・エクタシィ】は、魔術師のような真っ黒いローブを着ており、更にフードで顔があまり分からない。
そのカリミア・エクタシィは、ただひたすらにこう思っていた。
「なんて変な服装なんだ!そして、変なら目立つ筈なのに、何故だ!何故なんだ!何故、こんなにも!
『地味なんだ!』……」
そりゃそうだ、日本のJKの制服なんてこの世界に無い訳だし、この世界の服は大抵派手なのだ、それに比べると日本の制服が地味に見えるのは当然なのだ。
「私、こう見えても結構変わり者ですけど? あれ? (この人、なんか弥生に似てる?)」
カリミアに召喚された日本のJK、古墳飛鳥は自分が変人だとアピールするが、カリミアはそのままご丁寧に自己紹介をし出す。
因みに、飛鳥はカリミアのことを弥生に似ているとは言ったが、フードで顔が隠れているのでハッキリとした顔は伺えない。只、弥生に似ているらしい。
「こんにちは、あなたを召喚した、カリミア・エクタシィです。お気軽にカリミィ―とお呼びくださいね! 種族は超エリート魔族で、趣味はお煎餅を原子レベルまで粉々に砕いてから美味しくいただくこと。好きな食べ物は人肉! 嫌いな食べ物はデフォルトの砕かれていないお煎餅です。宜しくお願いします!」
魔族のカリミィーは、なんかクラスの自己紹介みたいなノリで、趣味とかを普通に言っていった。
カリミィ―の好きな食べ物が気になりながらも、取り合えず飛鳥も自己紹介を始めた。
「ええと、こんにちは、あなたに召喚された古墳飛鳥です。飛鳥でいいです。種族は日本のJKで、趣味はラノベ集め、好きな食べ物は男のアレで、嫌いな食べ物はシュールストレ何とか、あれ死ぬほど臭いです。宜しくお願いします」
飛鳥も中々カオスな自己紹介だった。しかしJKとかラノベとか言ってもこの世界の住人に理解してもらうことは当然ながら出来ない。要するに飛鳥は新しい趣味を見つけなければならないと言う訳だ。
しかし飛鳥は異世界召喚を夢見ていたのだから、きっとこのまま魔法が趣味になるのだろう。
「それで、あなたを召喚した理由なのですが」
「うん?」
「勇者になって人間の国を滅ぼして頂きたいのです!」
「……は?」
多くの人が恐らくこう思ったであろう。
逆じゃね? と。
そう、逆なのだ。普通、城に異世界召喚されると、王とか王女とかに「魔王倒してくれ!」「魔王倒せ!」等と頼まれるのが定番だが、このお話では違う。飛鳥が召喚されたのは魔王城で、召喚師であるエリート魔族のカリミアに飛鳥は人間を滅ぼすように頼まれたのだ。飛鳥自信人間なのだから、ぶっ飛んだ話である。
「うーん、でも私自身人間だし?人間が人間滅ぼすってどうなの?」
「その点についてはご安心を。貴女は人間をやめて魔族となっておりますので」
「?? あ、もしかして私を召喚した時についでに魔族にしてくれたの?」
「いえ、貴女は生まれつき魔族です」
「ちょっと何言ってんのか分かんないよ?」
飛鳥は元々人間として、日本で産まれた普通の女の子の筈だ。決して生まれつき魔族などと言うことはないのだから、カリミアの言っていることは矛盾している。飛鳥が意味わかんないのは当然だ。
「あなたたち日本人の先祖には神や魔族、亜人等がいるのです。現代の日本人の殆どは普通の人間のようになってしまったけれど、あなたは、古墳飛鳥は先祖返りで限りなく純血魔族に近い力を持って産れてきたのです。因みにあのまま日本で生き続けても、ちゃんと魔法も使えたし万年単位で生き続けることも出来たんですよ? 勿論今もですが」
「待って、理解が追いつくまでちょっと待ってね意味わかんないから」
突然日本人の先祖に神や魔族が居ると言われたのだから、理解が追いつかないのは寧ろ健全だろう。普通の人なら思考が停止したりもするだろう。
「……もう良いですか?」
「まだです! 日本人が人間と魔族のハーフとか意味わかんないから!」
飛鳥の思考は未だ暴走中、混乱して大抵のことは直ぐに理解出来ないようになっている。
「飛鳥さんの先祖は特に魔族の血が強いんですよ。因みに貴女がいつも一緒に居た女の子は八百万の神の遠い孫だった筈です」
「弥生のこと!?」
