第二話 スライムを乾燥させる
第二話です。
もしよろしければ評価など頂けると幸いです。
ドォオオオゴゥオオオオオオオオオン!!!!!!! 凄まじい音を立てながら水晶みたいなやつが爆発する。
「えええ、割れると思ってたらまさかの爆発って! しかもこの爆破範囲は……魔力一万ってヤバいのかな? 取り敢えず能力で元に戻そう、爆破してしまったこれを元に戻すことが私の願い。あ、目撃者とか面倒臭いから時間そのものを戻そ!」
シュウウウウという音と共に時間が巻き戻って行く。
水晶みたいなやつに魔力を流し込んだら、魔力が膨大すぎたが故に、爆発が起こり取り返しのつかないことになってしまったので、弥生は時を三分前に戻した。
『ばやぐじなざい!!』
「あ、ここに戻るのね」
戻ったタイミングはあれだが、取り敢えず今度こそ爆発させないようにしなければならない!
「ねえ、やっぱり測定しなきゃ駄目ですか?」
「駄目です、今更何言ってんすかエルフの小娘!」
「あ、私そう言えばエルフになったんだった、なんか忘れるんだよなあ」
「早く測りなさい!」
そう言いながらお姉さんは、無理矢理弥生の手を水晶みたいなやつに乗せてきた。
「あっちょ!」
ドォオオオゴゥオオオオオオオオオン!!!!!!!
案の定水晶は、弥生の魔力に耐え切れなくなり、半径五十キロメートルが焼け野原となってしまった。完全に同じ結果だ。しかし、取り敢えずまた時を戻すしかないので弥生はまた三分前に時を戻した。
『ばやぐじなざい!!』
「いいんですかあ? 私が水晶に魔力を少しでも注ぎ込んだらここから半径五十キロメートルが滅びますよ?」
「は!!! なんだこの記憶は!!」
弥生はさっきと同様、時を三分前に戻したのだが、受付のお姉さんの記憶はそのままで。これで受付のお姉さんは弥生の恐ろしさを理解出来た筈だ! ついでに一回目の爆発の記憶もある。つまりお姉さんには二度爆破で死んだ記憶があるのである。弥生、鬼畜だな(笑)
「あなたの記憶だけそのままにし、三分時を戻したのです。これでわかったでしょう? 私が魔力測定するだけで大勢の人が死ぬ。」
「……わかりました、でも一つ聞いて良いでしょうか?」
「なに?」
「何故爆死した記憶が私に二つもあるんでしょう?」
「だって二回やり直してるからね」
「怖いですマジで」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「では、縄文弥生さん、こちらの冒険者カードとか言うやつ、身分証明証にもなるんで失くしたらもう国に帰ってこられません(笑)(笑)で、あなたはZランクからのスタートになります」
「FとかGランクからじゃなく! Zから!?」
「はい、冒険者ランクはZZZZZランクからSSSSSS×999999999E+99999999999ランクまであり」
「このランク分け考えたのって、ギルドマスターかな? 只の馬鹿じゃないかしら?」
「はい、このランク考えたのギルマスです。ついでに只の馬鹿です。」
弥生は現在、受付のお姉さんから冒険者についての説明などとされていたが、突っ込みどころ満載すぎた(笑)
「まあそんなことはどうでもいいわ、依頼を受けたいんだけど……」
「ごめんなさい! Zランクの依頼ってないんです」
「じゃあYランクの依頼は? 一個上のランクの依頼ならいいでしょ?」
「依頼はFランクからしかありませんから」
「結局Fからなのね。ってそれじゃあFランクからでいいじゃない!! なんでG〜ZZZZZまでランク作ったのよ!!」
結局弥生は、受付のお姉さんに頼んでランクをZからFに引き上げてもらった。結構あっさり引き上げてくれて、能力を使う必要すらなかった。
そして、弥生はFランククエストであるスライムの討伐を受け、街の外へ出て行った。
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「おお、あのゼリーみたいな塊がスライムねきっと! ああでも、服とか溶かすのかなあ、なんか興奮してきたわあ!!」
異世界と言えばスライム! スライムと言えばゲームか異世界! という感じなので、異世界に憧れていた弥生が興奮するのも無理はない。
「まず殴ってみよう! 死ねい!!」
弥生はスライムを殴ったのだが、「ボヨンッ!!」と言う音を立てて全くダメージが通った感じがしない。
「ええ! 効いてない? 打撃が駄目なのかな? だったら!! 『創造!』」
弥生が剣が欲しいと願うと、気がついたら右手に剣が握られていた。殆ど創造魔法のようなものなので、弥生はさっき「創造!」と叫んだのだ。
「これで粉微塵にしてあげるわ! 今度こそ!! 死ねい!!!」
今度は「ブヨッン!!」と言う音を立てたが、相変わらずスライムは全くの無傷だ。
どうやらこのスライムは、柔らかすぎて斬れないようだ。きっと物理攻撃は全て駄目なのだろう。
「まさか剣すら刺さらないなんて! でもこれならどう?
