第三十五話 邪竜・ドラゴナ
第三十五話目です。
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――あれ? 私、どうなったんだっけ……確か、ヱミリアに切り裂かれて……
ヱミリアに魔刀で斬り裂かれ、意識を失っていた弥生が目を覚ました。
「ん? あれ? 確か私は床にそのまま倒れた筈……なのに、心地良い、何だろう、この頭に感じる柔らかい感触は……」
「……気が付いたのね、縄文弥生。その、良かったわ」
「……え!?」
弥生が驚くのも無理はない。この状況はどう考えても異常なのだから。
ついさっき、殺す勢いで自分を日本刀で斬りつけて来た相手に膝枕されており、挙げ句の果てには敵が目を覚ましたのにも関わらず、良かったと。
弥生にはこの状況が全く理解出来なかった。どう考えても意味が分からない。
「え、ええと、ヱミリア?」
「な、何よ?」
弥生がヱミリアの名前を呼んでみると、ヱミリアはツンデレの様な返事を返す。
「その、なんで貴女は敵である私を膝枕しているの?」
「うっうぅ」
「えぇ!?」
弥生が質問をしただけなのにも関わらず、どういう訳か、ヱミリアは泣き出してしまう。
「どっどど、どうしたの!?」
驚きながらも心配する弥生は動揺しながらヱミリアに声をける。
「ごめんなさい! 私が悪かったです! 貴女は何もしていないのに、あれはただの八つ当たりでした!」
「――!」
常時偉そうな口調で話していたヱミリアが突然丁寧語で謝り出す。弥生は驚かされてばかりだ。
「え、ええと、顔を上げて? 私は全然気にしてないし、何よりも貴女が怒るのは何も間違ってないのよ? 私は勝手ながら貴女の記憶を観させてもらったわ。許せないわ! あの屑マザー!」
弥生は優しい声でヱミリアを慰める。しかし途中から実の母、鎌倉に対して段々と苛立ち始め、最後には完全に怒り声に変わっていた。
「うっ……うわぁあああああああん!!」
弥生に共感してもらい、更には一緒に怒ってもくれた。それが嬉しくて、ヱミリアは今まで、何百年も溜め込んでいた感情を、一気に涙と共に表へ出した。
弥生はヱミリアの膝の上から体を起こし、号泣しているヱミリアを優しく抱きしめてあげる。
「うっ! 弥生ぃ 弥生ぃ」
「……うん、うん。頑張ったねヱミリア。でももう大丈夫。これからは私も味方だから!」
「うん……」
子供の様に泣き噦るヱミリアを見て、弥生は思う。
――何千年生きていようが、魔王だろうが、ヱミリアは人間にしたら高校入りたてくらいの子供だ。魔王だということに縛られず、もっと弱い感情も露わにすればいい。無理に強がる必要なんて、何も無い。
「私、鎌倉に魔王をやれって。あいつの言葉通り魔王になるのは癪だったけど、次会ったら絶対復讐してやるって。そう、決めたの……」
ヱミリアの号泣は、既に少量の涙を流す程度に落ち着いていた。
弱々しい声でヱミリアは鎌倉へ復讐するつもりだったことを明かす。
それを聞いた弥生は決心した。
「あの屑マザーと話してみよう。それで話が通じなかったら成敗してやるわ!」
ズドォオオオン! 弥生がそう決心した瞬間、何かが壊れるような恐ろしい音が鳴り響く。
『グゥギャォオオオオオオオオオオ!!!!』
「え? な、なに!?」
魔獣の様な叫び声が聞こえてくる。何も知らない弥生は当然驚く。
「……邪竜・ドラゴナ。彼女の実力は私を軽く凌駕するわ。勇者・大正。魔勇者・飛鳥。最強の召喚術師、ハーフ魔族のカリミア、ロリ・イート・シルル・デヴォンが全力で戦ってるけれど、いつまで保つか……」
「待って! なんかシルルの名前可笑しくなかった!?」
一体彼女が気を失っていた間に何が起こったというのだろう?
