第十話 想い人との感動の再開とかいうヤツ
第十話です。第一話に登場した明治大正が格好良く再登場します。
良ければ評価など宜しくお願い致します。
「シルル、私、目標が出来たの」
「目標……ですか?」
弥生の顔がマジになる。シルルはこれほ程本気の弥生を見たことがない。
「ヱミリア・エクタシィをぶっ倒す!! そして飛鳥のこと洗いざらい話させる!!」
~冒険者ギルド~
ヱミリアとの戦いの後、当初の目的であったゴブリンは跡形もなく消し炭になってしまったので、弥生とシルルは取り合えず冒険者ギルドへ戻ってきていた。
「あ~えーと、弥生ちゃ、じゃないや弥生さん。何かゴブリン討伐を証明出来る物がなければ残念ながらクエスト完了には……」
受付のお姉さんも、隠していて誰も知らないが実はドMで、弥生のこと大好きなので弥生ちゃんと言いかけるが仕事なので、それに弥生に自分の気持ちがバレる訳にはいかないのでしかたなく「さん」付けにした。
弥生のことが大好き、いや、最早愛してるレベルなので討伐の印なんてなくてもゴブリンを討伐したと言う、愛する人の言葉を信じたい気持ちは山々なのだが、寧ろサービスしちゃいたいくらいなのだが、上の者、例えばギルドマスターのエディアカラン等にバレると受付のお姉さん失格にされてしまうのだ。受付のお姉さんは仕方がなくゴブリン討伐の証を弥生に要求する。受付のお姉さんの心は痛む一方だ。愛する弥生ちゃんを自分の手で困らせてしまうのだから。
「お姉様、どう致しますか?このままではクエスト失敗扱いされ、罰金が発生してしまいます。しかも今後このクエストを受けた人は世界中探してもゴブリンを発見出来ないのでその人たちも私たちと同じ運命を辿ることになり、普通の冒険者だったとしたら破産して生きていけないでしょう。最終的には犯罪に手を出すか、若しくは自殺するでしょう」
「そ、そこまで考えてたのねシルル……」
「そうです! なので何としても罰金を払ってはいけません! 討伐の証を提出しなければならないんです! どうしましょう? 街でゴブリンの鼻とかって売ってないですかねえ?」
「あの~、そういうズルい話。私に聞かれちゃまずいんじゃあない? (っていうかこのロリめ! 私だって弥生ちゃんともっと仲良くしたいのにぃいいい!! やっぱり、そうなのね、弥生ちゃんは、小さい女の子の方が良いのね。可愛がられるより可愛がる方が良いのね……)」
シルルは色々焦り過ぎており、受付のお姉さんは豊かに妄想を膨らませている。
「はあ、まあ取り合えず、『ゴブリンレイン』!!」
ヴォオオン!!
受付のお姉さんの頭上に魔法陣が現れる。召喚陣の様だ。
ドサドサドサドサササササ!!!!
その魔法陣からはゴブリンの死体が雨の様に降ってきた。これは弥生の能力によるものだ。ゴブリンの雨が降ればいいのに、(受付のお姉さんの頭上限定で)弥生はそう願ったのだ。「ゴブリンレイン」と言うのはそういう意味だ。
「お、お姉様、これは……」
「う、うぐ、くちゃい、うう、苦し、息が出来ないいいい! 助けて弥生ちゃん!! たすk、タスケテ! タスケテ! タスケテ! タスケテタスケタタスケテタタケスケテ、タスケテ、ヤヨイチャン……」
「こわあああ!!!!!!!! ま、まあ取り合えず! 受付のお姉さん!! これで討伐は証明できたでしょ? 報酬は勝手に貰ってくから貴女はギルドマスターにでも助けてもらえば?」
弥生ですらこの受付のお姉さんに相当恐怖するようだ。
「ギ、ギルドマスターハ、コンヤハ、カエッテコナイィ……」
受付のお姉さんの声はもはやゾンビと化している。
「ひぃっお姉様、わたし、う、うぅ。わたしぃ、こういう怖いのだめなんです! ううぅ……」
ゾンビ化(笑)した受付のお姉さんは恐怖そのものだ。能力のお陰で宇宙最強となった弥生でえ身の危険を感じるのだからシルルが恐怖するのも当然だ。
「あ、ええと、シルルは外で待ってて? 報酬勝手に取って来たらすぐ行くから!」
「はい……分かりました」
~冒険者ギルド入り口周辺~
「ふう、まだかな~お姉様、あれ怖すぎですぅ……」
いつの間にかすっかり日は沈んでいた。シルルは弥生に言われた通り、冒険者ギルドの外へ出ていた。
正直あれ以上中にいたら確実に泡吹いて気絶していただろう。
「おお! これはこれは、シルルちゃんじゃあないかい! こんな時間に一人で居ちゃあ危ないねえ。僕が送って行こうか?」
シルルに話しかけてきたのは中々い感じのイケメンだった。でも中身は変態だ。全くこの街には変態しかいないのだろうか?