喰らえ!『内臓爆発』!!!」
弥生は、「このスライム内臓から爆発すれば良いのに」と願う、するとその通りボォグオオオン!!! とスライムは内臓から破裂し、(スライムって内臓あんのかな?)スライムの肉片が半径三十メートルに渡り、飛び散った。
「ふふふ! 今度こそ倒したわね!」
ずずズズズ!!
なんか気持ち悪い音を立てながらスライムの肉片が集まってきた!
「え? 嘘、でしょ……」
そして、スライムは復活! おまけにHPも最大に戻っている!
「な! 元に戻った! 大人気漫画の魔人じゃないまるで!」
ドロドロ! と音を立てながらスライムは弥生に近づいてくる。
「え! なに!!」
スライムは弥生にくっ付き、離れない!
「やめてやめて! こういうのはゴブリンが、ああああ! なんか服溶け出したああ!! しかもなんで両胸一箇所ずつと又一箇所だけ綺麗に溶けてるのおおおお!!! あ、あ、そこ、は! はう! らめっ! ああああああ!」
もしかしたらこのスライム、自我があるのかもしてない。それとも生物的本能? まあどっちにしろ、弥生のすることは一択のみ!
弥生はシュッ! と瞬間移動でスライムの拘束から抜け出し、すぐさま反撃しようと、取り敢えず凄い炎を創りだし、スライムを焼いた。
ゼリーみたいなやつなんだから水分を奪えばカピカピになる筈である。
「やったわ! スライムが思った通りパサパサに乾いてくれた! でも、スライムって最強なんじゃない? 普通のFランク冒険者だったら勝てないと思うんだけどなあ」
弥生はスライムが何故こんなにも強かったのか気になっていたのだが、実は、単に弥生が強いモンスターと戦いたいと、無意識のうちに願って、それが勝手に叶ってしまったのだ。弥生はその事実に気付くことはなく、もう十匹くらい、同じ様に乾かしていった。
「そう言えばなんか、討伐を証明出来るものが必要なんだよね、でもよくわからないから乾いたスライムそのままもってこっと」
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「ナンデスカこれ!」
本来、スライムを討伐したことを証明するには、スライムの肉片とかで良いのだ。そこにパッサパサに乾燥してしまった可哀想なスライムを持ってきたのだから「ナンデスカ」という反応も当然である。
「何? って乾燥したスライム十一匹ですが? 金に換えてくれるんでしょ?」
「スライムを乾燥って、え? は? 意味わかんないんですが」
受付のお姉さんが混乱するのも当然、乾燥したスライムを持って来て「金に換えてくれるんでしょ?」などと言ってきた冒険者は、冒険者ギルド設立史上初めて、前代未聞のことだったのだから。
「ええと、弥生さん」
「なんでしょう?」
「乾燥したスライムにどれほどの価値があるのか分からないので、上の者に確認を取って来ますので少々お待ちを」
「(能力で直接金に変えてもいいけど、まあ一匹目は苦労して倒したから少しくらい待っていいかな……)」
〜十分後〜
「やあやあ! 君かい? スライムをカッピカピにしてくれたのは アッハハッ! 私はギルマスの「エディアカラン」だ! よろー」
頭のネジが外れていそうなゴツいジジイが出てきたと思ったら、こいつがギルドマスターだった! いや寧ろ納得か、こいつが冒険者ランクをZZZZZランクからSSSSSS×999999999E+99999999999ランクまで設定したのだから!
