第三十七話 ヱミリアの精神は子供
第三十七話目です。
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「はぁはぁはぁ……」
大正に弥生を連れて非難する様に言われたヱミリアは、弥生をお姫様抱っこをしながら必死に走っている。
「はぁ……この辺りまで来れば、一先ずは安心かしら……流石に魔王である私が従者やあの、ゆ、勇者を戦わせたまま無責任に逃げるのはどうかと思うわね。ここなら戦闘の音もまだ聞こえるし、一応見守るくらいは出来るかな」
そう言いながら魔王城の隅っこにまで到達したヱミリアはそのまま床に座り込み、弥生を膝枕する。この魔王城は半径だけで数キロはある。端まで行く程度で十分安全なのだ。
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「……と言う経緯よ。あのドラゴンが邪竜へと覚醒したのと、あなたがここに居る訳は」
長い語りだったので忘れかけていたかもしれないが、これまでのことはヱミリアの回想だ。その回想が今終わり、現在に至る。
「……成程ね。大体分かったわ。それにしても、まさかあのウザく付き纏ってきたスカーレットドラゴンが邪竜に覚醒するなんて驚いたわ」
「当然よ。私だって邪竜以前に魔界にドラゴンがいることに驚いたわ! 魔界の入り口には結界が張ってあるから、カリミア程の実力の召喚術師が召喚する以外ドラゴンが居るなんて普通有り得ないもの!」
「でも実際カリミアが召喚したんだけどね」
弥生とヱミリアはいつの間にか仲良く会話していた。シルルや飛鳥たちといい、皆敵と仲良くなりすぎだろう。実際自然と仲良くなっただけなのだがまるで魔術の様だ。
「……ねえ、ヱミリア」
「ん? 何かしら?」
弥生は突然神妙な顔になり、ヱミリアの名を呼ぶ。
ヱミリアは特に何も考えず、無邪気に何かしら? と。この無邪気さ、やはりヱミリアはまだ、肉体、精神、共に子供の様だ。
「……ヱミリア、貴女はさっき私に謝ってくれたわ。そしてさっきまで仲良く会話していた。でも、貴女はそれで本当にいいの? 私が怖くないの? 私のこと! 殺したいくらい憎いんじゃないの?」
弥生はヱミリアの両肩を掴みながら必死にヱミリアの本心を問う。その気になれば能力でヱミリアの本当の気持ちなんて、手に取るように分かる筈なのに、弥生はそれをあえてしなかった。あえて口で聞くことに意味がある、そう、考えたのだ。
「……言ったじゃない。私が憎いのは縄文鎌倉。貴女はその娘でしょう? 子供まで恨むなんて、それはただの八つ当たりよ。あなたにどれだけ復讐したって……そんなこと、いくらしたって! 意味なんてないのよ!!」
落ち着いて話していたヱミリアであったが、徐々に感情的な声色に変わっていく。
「ヱミリア!! 本当の気持ちをいいなさい! そんな私のことを殺したい程憎んでいた相手と仲良くなんて、私の気だってこのままじゃ晴れないのよ! ドラゴナのことなら大正くんやシルルたちに任せましょう。大正くんたちならなんの問題もない筈よ。大正くんたちを、信じましょう。だから、ヱミリア! 思う存分本当の気持ちを私にぶつけなさぁああああい!!」
ヱミリアは再び落ち着いた表情へ戻る。
「……ありがとう、縄文弥生。お陰で自分に素直になれて、自分の本当の気持ちに気付くことが出来たわ。おっと、敵に礼など不要だったかしらね?」
「やっと……帰ってきたわね、それでこそ、その思想こそ私のイメージする魔王よ!」
そう言って弥生は殺気を出し、魔剣を創造しヱミリアに斬りかかる。因みにヱミリアに斬られた傷は既に治療済みだ。弥生は能力でステータスを上げた時点で治癒魔術も超人級になっていたのだ。彼女に治せない怪我や病気などは基本ない。
キィイイイイイン!! 剣同士が思い切り衝突し合う音が廊下中に響き渡る。
ヱミリアが魔刀を素早く想像し、弥生の魔剣を受け止めていた。
「貴女は敵だけど、だけど! さっき会話をした時、楽しかったのよ。カリミィや飛鳥と話してる時みたいに、楽しかったのよ……だから、だから! 私は貴女を倒し、鎌倉への恨みを完全に絶ち、貴女を友達にしてみせるわ!」
「なんか矛盾しているけど言いたいことは理解出来たわ。要するに……寂しかったのね……」
お互い、剣を受け合いながらこれらの会話をしている。
しかし、弥生がヱミリアは寂しかったのだと能力を使わず見事に言い当てると、ヱミリアの動きが一瞬止まり、隙が出来る。弥生はその隙をつき魔剣をヱミリアの喉に当てる。
「……勝負、あったわね。魔王・ヱミリア・エクタシィ。私の勝利よ」
弥生はあえて敵であるヱミリアを殺さずに降参させようと剣をヱミリアの喉に当てた。弥生もまた、ヱミリアと分かり合えると思ったのだ。
「……まだよ。まだ、終わってないわ……」
「ん?」
敗北した筈のヱミリアがまだ終わっていないなどと、訳の分からない発言をする。訳が分からなかった弥生は「ん?」としか言いようがない。
「まだ終わってないわ! これは三回勝負なのよ!!」
「子供か! 最初言ってなかったじゃない!!」
どうやら「まだ終わっていない」と言うのは三回勝負だからだったらしい。しかしヱミリアは始め、三回勝負などと一言も言っていなかった。となると、後付け設定か。つくづくヱミリアは子供である。弥生は呆れるものの、ちょっと可愛いと思ってしまう。
to be continued...
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