表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/91

カオスなプロローグ

主人公の幼少期です。本編からは第一話から始まります。


もし宜しければ評価など頂ければ幸いです。

――運命と言うものを否定するというのならば、これから起きる物語に説明を付けることは不可能だ。


 西暦20XX年。ここは三次元の日本とは歴史が若干異なるパラレルワールドの日本だ。


 とある、ブランコと滑り台と水道管が剥き出しになっている危険な砂場しかない小さな公園に、二人の少女と少年が一人いた。三人共十歳くらいだ。


「フハハハハ! クルァエ(食らえ)エエエ!! 『運動靴飛スポーツシューズフライ』!」


 少年は絶賛戦闘漫画にドハマり中。調子に乗ってブランコに乗りながら勢いをつけ、技名を叫びながら自分の履いていた運動靴を飛ばす。


「痛ったぁ! 痛いよぉ……」


 見事目の前にいた少女の額にヒット! バチンッ! という痛々しい音と共に。

 この少女は気が弱く、運動靴が額にヒットしてから一秒もしない内にシクシク泣き出してしまった。


飛鳥(あすか)! お前許さないわ!」


 もう一人の少女は気が強くて仲間思いだ。親友である少女を泣かせたさせたことに対して相当腹を立て、性格の悪い生意気な少年と口喧嘩になってしまう。


「んだとぉ! ここは俺が占領する! お前ら邪魔なんだよ!」

「馬鹿なの?」


 少年が少女に靴をぶつけた動機はなんとも自分勝手で頭が悪そうなものだった。少女は馬鹿なの? としか言いようがない。


「あら、やっぱり人間なんてどの世界でも性根が腐っている馬鹿の様ね」

「ヱミリア様。トラブルの元になります故、無駄な喧嘩は避けて頂きたく存じます」


 少年と少女が口喧嘩をしている中、角の生えた紅髪の偉そうな十歳くらいの少女と付き添いの角の生えた黒髪で十二歳くらい。そして何故か気の強い少女とそっくりな顔をしている少女がこんな何もない公園に現れた。


「なによあなたたち!」

「そうだぞ! 俺たちゃあ今戦闘中なんだ! 邪魔すんなコスプレちゃん!」

「こ、ここ、コスプレちゃん……ですってぇ!?」


 しかし少年の言ったことは正しいのかもしれない。

 紅い地毛に本物の角。普通の人間が見たらコスプレだと思うだろう。


「ヱミリアさま。一般の日本人は異種族を見たことがないのは勿論、存在すら空想のものと考えておりますのでコスプレしていると思われても仕方ないかと……」

「そ、そうね。魔王のくせに大人気なかったわ」


 紅髪の少女は自分は魔王だと言っているが、人間の少年と二人の少女は、自分のことを魔王だと思っているイタイ奴なんだなぁ~可哀想に(笑)と思った。


「ところで、そこの娘はどうして泣いているの?」


 自称魔王の少女が靴を投げつけられて泣いてしまっている少女に気付く。


「この最低屑男が私の親友を泣かせたのよ! 許せないでしょ?」

「そうね、それが本当ならお前は死ぬべきよ!」


 気の強い少女と魔王少女が意気投合してしまう。このままでは性格最低少年の命が危ない!


「ヱミリアさま! 分かっているかと思いますが、下らない争いは……」

「死ぬがいいわ! 『黒炎弾ブラックフレイムバレッド』!!」


 付き添いの少女が魔王少女に争わない様注意をしたが、魔王少女は聞く耳を持たず、魔術で性格の悪い少年を攻撃する。

 尚、魔術の技名はそのままの意味だ。


「うわぁっ! なになになになになに!?」


 突如魔王少女の掌から黒い炎が弾丸の如く飛んできた。十歳の少年に弾丸と同じ速度で飛んでくる黒い炎を回避すること等普通は不可能と言っても良い。しかし少年は火事場の馬鹿力で素早く黒い炎を回避することが出来た。その代わり地面に落とし穴程度のクレーターが出来上がった。威力は一般的な銃より勝ると言う訳だ。


「な……人間の癖に、私の魔術を避けるなんて……」

「な、なに今の……魔法?」


 魔王少女は自分の魔術を人間に避けられるなんて有り得ないと驚いているが、気の強い少女は口を開いて唖然としている。突如目の前で超常現象がハッキリと起こったのだから当然だ。


