第四十二話 精神が死んでしまった桃山安土
第四十二話目です。
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――私の名は桃山安土。高校で教師をしている。
「本当の私は狂った様にテンションが高い。しかし、縄文弥生が死に、古墳飛鳥と明治大正が行方不明になってから精神が死んでいる。生きた心地がしない。何故、失ったのが三人共自分の受け持っている生徒なんだ。まるで私が生徒一人一人守れないみたいじゃないか!」
そんな、精神状態が危ない状態の、元弥生たちの担任の先生である桃山安土はゾンビの様に歩きながら職員室へ向かう。
「……」
ただ居るだけで安土は周囲に良くないオーラを放っており、安土が職員室に入室した瞬間、職員室内は今にも死にそうな空気に包まれた。
「あ、桃山先生。すみません、ちょっとお願いしたいことが……」
話しかけてきたのは影が薄く、特にこれと言った特徴が何一つない男性教師。いわゆるモブという奴だ。
「ああ、何ですか?」
安土はダルそうな顔でやる気のない返事をする。
因みに相手のモブ教師も死んだ魚の目をしている。
「明日行われる編入試験。なんと五人も居るのですが、桃山先生が担当していただけないでしょうか? 因みに拒否権はありません。あなたに試験監督になってもらうのが編入希望の生徒たち(予定)の希望であり、校長直々の命令でもありますので……」
「校長ってそんな命令とか出来る力あったんすか? まあ、いいですよやっても……どうせ何やっても私の精神は死んでるんですから……」
超ネガティブになってしまった安土はどうでも良い様な気持ちでその仕事を引き受けた。
この選択が、精神的に死んでしまっている安土の運命を大きく変えることになるなんて、編入希望者を除き、誰一人知る由もなかった。
翌日、安土は相変わらず死んだ顔をしながらもう使われなくなった廃教室へ向かう。どういう訳か、試験はそこで行われるのだ。
「あー。えー、おはようございます。お前らの編入試験を眺める役に選ばれた桃山安土です。私はただ居るだけなんで、居ないものと考えてもらって結構ですので」
数十年前に使われなくなり、現在までずっと放置されていたこの廃教室には辺りに蜘蛛の巣が張られまくっており、異臭までもする。
精神がヤバイ時に異臭を嗅ぐなんて自殺行為だ。死を早めることになり得るかもしれない。安土はずっと下を向いて自己紹介をしていた。まだ生徒五人の顔は見ていないのだ。
安土は恐る恐る顔を上げて生徒の顔を見てみる。
「くぁwせdrftgyふじこlp」
その五人の内、四人が知っている顔だった。その内二人は何故か全く同じ顔をしている様に見えたのだが、安土は驚きすぎて文字に起こせないような叫び方をする。
「お久しぶりです! まるで幽霊でも見たかのような驚き様ですね。以前は狂った様な困った教師でしたが随分と暗くなってしまったのですね。先生」
試験を受ける生徒の一人、縄文弥生が笑顔でそう言った。
「い、いや、幽霊を見たも何も、縄文さん! あなたは死んだ筈、寧ろあの高圧ガストラックに轢かれ、更に糞おっさんの煙草で引火して大勢が死んだあの事件に巻き込まれて生きていられる筈がないんだ! 故に幽霊だ!」
安土は弥生が人間だとは認めない。幽霊だと思っている様だ。
安土は弥生の葬式にも火葬にも参加した。それ故生きている訳が無いと思うのも無理はない。その上今の弥生には長い耳が生えている。エルフなので当然なのだが日本にエルフは居ない。余計に人外だと思ってしまうのであった。
「そうか、確かに弥生さんは死んでしまったからな、幽霊だと思うのも仕方ない。だがそれなら俺と古墳さんが本物だと言うことは認めてもらえますか?」
大正も笑顔で安土に問う。皆安土を弄んで楽しんでいる様だ。よく見れば皆の笑顔は悪い笑みであった。
「め、明治大正くん! 古墳飛鳥さん! 生きていたんですね……今まで一体何処で何を……」
状況の理解に追いつかない安土は取り敢えず行方不明となっていた大正と飛鳥を心配してみる。実際物凄い心配していた故丁度良かった。
「俺は異世界で美少女の王女ちゃんに召喚されて魔王と戦う為の道具として良い様に使われてました! 楽しかったです!」
「私は異世界でそこに居る弥生そっくりのカリミアって言う子に召喚されてねっ! 勇者と戦う為の道具としていいように使われていたよ! 大正くんと交わるの……気持ち良かったなぁ……」
二人共異世界で何をしていたかを大雑把に話す。
二人共変態の様な誤解を産む言い方が有った気がするが、意味深なだけで全て事実だ。
ただ、「大正くんと交わるの気持ち良かった」とは大正と剣で戦ったことを意味している。
「――???」
当然、安土の脳内処理は追い付かない。大正と飛鳥の説明は、余計に安土を混乱させるだけだった。
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ことの八端は一日前に遡る。
