第三十話 カリミアの悲しき誕生
第三十話目です。今までずっとふざけた感じの内容でしたが今回は少々悲しい感じの話です。
……いや、やっぱり今回もふざけてるかも……
宜しければ評価やブックマークなど宜しくお願い致します。
シデリアンが鎌倉の死を喜び、狂った様に笑っていると、後ろから黒髪短髪の美少女が話しかけてくる。
「……なっ!!! 貴様は!! たった今、間違いなく、死んだ……筈!!! ほら!!ちゃんとバラバラだけど死体だって!! あ、あるぞ!!」
その美少女の正体は、たった今、氷と共にバラバラに割れてしまった筈の鎌倉であった。
訳が分からなくなったシデリアンは、焦りながらバラバラになった鎌倉の死体を確認する。勿論死体はちゃんとある。
「ど、どういうことだ!!」
「簡単よ。前に、今私のお腹の中に居る娘がやっていた技なんだけど……」
――その死体、人形なのよ。
「ぎぃやあああああああ!!!」
鎌倉がカリミアと同じ様に、死んだ筈の自分を人形だと言うと、シデリアンは魔王とはとても思えない怯え方をする。
そこで鎌倉は気付いた。気付いてしまったのだ。
「こいつ、シデリアンは、私や神々が相手でなければ相当な実力者であるが、それ以外を考えると、こんな臆病な奴は魔王に相応しくない。きっと今まで自分が圧倒的な力を持つ側だったから、逆に圧倒的な力でやられるなんてことがなかったのでしょうね……自分の力を過信しすぎた結果よ! 上には上がいるのよ。それを理解出来ない者が魔王をする資格なんてないと、私は思うわ」
鎌倉は厳しいことを言うが、実際鎌倉の言うことは正論である。シデリアンは鎌倉の言うことを否定することが出来ず、泣き出してしまう。
「う、うわぁああああああああ!!!!」
「う、うわぁ……」
千年以上生きている魔王が、まるで人間の子供のように泣き喚くのだ。鎌倉は引いてしまう……
「私の娘とヱミリア、魔界の未来のことを考えると、貴方には魔王をやめてもらうか、若しくは死んでもらう他ないわね」
「え? ちょ、ちょっと待って! やめて!! まだ、まだ死にたくない!!!」
鎌倉は普通に恐ろしいことを言う。なにも死を強制している訳ではないが、追い詰められたシデリアンは、自分が魔王であるという誇りを捨て、雑魚モンスターの様なセリフを言ってしまう。魔王なのに!
「……その、なんでも凍らせる能力は勿体ないわね。罪悪感が出てくる前に魂だけ抜き取って肉体は消えてもらうわ」
「え? い、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!! 嫌だぁああああああ!!!」
鎌倉はシデリアンを殺すつもりだ。只、シデリアンの能力は利用、いや、有効活用するつもりのようだ。紅雨神から付与された能力は、肉体ではなく魂に保存されるのだ。つまり魂だけでも無事なら能力も無事と言う訳だ。
だがシデリアンは只只管に恐怖するだけだ。流石に鎌倉の心も傷んでいく。だがもう後には引けない!
「最期に聞くけど、貴方が死んでも能力は存在し続けるわ。まあ魂を私が捕らえるから永遠に成仏出来ないんだけど☆」
「な、なんだよ」
そう、シデリアンの魂は後にシデリアンの能力を与える者の魂と融合することになるのだ。シデリアンの魂はその融合対象の魂に飲まれ、シデリアンはちゃんと成仏出来ず、存在そのものが消えてしまう。正確には、融合主の一部となるのだ。
「貴方の能力、誰にあげたい? 弟? 娘?」
鎌倉はそう、シデリアンに質問をする。鎌倉も親馬鹿であるシデリアンの回答は予想済みだ。
「決まっておろう!! 我が愛娘ヱミリアに決まっている!! ああ!! 娘があらゆるものを凍らす姿を想像すると……ああ!!! サイコーーーー!!! ムフッ!! フフフフフ! グヘェ グッへへへへへへへ」
ヱミリアは確かに食べてしまいたいくらい可愛い。しかし彼女はまだ幼い幼女。シデリアンは最早親馬鹿の域を超え、ロリコン、いや、只の変態と化してしまっている。
「未練はなさそうね。では魂剥ぎ取るわねぇ!」
「え? ちょ!!!」
バリバリバリッ!!