「な、んだよ! て、てめぇ、どういう理論か知らねえが完全に殺しに掛かってきてるだろ! 殺人未遂だぞ!」

「うぅ……な、なに今の……怖い、怖いよぉ……」


 なんとか生き延びたものの、恐怖で全身がガクガクと震えている最低少年は元から大して無かった冷静さを完全に失い色々と叫んでいる。

 元々泣いていた気の弱い少女は、魔術と言う恐ろしいものを目の当たりにして恐怖し、少年の怖い叫び声で更に泣き出してしまう。声は出さずにシクシクと。


「ヱミリアさま! 争いはいけませんとあれ程言いましたのに、攻撃魔術なんて馬鹿ですか!?」

「――! そ、そういえば何で私にそっくりなの?」


 言いつけを守れない主人、詰まり魔王少女に付き添いの少女は怒り、主人馬鹿呼ばわりし、気の強い少女は魔王少女の付き添いの少女の顔が自分とそっくりだと言うことに今更気付き、混乱する。恐らく最低少年への怒りで周りがあまり見えていなくて気付かなかったのだろうが、叫ぶ少年、魔術を使う少女、ずっと泣き続けている少女、自分とそっくりな顔が目の前に居ることに今更気付き混乱する少女、主人を馬鹿呼ばわりする少女。そして小さなクレーターが出来てしまったこの小さな公園は、たった数分の内にカオスとなってしまった。通行人たちは皆「やべーあの子たち、関わらない様にしよう」「何も見なかったことにしよう」等と思いながら速足で遠くへ去って行く。


 ~~~~~~~~~~~~~


 十分後、公園内はまだカオスだった。十分前と何一つ状況が変わっていなかった。寧ろ凄いと言っても良いのではないだろうか?

 しかし、この少年少女たちはもうお仕舞いかと思われていたその時、救世主が現れる。


「ほら、いい加減に落ち着いて下さいよ」


 突如公園に現れ、声を掛けてきた十代後半くらいの少女は、水色のロングヘア―にGカップくらいの巨乳でこの世の者とは到底思えない程の美少女であった。


「「「「「――!」」」」」


 彼女の美貌に驚いた少年たち五人は一斉に黙る。


「……あ、あの!」


 美少女に惚れてしまった少年は、勇気を出して美少女に声を掛けてみるが、美少女は無視して気の弱い少女の元へ行ってしまう。


「……もう、大丈夫ですよ。古墳飛鳥さん。額の傷を見せて下さい」


 気の弱い少女の名前は古墳飛鳥。初対面の筈の美少女は何故かその名前を知っていた。

 だが飛鳥は何故か不思議に思わなかった。このお姉さんは信頼できて安心出来ると、何も根拠は無いけれど、そう確信して、少年の靴が当たって出来た額の傷を美少女に見せる。


「これは……まだ十歳の少女が負う酷いですね。あの少年にやられたのでしょう? お姉さんには分かります」


 美少女は少年を睨みつけながら、どういう手品を使ったのか、手から飴玉を創り出し、飛鳥に差し出す。


「これを食べればその傷が完治します。知らない人から何か物を貰うなと言われていますか?」

「い、言われてるけど、けどね! お姉さんのことは信じてるから、その飴玉下さい」


 子供なりに頑張って気持ちを伝えた飛鳥は飴玉を口に入れる。そして、飴玉をある程度舐めていると、次第に額の傷が消えていく。


「――!! え? い、痛く、ない……」


「え? 飛鳥の傷が」

「な、何者なんだよあいつ!」

「魔術かしら? こっちの世界に使える人間居たのね」


 さっき魔王少女の魔術を見たにも関わらず、飛鳥や他の少女たちも驚く。恐らく超常現象にはまだ慣れていないからだろう。慣れないうちは何度見ても驚いてしまう。


「私の名前はシルル・デヴォン。大正(たいしょう)くん。弥生(やよい)さん。飛鳥さん。ヱミリィ。カリミィ。また、会いましょうね」


 そう言いながら美少女のシルルは公園の出口へ向かう。


「ま、待って!」


 少年、大正がシルルを引き止める。


「何かしら? 大正くん」

「また、会えますか?」


 シルルは再び歩き出しながら答える。


「勿論。望まなくても、数年後には出会ってしまうのですよ? そう言う、運命なのです……」


 そう言いながらシルルは公園を後にした。


「……好きです! シルルさん!! 俺が大人になったら、その時は!!」


 好きだという気持ちを伝え忘れてしまった大正は、公園から離れていってしまったシルルに届くよう、好きだと叫んだ。

 それに対してシルルは心の中で答える。


――私が好きなのは、成長して勇者となった貴方よ。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 公園から少し離れた歩道橋で、シルルの彼氏が待っていた。


「待ってくれてて嬉しい♡ 大正!」


 運命というものは、本当に存在していて、改変は至難の技だ。運命は、もう既に決まっているのだ。

最後まで読んで下さりありがとうございます!


宜しければ次回も宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