第三十六話 魔王、勇者に惚れる
第三十六話目です。魔王が勇者に惚れます。
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「……え? な、なに? あの空……」
街の様子を見るのと同時に、飛鳥は空の異変に気付く。
――真っ黒い……
「ヱミリア様のところへ行って来ます!」
空の異変に気付き、ヱミリアを心配に思ったカリミアは険しいい表情で転移魔術を使い、ヱミリアのところへ行ってしまう。
「お、お姉様も危ない!」
そう思ったシルルは急いでチョコのポッキーを創造した。食べれば転移魔術が使えるようになる。
「待ってくれシルルちゃん! 俺も連れてってくれ! 弥生さんを、愛してるんだ!」
転移魔術の使えない大正が弥生とヱミリアのいる最上階へ行くには、途方もない時間が掛かってしまう故必死に転移で俺も連れてってくれとシルルに頼む。
仲間なのだからそんな必死になることないのでは? と思うが今は大正のラッキースケべが原因で喧嘩中だ。
「……はぁ、仕方ないですね。一時休戦としましょう。実際大正さんの協力があった方が楽ですし」
「なんか都合の良い道具みたいに思われてないか?」
シルルは怪しい表情でニヤニヤとしながら大正を一緒に転移で連れていくことを許す。
しかしシルルは大正の思った通り、弥生を助ける為の道具としか思っていない様だ。
「あ、シルルちゃん! 私も連れて行ってね?」
「いーですよー!」
飛鳥も転移魔術が使えないのでシルルに連れて行って貰うよう頼む。
二人は既に仲良し故、現代の女の子友達同士の様なノリでシルルはあっさりと飛鳥も一緒に転移することを許可した。
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「……もう、私にはあんなドラゴンをどうにか出来るような気力は残っていない……」
邪竜へと覚醒したドラゴナを前にしたヱミリアは、邪竜・ドラゴナのその圧倒的圧力で戦う気力を喪失してしまっていた。
『グギャァアアアアア!!』
ドラゴナは叫びながら、ヱミリアを足の爪で斬り裂こうと向かって来る。
しかし当然側にいる弥生も巻き込んでしまうだろう。もうドラゴナにまともな判断力どころか意識は残っていない。大好きな弥生すらこのまま爪で殺してしまう。
「……もう、戦うどころか逃げる気すら起きないわね……私は、もう、死ぬのね。せめて鎌倉に復讐してから死にたかった……そして、ごめんなさい。弥生……」
ヱミリアは死を悟ったと同時に弥生に謝罪する。気絶しているので当然この謝罪が伝わることはないが、それでも、何も言わずに死んでしまうよりはマシだ。ヱミリアはそう、考えたのだ。
弥生へ謝罪し終えた直後、既にドラゴナはヱミリアの目の前まで来ていた。
「(……ああ……遂に、終わるのね。私の、一生……)」
キィイイイイイン!! 剣同士がぶつかり合うかのような音が鳴り響く。
一体、なんの音だろう。私は、生きているの? ヱミリアの思考は追いつかない。混乱している。一体何が起こったのだ?
「――これで! 終わりになどさせねぇからな! そこの魔王!!」
「あ、あなた、まさか……人間の、勇者?……」
ヱミリアの目の前にはドラゴナと、ドラゴナの爪を聖剣で押さえつけている勇者の姿があった。
「お前が魔王だろう? 俺は明治大正。なったばかりだが一応勇者だ」
「あ、あの、えと……」
勇者である大正は相手が魔王であるにも関わらず、爽やかに自己紹介をする。対するヱミリアは、動揺して何一つ言葉が出てこなかった。
『グギャァアアアアア!!』
そうこうしているうちに、ドラゴナが暴れ出す。
「おい魔王! お前弥生さんを連れて避難していろ! 今の戦意喪失しているお前は足手纏い以外の何者でもない」
「む、無茶よ! 無理をしてでも私戦うわ! 貴方が勇者だからなんて関係ない! 人間に対処出来るような相手じゃないのよ!」
ヱミリアは人間なんてどうでも良いと思っていた筈なのだが、何故だろう? 彼女自身にも理解が出来なかった。何故こんな人間の男なんかを割と本気で心配してしまっているのだろう? 意味が分からない。
ヱミリアが体をガクガクと震わせてそんなことを考えていると、大正のある一言で全て理解した。
「大丈夫。俺たちなら何とか出来る筈だ。だから……安心してくれ」
大正はそう、優しくヱミリアに言った。勿論「俺たち」とはシルルたちのことである。
そして、ヱミリアは確信する。
「(ああ、そうか、私……情けないわね、魔王である私が、なんでよりにもよってあんな、人間の勇者なんかを……貴方に助けられたその瞬間から私は!)」
――貴方に恋していたのね……
to be continued...
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