音はエグいが、魂というのはシールのようにベリベリと剥がれてしまうものなのだ。
「ふう、あとはこの魂をヱミリアちゃんに」
シデリアンの魂は無事、剥がれた。今鎌倉の手には、白い煙のような塊が握られている。それが魂だ。
抜け絵柄となってしまたシデリアンの肉体は、白目を向き、更に変な体勢で立ったまま静止している。
シデリアンの魂を手にした鎌倉は、能力をヱミリアに渡すべく、神護の居る部屋へと向かうのであった。
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「ハ、ハニー!! 大丈夫だったか! あの馬鹿兄貴に変なことされなかったか?」
「ハ、ハニー?」
部屋に戻ると神護が鎌倉のことをハニーと呼ぶ。それに対して鎌倉は動揺するしかない。
「ああ、君があの馬鹿兄貴に呼び出されて待っている間、ヱミリアと色々話してて、君のことはハニーと呼ぶことに決めたのさっ☆!」
「殆ど私が考えたわ!!」
「どうしてそうなった!!」
鎌倉はギャグマンガのように突っ込みを入れるが、そろそろ本題に入る。
「重要な話をするわ。これがシデリアンの魂」
「「……え?」」
二人の反応は当然である。シデリアンはヱミリアにとっても、神護にとっても血の繫がった家族なのだから。その家族の魂と言われて一発で理解出来る方が可笑しいのだ。
「この魂にはシデリアンの、「なんでも凍らせる能力」が含まれているから今からヱミリアに与えようと思うのだけれど」
「……なんで……なんで!!」
「何かしら?」
ヱミリアは父の、シデリアンの死を認めない。それに対しての鎌倉の反応は最低である。
「なんでお父様を殺したのよ!!!」
ヱミリアは泣きながら父を殺した理由を鎌倉に問う。
「……あんな、性根が腐っている駄目な奴が魔王をやっているなんて許せないわ。なにより、あんなカスを殺すのに理由が必要かしら? 要らないわよね? そんなの!!」
鎌倉はゲス顔で酷過ぎる回答をする。流石に神護も我慢の限界に達してしまい。
「ハニー、いや、てめぇ! もう今すぐ魔界から消えろ!! どうせお前なら日本へ帰ることすら可能な筈だ!!」
神護は鎌倉への愛が完全に無くなり、消えてもらうことを望む。
「ええ、元よりそのつもりよ。ヱミリアに能力を与え、そして、私の娘、縄文蓋層をここに産みの子残したら直ぐに消えてやるから安心なさい?」
鎌倉はそう、不敵な笑みを浮かべながらヱミリアに近づいてゆく。
「い、いや、来ない…で……」
元々泣いていたヱミリアは、更に泣き、地面にうずくまてしまう。
「や、やめろ!! 鎌倉ァ!!」
ヱミリアに近づく鎌倉を、神護は全力で止めようと本気で鎌倉に殴りかかる!
「許さんぞ!! もう死んでしまえ!!」
バァゴォオオオオオオオオン!!!!
神護の拳は鎌倉の頭部に直撃し、その力は床にまで伝わり、床に巨大なクレーターが出来る。
だが鎌倉にはノーダメージだ。
「良いわね、家族愛と言う奴かしら? でもそんな攻撃、自分の城を傷つけるだけよ!!」
そう言って鎌倉は神護の腹部に軽く肘打ちをする。
ズガァッ!!!