「私、日本に行ってこようと思うの!」
「「「「……ゑ?」」」」
シルルが神護に消されてから一週間程が経過し、遂に弥生は日本へ行くことを決意した。
皆驚きすぎて正しく発生出来ず、「え?」と言いたいところが「ゑ?」となってしまう。尚、「え」と「ゑ」の発音にどう違いがあるのかは知らない。
「や、弥生さん……なんで日本に、と言うか行けるの?」
「……弥生……あんなにファンタジー世界に憧れてたのに……飽きちゃったの?」
「弥生ぃ……行かないでぇ!」
「あなたは私の妹である以前にヱミリアさまのお気に入りですので勝手なことは許しません!」
全員が弥生が日本へ行くことを反対した。
ヱミリアに至っては弥生のことが大好きすぎて泣いてしまっている。それを見ていた弥生や大正たち全員は可愛いと思ってしまう。前にも言った気がするが、やはり全員ロリコンだった様だ。
「ああちょっと待って、これは私の感でしかないんだけど、シルルは日本に居る気がする……(と言うか、人間だった頃に一度未来のシルルと会ってる気がする……)」
弥生の感は恐らく当たっている。魔神の影響によって、能力でシルルの居場所を特定したり目の前に召喚することは出来ないのだが、弥生は予め魔術で運を上げてからシルルは日本に飛ばされたと適当に予想したのだ。
「私の能力、その気になれば多分日本にも行けると思うから」
弥生はそう自信を持って断言した。
「分かった。弥生さんの能力なら日本に行くことすら可能で、シルルちゃんも間違いなく日本に居るんだろう。日本へ行ってきて良いぞ!」
「ホント!? 大正くん大好きっ♡」
大正は納得したのか、弥生が日本へシルルを探しに行くことを許した。
素直に嬉しかった弥生は、可愛い声でお礼を言いながら大正に抱き着いた。
「ちょ……や、やよいさん?」
急に抱き着かれた大正は戸惑う。更にヱミリアたちが悔しそうな表情で嫉妬している。
「それじゃあ、皆私に掴まって? その方が転移しやすそうだから」
「え? もう行くのか?」
「分かったわ!」
「分かった!」
「畏まりました」
弥生が日本へ転移する準備を始めると、日本へ行くのはもうちょっと先だと大正だけ思っており、心の準備が出来て居なかった。
他の三人は元々すぐに日本へ弥生について行くつもりだったので行く気満々だ。すぐに三人共弥生の体に掴まった。
戸惑いながらも大正も急いで弥生に掴まる。しかしその掴まった場所に問題があった。
「ひゃっ! ちょ……あっ♡ 大正くん、そ、そこは……らめぇ~♡」
大正は思いっきり弥生の胸を両手で鷲掴みにしたのだ。不意打ちで心の準備が出来ていなかった為、弥生は驚くと同時に感じてしまう。
「た、大正くん! 私たちだけじゃなく弥生にまでセクハラを! 許さない!」
「そうですね。私の妹のおっぱいをよくも!」
「……よくも弥生に! あと私だけセクハラされてないのが腹立つから半殺しにでもしてあげようかしら?」
三人共非常にご立腹のご様子。
このままでは大正は殺されるだけでは済まされないと思える程凄まじい、シルルが神護に消された時とはまた異なる感じの、おふざけ交じりの怒りだ。故に実際殺されることはないだろう。飛鳥が大正のことを愛しているというからではない。ここにいる皆は既に家族と同じようなものと考えているからだ。それに弥生や飛鳥の大正に対する愛は異常で、ヤンデレでもある。カリミアとヱミリアが居なければ大正の命は無かったかもしれない。寧ろ今の状況は安全と言えるだろう。
「……あっ♡、あ♡、はぁ♡ はぁ♡ も、もっとぉ、たいしょうくん。もっとぉしてぇ♡」
「「「「――!!……」」」」
弥生は感じすぎて最早理性がないも同然と言える状態に陥ってしまっている。
弥生のおねだりを聞いた四人の頭は真っ白になり、まるで弥生以外の時間が停止したかの様に静かになり、部屋には弥生の声だけが響き渡るのであった……
翌日目が覚めると、五人共この日の記憶が全く無かった。土曜日寝て起きたら月曜日になっていたのだ。仕事や学校が一日早く始まってしまうではないか!
五人共日曜日の記憶は全くない。しかし、思い出そうとすると冷や汗が出てくる。脳が勝手に昨日の記憶にアクセス出来ない様フィルターを掛けている。そして、五人は一つの結論に達した。
――昨日何があったのかは誰一人として覚えてはない。ただ、一つだけ確かなのは、何かヤバイことがあったということだ。脳が思い出すことを拒否していることを考えると、もう昨日は何も無かったと言うことにするのが賢明だろう。きっと……
朝食を食べ、歯磨きなど全員の朝の準備が出来た後、弥生の能力で日本へ転移した。
「待っててシルル!『私と私に掴まっている者全てを日本に転移させよ!!』」
そう願って……
to be continued...
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