「いえ結構です。私お姉様を待ってるんです!」
「君のお姉さんって確かあの殺人姫」
いつの間にか弥生は殺人姫等と呼ばれるまでになっていた。そしてこの変態、シルルは無力の女の子だと思っている様だ。それも当然。シルルが特殊能力持ちだということを知っているのは紅雨神さまと、一緒に居た信者(何処の誰かは不明)と弥生とヱミリアだけだ。シルルがビスケットを食べるだけでこの変態は追い払うことが出来る。
ガシッ!
何ということだ!! シルルの両手は変態に捕まってしまった。これでは能力入りの料理を創って食べることが出来ない。シルルは手を使わなければ能力が使えないのだ。訓練すれば口の中にクッキーを創造してそのまま食べることも可能なのだが、今のシルルにはそんな器用なことは出来ない。元々戦うために能力を貰った訳ではないのだから。
「うう、やめ……て……」
「うっひょおおおおおお!!! くぁああああわいいねぇえええええ!!!! 何この幼女!! 可愛い! 可愛いすぎんだろ! ああここで襲って終わりなんて勿体ない! お持ち帰りしよっと」
「え? うそ、やめて! そんな! やめて!! 助けて!! お姉様ああああ!!!」
「おい、楽しいか?」
突如謎の男が現れた。男がか弱い女の子を虐めていることに対して相当怒っているようだ。
「ああ?」
『そんな女の子虐めてよぉ!!』
バギャアアアア!!!!
「うぎゃあああああああ!!!!」
ドォゴッオオオオオオオオン!!!!
ガラッ パラパラ……
男は相当怒っていた。だが相当冷静だった。今変態を殴りつけた時も殆ど力んでおらず、軽く殴りつけた感じだった。しかしそれで民家を貫くなんてとんでもない奴だ。
「あ、あの、助けて頂き、ありがとう……ございます」
「礼なんていいよ、俺は当然のことをしたまでさ、俺の名前は明治 大正。気軽に大正で良いよ」
明治大正、そう、彼は弥生の前世のクラスメイトだ。それが何故この世界に居るのか、何故それ程の力を持っているのかは今は謎だ。
「わ、私はシルル・デヴォンです。宿屋で看板娘やってます……(なんでだろう、私、私が好きなのはお姉様だけ、それなのに……私、このひとのことが……)」
ドクン、ドクン(シルルの心音)
ああ、なんということだ、シルルは大正に惚れてしまったようだ。一目惚れなんて、しかし、弥生に惚れたのも一目惚れだった。シルルは意外と惚れやすいのかもしれない?
「お待たせシルル。見て! 三百年間放置されてたクエストってことでこんなに報酬サービスして貰えちゃったよ! 受付のお姉さんゾンビになりながら報酬もっと持ってって良いって言ってくれたのよ! 気が利くよね~最も、受付のお姉さんは放置だけどねぇ」
報酬をとって弥生が戻って来た。それと同時に大正がとてつもなく驚いた顔をし、死んだはずの、もう絶対に二度と会えないと思っていたクラスメイトの名を呼ぶ。
『じょ! 縄文さん!!!』
「え?……うそ……あなたは……」
弥生も驚いた顔をする。当たり前だ、弥生だって飛鳥を初めとし、元の世界の友達とはもう二度と会えないと思っていたのだから……
「あなたは……」
「縄文さん……まさか、この世界に……うっ!」
大正も涙を流し始める。
「え? なんですか? なにがどうなってるのですか??」
シルルには当然この状況は理解できない。
そして、弥生は大正の名を口にする。
「あなたは、確か!!
『名刺 代償君』!!」
『明治大正だ!!! 縄文弥生!!!』
「あらごめんなさいね明治くん!また間違えちゃったわ」
「またってお前なあ、感動の再開が台無しだろうが!!」
どうやらこの二人、割と仲が良い様だ。
「あ、あのぉ……お姉様と大正さんってどういう……」
『お姉様!?』『大正さん!?』
弥生と大正は、シルルからの呼ばれ方に驚く。
え? 縄文さんってこんな可愛い妹さん居たの?
え? なんで明治君がシルルに「さん」付けで呼ばれてるの?
『『なんで!?』』
遂には「なんで!?」とハモった。
to be continued...
最後まで読んで頂きありがとうございます!
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