「ぐヴぉあっ!!!」
軽く肘打ちをしただけなのに、腹部に肘が当たった際にエグイ音がし、そのまま吹き飛び、城の壁を突き破り、約一キロ程飛ばされてしまう。
「叔父さん!!!」
ヱミリアは絶望し、もうどうしたら良いのか分からなくなり、只只管に恐怖に怯えることしか出来なくなってしまった。
「さあヱミリアちゃん。この魂をあなたの魂に取り込むわよ」
「う、う…ん」
何も考えられなくなったヱミリアは、もう全てを諦め、鎌倉の言われるがままになる。
鎌倉はヱミリアの首筋に優しく手を添え、手を添えていない方の手に持っているシデリアンの魂をヱミリアの体に翳すと、そのままヱミリアの体に吸い込まれていく。
「んっ♡ んぁあああああああああ♡」
突然外部から魂が自分の中に入り込んできたのだ。得られるのはなんでも凍らせる能力だけではない。シデリアンの全てだ。魂には全てが記録されている。戦闘ステータス、知識。或いは、シデリアンの前世のことも全て、シデリアン本人も気付いていないシデリアンの全てを、ヱミリアは得ることになるのだ。そりゃああんな誤解されそうな声も出る訳だ。
「か、可愛い」
色っぽい声で叫んでいるヱミリアを見た鎌倉は、思わず可愛いと口を滑らせてしまう。
「その魂には、シデリアンの全て、文字通り全てが入っているわ。何も、不自由なんてない筈よ。その気になりさえすれば、今すぐにでも魔王になれてしまうくらいにね」
鎌倉はヱミリアに魂に含まれているものの説明をするが、最高の快感に包まれているヱミリアには何も聞こえない。
「あの、神護、あなたの叔父は役に立たなさそうだから、優秀な部下をあげるわ。私の体よ、十か月の時を飛びなさい」
鎌倉がそう唱えると、言葉通り、鎌倉の体は十か月後のものになる。妊娠している腹がピークになっているのだから間違いない。
「このまま。アポート!!」
アポート、あらゆる物を自分の元に取り寄せる超能力だ。上手く使えば生き物だって取り寄せることが出来てしまう。
そのアポートで、鎌倉は自分の膣内から赤ん坊を取り出した。
「オンギャアアアアアアアアアア!!!」
赤ん坊は初めて空気を肌に触れ、呼吸をする訳だが、それらに慣れるためにこの赤ん坊も泣く。人間と魔族のハーフだから泣かなくてもいいとかは無いのだ。この工程は必須なのだ。
「あなたの名前は、縄文蓋層。でも、ヱミリアちゃんも、神護も、私のことを相当恨むと思うから、きっと別な名前が必要ね。ヱミリアちゃんから名前も貰いなさい? 表向きはヱミリアちゃんから貰った名前で居て? だけど、あなたの本当の名前は、縄文蓋層。これだけは、覚えておいて、ね?」
こうして、縄文蓋層は産れ、ヱミリアさえも、誰もカリミアの本当の名前を知らなかったのは、こういうことなのだ。鎌倉は最後の方、泣きながら赤ん坊の蓋層に必要なことを伝えていた。その内容は、蓋層はちゃんと理解出来る。蓋層の魂には、鎌倉の記憶の一部を付与してあるのだ。全て、理解することが出来る。
因みに、この時ヱミリアは最高の快感に包まれていたので鎌倉が蓋層に伝えたことは何一つ知らない。
「最後に、最低な私だけど、また、逢いたいな……」
鎌倉は号泣しながらまた逢いたいと、ヱミリアと蓋層に告げ、城を後にしていった。
――私は知っている。これからこのディープレッドワールドで起こること全てを、記憶している。あなたはヱミリアにカリミアと名付けられ、魔王城の仕事をほぼ全て任されるまでになるわ。
――こうするしか、なかったのよ。
to be continued...
最後まで読んで頂きありがとうございます!
良ければ第三十一話目も宜しくお願い致します!