急な出来事に弥生の突っ込みは追いつかない。
「まず私が貴女を斬ってしまったことが全ての原因となったわ」
ヱミリアはそのまま何が起こったのかを勝手に語り出す。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
弥生とヱミリアはほぼ同時に叫び出す。
「だから全力で掛かって来なさい! ヱミリアぁああああ!!!」
「死んじゃえぇえええええ!!!!」
ヱミリアは飛んで弥生に接近しながら魔刀を創造し、弥生を斬りつける。
「…………ヱミリア、私の、従姉妹……」
しかし弥生は目を瞑りながら、そう呟くだけだ。ヱミリアの剣撃を避けも守りもしない! このままでは弥生の腹は斬り裂かれ、死んでしまう!!!
スパァアアアアン!!!
「……そう、それで、いいのよ。ヱミリア、お姉ちゃん……」
弥生の意識はここで途切れた。
誰しもが弥生はこのまま倒れて頭を床に打ち付けてしまうだろうと思っていた。しかし、それを助ける者が居た。
『……くも、よくも弥生ちゃんを! 許さぬぞ貴様ァ!』
「ド、ドラ……ゴン? 何でこんなところに……まさかカリミアが召喚したのが逃げて来たんじゃ……」
普通、魔界にはドラゴンなど居はしない。極少数だけ竜魔族と呼ばれる人に擬態出来る魔族と竜の血が混ざった種族だ。僅かに魔族の血の方が多めなのが竜魔族として魔界に住めるが、竜の血が僅かでも多いと魔竜とされ、魔界には居られない。
しかしこのドラゴンはどちらにも当てはまらない。
『我が名はドラゴナ・スカーレット。ドラゴンとは、激しい憎悪や怒りが規格外にまで達すると、稀に邪竜へと覚醒することがある。今の我が正にそれ……ダァアアアアア!!!!』
ズゴゴゴゴ、ビリビリビリ。と激しい地響きが、いや、空間そのものがドラゴナの莫大な魔力によって歪んだり、揺れたりしている。
「ふぇ!?」
この、ドラゴンが覚醒するというとんでもない状況を何一つ理解しきれていないヱミリアは言葉すら出せず、「ふぇ!?」という可愛い反応しか出来なかった。
可愛いとは言ったものの、顔は青ざめている。
『グギャァアアアアア!!!!』
魔王城中心から巨大な黒い闇が吹き出す。
闇はあっという間に光を飲み込んで行き、魔界の住人である一般魔族たちは必死に混乱しながら宛てもなく逃げ惑う。
「ぎゃああああ! なんだあの黒いのは!!」
「魔王城から出てるぞ!! ヱミリアさまは大丈夫なのか!?」
魔界は暗黒に包まれてしまった。但し真っ暗という訳ではない。どんな理論なのか、光は全て消え去った筈なのに明るいままだ。唯一空だけが真っ黒だ。
「うわぁあああ〜。頼むもう許してくれぃ」
「シルルさん!」
「はい! 創造! 『金縛ジュース』」
魔王城内では未だに大正が女の子たちに追いかけられていた。
カリミアの合図でシルルは大正を金縛で動きを止める。本人たちは無自覚だが、いつの間にか三人共既に仲良しだ。
「うわぁ! なんだぁ? か、体の動きが、鈍いぞ?」
「動き、止めました! 飛鳥さん!」
「はぁ〜い」
今度はシルルの合図で飛鳥が攻撃に出る。見事な連携だ。ただ、女の子三人に追いかけられるなんて羨ましいと思うが冷静に考えてみると、この場合、大正を三人で殺しにかかっているのでこれはもう虐めである。
「いや違う! 鈍いんじゃなくて動けねぇ! 金縛か!」
「悪く思わないでね? 大正くん♡」
「ぎゃあああああ」
飛鳥が魔刀で大正をぶった斬ろうとし、魔刀が大正の肩に触れるか触れないかくらいまで来たところで飛鳥は刀を止める。
ようやく異変に気付いたようだ。
「なんか、外が騒がしくない?」
飛鳥が不安げにそう呟きながら窓から外の街を見てみる。
追い回しながら気づくと三十三階にいたのでここから窓を見るだけで街の一部を見渡せる。
「……え? な、なに? あの空……」
街の様子を見るのと同時に、飛鳥は空の異変に気付く。
――真っ黒い……
to be continued...
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