「あ、私人間の縄文弥生です。宜しくお願いしまぁーす」
「ん? その立派な耳、エルフに見えるが? 本当に君は人間なのか?」
「あ! エルフになったこと忘れてた!!」
「君、もしかして日本から来た転生者かな?」
「あ、そうです。まあそんなことはどうでも良いので! 乾燥したスライムは! どうですか? いくらで取引されますか?」
ギルドマスターのエディアカランは驚くことに、弥生が転生者だと言い当てた! しかも元いた国の名まで! それに対して弥生は何故か全く驚かず、どうでもいいと言い、乾燥したスライムの方を優先させた。
「うん、これはねえ。凄いよ、何かに使えそうだから十一個合わせて十万で買い取ってあげよう」
「ええ! そんなに高くていいんですか! しかも通貨は「円」なんだ!」
「ああ、新しいアイテムと言うことになるからね、だからこれは貴重なんだ、スライムを乾燥させるなんて馬鹿な発想普通しないからねえ、グハハハハ!!」
「さりげなく少女を罵倒するなんてサイテーなジジイね!」
弥生は若干キレながら、さっさと十万円を受け取って冒険者ギルドを後にした。
「ええと、次は宿屋探しかな? 寝るところが無いのは困るし」
弥生はさっき、ギルドで宿屋の場所を聞いておくべきだったと後悔するが、今日はもうギルドマスターの顔なんて見たくなかったので、そのまま自分で宿屋を探すことにした。
まあいざとなれば、弥生には願いを叶えるチートがあるので別に焦ったりなどは全くしていない。
もしこのまま宿屋を発見出来なかった場合は、宿屋に瞬間移動するか、時を七時間程進めれば良い。
「お、嬢ちゃん見ない顔だね? どうだい? よかったらワシと食事でも、大丈夫、食事に媚薬とか入れたりしないから。安心してワシについておいで」
弥生に話しかけて来たのは、文字通り「只の変態糞爺」だ。
気持ち悪いので弥生は無視したのだが、この変態糞爺はしつこくまとわりついて来た。
「うるさいし邪魔よジジイ!」
「ほおおおおおお!!!! 少女に罵って貰えるなんて最っ高じゃあ! もっと! もっと罵ってくれい! ぐっふっふっっf」
弥生はキレてジジイを罵倒したが、このジジイは超ドMだったのだ。逆に喜んでしまった。
「仕方ない、人間に対して能力は使いたくなかったけれど、あ、大丈夫か、あなたみたいな変態は人間じゃあなくどちらかと言えば「妖怪」だものね!」
「おおお! 最高最高最高最高最高もっと罵れええええええい!!!!」
『ドライアイにでもなれば良いのに』
「ぐっぐわあさあああああああ」
弥生のその一言で、ジジイはドライアイとなった。願いを叶える力、恐るべき能力だ。
「乾く! ああ乾くううううう! 畜生なんてことしやがんだこの餓鬼いいい」
ジジイはドライアイに苦しむ、因みにこの世界にドライアイ等一部の概念が存在しなかったりする。この世界でドライアイになった者はおそらくこのジジイが最初だ。
「またウザくして来たら、次は鼻の水分を奪っちゃおうかな?」
「やめてくれええええええ」
ジジイは叫びながら走って何処かへ消えていった……
「さてと、宿屋探し再開しようかな。あ、さっきのジジイに宿屋の場所吐かせればよかったかな。惜しいことをした」
そして、五分程歩いたら宿屋が見つかった。
「あ、あった、何々? 「ラヴホ」? なんて名前つけてんのよ!!」
この宿屋は、入り口のところに宿の名前が書いてある。そこに思い切り「ラヴホ」と書いてあるもんだから、危ない、なんて店名にしてんだよ!