実は神の子孫であった弥生、しかし弥生の先祖は日本の神様なので、紅雨神は先祖ではない、紅雨神はこの異世界の創造主なのだから。
「とにかく飛鳥さん! 貴女には魔勇者となって生意気な人間共を皆殺しにして頂きたいのです。大丈夫ですよ、貴女は人間より魔族の血の方が濃いんですからねえ。ほら、よく見てください、実は貴女の頭には三本もの角が生えているんですよお」
カリミアは怪しい顔で飛鳥を魔の方へ勧誘する。
「魔勇者って何!? 私の頭に角とかなに言って! うわ本当に生えてた! 私の長くて柔らかくてフサフサで気持ちいい最強の可愛い髪に小さい角が隠れてたああ!!! しかもよく見るとだんだん大きくなって来てるんだけど! このままじゃ私の最強の髪を持ってしても隠しきれなくなってしまうわ! どうしよう……」
飛鳥は今まで自分の頭に角が生えているなんて知らなかった。自分にないはずのものが、自分に人間離れしたものがずっと前から生えていたなんて知ってしまったのだから、取り乱してしまうのも無理はない。
「大丈夫! 隠す必要なんてありませんから!」
「なんでよ! 私は恥ずかしくてこのままじゃ人前に出られない!!」
「だって貴女魔族」
「知らない! 魔族の常識なんて知らない! 私今まで人間として日本で生きて来たんだからね!」
なにやら、魔族と日本人は相性が悪い様。
「まあ、貴女を召喚したのは私ですからね。いいですよ? 落ち着くまで何年だろうと待っていてあげますので、全て現実を受け入れてくださいね? 貴女はいずれ魔王となる」
――――――
〜10分後〜
飛鳥はようやく落ち着きを取り戻し、魔王城最高級の客室でカリミアと共にお茶みたいな飲み物を飲んでいる。この世界にお茶はない、飛鳥たちが飲んでいるのはお茶に似た何かだ。
コンコン
「失礼するわね?」
ノックして室内に入って来たのは超が付くほど、いや、超じゃあ足りないくらいの紅色の髪の美少女だ。
「貴女がカリミィの召喚した魔勇者ね? 宜しくお願いするわ」
「ええと、カリミアさん。どちら様で?」
「ああ、この人はヱミリアお姉様。魔王です。あと私のことはカリミィでいいとさっきから!」
驚くことに、少女の見た目でありながら、この美少女が魔王らしい。いや、驚くことでもないか、少女が魔王やってるのっていろんなのでよくあるし?
「ええそうよ、魔王をやられていただいてるわ。だから崇めなさい!」
「ええと、エミリアさん、でしたっけ? 随分とおデカイ態度で……」
『エミリアじゃないわ! ヱミリアよ! この馬鹿!!!』
実はヱミリアは結構偉そうな性格だった。でも魔王だからいいよね?
しかし、名前を間違えられると相当怒るぞこの貧乳。
「発音の違いがわからないんですが!?!?!?!?」
「大丈夫です。ヱミリアお姉様は名前のこととなるとちょっと短気になりますが普段は偉いだけですので」
「そ、そうなんだ?……」
『いい? 貴女はついさっきまで自分を人間だと思い込んでいたらしいから仕方ないけど、「ヱ」と「エ」は魔族にとって全く異なる音なの! 私たち魔族の聴覚は人間なんかよりもずっと優れているから当然よね!!』
「そ、そうなんですか……じゃあ私も練習したらエミリアさんの名前もちゃんと言えるように……」
『ああああああ!!!!! また間違ったじゃない貴女!!』
今後、飛鳥とヱミリアは仲良くやっていけるのだろうか……二人のやりとりを眺めていたカリミアは、結構本気で心配していた。
「……そういえば、ヱミリアさんのことお姉様って言ってるけど、カリミアとヱミリアって姉妹なの?」
「いえ、私たちは従姉妹です」
「ええ、私たち従姉妹となのよ。私の本当の名は、ヱミリア・エクタシィ」
「へえ、カリミアはヱミリアさんの従姉妹だったんだあ」
『貴女! 今私のことなんて!? いまヱミリアって言ったわよね! エミリアじゃなくてちゃんとヱミリアって!』
『飛鳥さん! だから私のことはカリミィで良いですから!!!』
ヱミリアはちゃんと正しい名前で呼ばれたことで物凄い喜び、カリミアはあだ名で呼ばれたがる。
この分だと、二人とも飛鳥と仲良くやっていけそうだ。
to be continued...
最後まで呼んで下さりありがとうございます!
宜しければ第五話も宜しくお願い致します。