第四十六話 ツンデレ魔王にはヘタレ勇者も敵わない
第四十七話目です。このツンデレこそが、魔王の本気なのかもしれない。
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日本海に一人で浮いたままの飛鳥に出来ることは最早独り言を話す程度しかない。
独り言なんて喋っても助けが来るわけでもないと思い、飛鳥は昼寝をすることにした。
正確には大声で叫べば周りは海しかないのでもしかしたら弥生たちに叫び声が届くかもしれないが、疲れるだけだしそもそも飛鳥はそんな叫ぶようなキャラじゃない。
しかし僅か数十分後、人の声が聞こえてきた。
「……すか!」
まどろみの中重たい瞼を開くとそこには親友と愉快な仲間たちがペラペラになった自分を見下ろしていた。
「飛鳥! 大丈夫?」
弥生の一声で我に返る。どうやら助けに来てくれた様だ。
風向きを考えれば飛んで行った方角は大体分かり、海にまでくると空から見れば海のド真ん中で浮いている飛鳥は普通に目立つので割と簡単に見つかったらしい。
「あ……うん大丈夫! 助けに来てくれてありがとわぁっ!」
「「「「――!」」」」
飛鳥がそうお礼を言った途端、体が膨らみ始め、一瞬にしてペラペラに潰れる前の普通の状態へと戻った。
急なことだった故他の四人も目を丸くする。意味が分からない、どういう原理で戻ったのだろう?
謎である……
その後、一先ず五人共飛行能力で空を飛びながら都会まで行き、割といい感じのホテルを探していた。
「あ、ここなんて高級そうでいいんじゃないかしら?」
弥生が発見したのは大都会の中にある高級ホテル。
「いや、金ねえだろ!」
しかし大正の言う通り宿泊する為の金がない。
途中から魔王城で暮らしていた弥生たちにとって……いや、皆の能力を考えると金なんて元々必要なかったのだ。冒険者ギルドでクエストを受けていたのだって言ってしまえば遊びみたいなものだ。
そして、油断して金を魔王城に忘れてきた訳だ。
「金ならあるわ! ね? 飛鳥」
「うん。『創造! 福沢諭吉!』」
そういって飛鳥は福沢諭吉、もとい、一万円札を創造した。立派な犯罪な気がするが日本でこのような能力の悪用を犯罪として裁くことは出来ないのだから大丈夫だきっと……
「うわぁ! 一万円札が!! いいのかよこんなことして!!」
最早今の大正はただの突っ込み役と化してしまった。
「大正くん! これが能力の有効活用だよ!」
「いや悪用だろうが!!」
「この世界の宿的な物がどういったモノなのか知るいい機会ね! 期待外れの寝心地だったらこの建物を丸ごと消し炭にしてあげるわ!」
「それが良いですね☆」
「止めろ!!」
大正の突っ込みは追いつかない!
~~~~~~~~~~~~~~~~~
暫く突っ込んだ後、ようやくこの高級ホテルの中に入っていった。
辺りは既に真っ暗。ボケては突っ込むの繰り返しをしていたら随分と時間が経ってしまった様だ。だがそんなことはどうでも良い。何故なら今日はもうこの高級ホテルに泊まるだけだからだ。今後のことについては明日起きてから考えれば良い。
「いらっしゃいませ」
受付の人が挨拶をする。
この時大正はもう寝るだけだと気を抜いていたのだが、本当の悲劇はここから始まった……
「……そう言えば、部屋割りはどうされるのですか?」
カリミアがそう言った瞬間、大正とカリミア以外の三人が反応する。
「私と大正くんが二人部屋でその他が三人部屋でお願いします!」
最初に仕掛けたのは弥生だった。
受付の人は普通に対応するが、これから可哀そうな目に遭うこととなる。
「畏まりましt」
「待て待て待てェエエエエ!!」
「あ"?」
受付の人の台詞を遮って突っ込んできたのは大正だった。
受付の人は流石に苛ついてきて「あ"?」と暴言を吐いてしまう。
「なんで? 私と一緒で何が不満なのよ」
「不健全過ぎるだろうが! ここはラブホじゃねんだって! シーツ洗う人のことも考えろや!」
最早大正は突っ込みすぎて頭が可笑しくなってきた様だ。
「弥生ばっかりずるい! 私だって大正くんと同じ部屋が良いのに!!」
そう言いながら飛鳥が大正の左腕に抱き着く。
「くぁwせdrftgyふじこlp」
大正は興奮して理性が吹っ飛んでしまった様だ。
弥生と飛鳥がはとうとう口喧嘩を初めてしまった。
「ばぁーか! 貧乳のくせに私に勝てるとでも?」
「そんなことない! きっと大正くんは巨乳より貧乳の方が好みだよ!」
「こうなったら部屋割は戦って決めましょ!」
「望むところ! 今日こそは弥生に勝って見せるんだから!!」
そう言って二人は外へ飛び出していった。
その直後――
――ドグゥウウォオオオオオオン!!
――バリバリバリバリッ!!
――ズゥウッガァアアアアアアアン!!
とても激しい戦闘音に、ホテル内の人々が恐怖する。
お年寄りは腰を抜かすし子供は号泣、大人は混乱。
そして恐らく外に出ればもっとカオスな状況になっているであろう……
「……古墳さんはどうか分からんが、残念ながら勇者である俺と魔王であるヱミリア、そしてカリミアの力を持ってしても、あの二人の戦いを止めることは出来ないだろう……」
大正がそう悟った時、右腕に柔らかい感触を感じた。
「ひょわぁっ!」
思わず情けない声が漏れる。
それを見たカリミアがクスクスとウザい感じで笑い出す。
「……ねえ、そのぉ……」
大正の右腕に抱き着いていたのは魔王であるヱミリアであった。
魔王が勇者にデレるのはどうかと思うが取り合えずそれは置いておいて……
「な、ななな何をしているのかなヱミリアさん」
ヱミリアの甘い声にヘタレ勇者は困惑してしまう。
まるでラブコメの駄目な主人公の様だ。
「……わたしと、一緒の部屋で、ねよ?」
ヱミリアは腕に抱き着きながら上目遣いでそう言ってきた。
とんでもない破壊力である。
「は、はぁ!? (なんだよこの可愛い生物! これが実は魔王だなんて嘘だろ絶対!)」
余りの可愛さに大正はもうヱミリアが魔王だと言う事実が実は嘘なんじゃないかと疑い始める程だ。
しかしヱミリアの攻撃はここからが本番だ。
「べ、別にあなたと一緒に寝たい訳じゃないわよ! ただ……ただ、弥生と飛鳥が取り合うくらいなら間を取って私と一緒に寝て貰ったら丁度良い思ったよ! あの二人を仲直りさせる為なんだから勘違いしないでよね!」
その台詞を時に目を逸らしながらもしっかりと大正の目を見ながら恥ずかしそうに言うのだ。
――!? (あ……やば……意識が……)ヱミリアちゃん、かわい……すぎ……
当然の如く大正は意識を保つことが出来ない。これは大正がヘタレ勇者だからでは断じてなく、恐らく大抵の男なら意識不明になるであろう。
その証拠として、激しい戦闘音に恐怖したホテル内にいる男性客が、目の保養に丁度良いと思い、ヱミリアを凝視していたのだが、気付いたら気を失っていた。
to be continued...
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