弥生は怪しみながらも、今夜は此処に泊まるしかない訳なので覚悟を決めて「宿・ラヴホ」へ入店していった。
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「此処がラヴホ……なんて言うか、普通の場所ね」
弥生は「絶対この宿ヤバい」と思っていたのだが、実際入ってみると極普通の宿屋だった、少なくとも今のところは……
「すみませーん」
弥生の警戒心は完全になくなり、日本に居た頃の様に気軽にカウンターに居た宿娘に話しかけた。
「はい。宿泊ですか? お食事ですか? そ・れ・と・も!」
「貴女まだ中学生くらいでしょ? 簡単に身体を他人に預けたりしちゃあだめよ?」
弥生はこの流れでくると最後は「私」とか言うんじゃないかと思い、年下に優しく言う感じで注意した。一言で言うと、エロに落ちるなということだ。
この娘の見た目はぱっと見JCくらい、水色の長い髪に透き通った瞳と肌、若干エロい制服、そして、膨らみかけの胸が最高だ!!
こんな超絶可愛い容姿なんだから、男なら誰一人として理性を保つことが出来ないであろう。女である弥生でさえこの娘を抱き枕にしたくて仕方ないのだから。
「?? なんで他人に身体を預けちゃ駄目なんですか? あとJCってなに?」
この娘は純粋な様だ、その為今まで沢山の男共に騙されてきたのだろう、可愛そうに……
それと、この世界に「学校」等と言う概念は存在しない、なのでこの娘が「JCって何?」となるのは当然だ。
「ああ、JCは気にしないで? それで! 体を知らない人に預けちゃいけない理由だけど、騙されて酷いことされるかもしれないからよ! わかった?」
「うん! わかりました“お客様”!」
「私のことはお姉様とお呼びなさい!」
「分かりましたお姉様!」
本当に純粋なんだなこの娘(笑)
「あ、そう言えばあなた名前は?」
「私の名前は「シルル・デヴォン」ですお姉様!」
「古生代の名前? シルル紀とデボン紀のこと? そう言えばギルマスのジジイ、エディアカランって新原生代の最後の名前だった。確か6億2000万年前から、カンブリア紀の初めまでだから……5億4200万年前だったっけ? ヴェンド紀とも言われているからあいつの下の名前ってもしかしてヴェンド? ヴェンド・エディアカラン?」
「お姉様?」
「あ、ごめんね!」
シルルには弥生が何を言っているのか理解出来ず、取り敢えず「お姉様?」と呼んでみる
それに対して弥生は優しい声で、「ごめんね!」と、ちゃんとお姉様している。
その光景は、宿に居る他の客を和ませた。今更ではあるが、弥生も結構可愛いんです。
「お姉様、本日はどうされますか?」
「そうだねえ、シルル、夕食と朝食付きで一泊お願い出来る?」
「分かりました!」
たった一言だけだが、今の「分かりました!」と言った瞬間のシルルは、心の底から嬉しそうにしていた気がする。
弥生は、この笑顔を生涯忘れることはないだろう。
何故かと言うと、シルルは「お姉様」等と親しく呼ぶことの出来る相手が今まで居なかったのだ。だから初めて弥生という「お姉様」が出来たことが、言葉にならない程嬉しかったのだろう。
弥生はその笑顔に感動してしまったのだ、別に能力でシルルの事情を知ったわけではない、只、なんとなくこの娘にはそう言った事情があるのだろうと思っただけなのだ……
to be continued...
最後まで読んで下さりありがとうございます!
宜しければ第三話も宜しくお願い致します。