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人間不信の冒険者達が世界を救うようです  作者: 富士伸太
一章 サバイバルは剣の輝き
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聖剣探索 3


 1階から地下3階までは、同じウッドゴーレムが出てくるだけだった。

 ただし、1体ずつ増えていった。

 すべてカランが燃やした。


 そしてサバイバーの4人が地下4階に足を踏み入れると、ようやく様子が変わってきた。


『グオオオオ……!』


「今度はブロンズ製のゴーレムですね。中層は金属系のゴーレムが現れるそうですが……」


「……これ、持って帰っちゃ駄目なの? 銅でしょ?」


 ティアーナがブロンズゴーレムを眺め、もったいなさそうに尋ねた。

 青錆び一つなく黄銅色に輝くボディは、きっと鋳造や彫金を嗜むドワーフに高く売れることだろう。


 だが、


「駄目というか、無理ですね。持ち出そうとすると扉が開かなくなるんです。せきゅりてぃ機能? とか言うのが働くんだそうで。倒れたゴーレムの体を再生させて新たにまたゴーレムを造るらしいので、素材としては持ち出されては困る、ということらしくて……」


「ケチねぇ……まあでも、ゴーレムが盗まれたらここも確かに商売あがったりでしょうね」


「昔の人は慎重だったんでしょうね、僕も見習いたいものです」


「まったくよ」


 ゼムとティアーナがしみじみ呟く。

 そしてしみじみ呟く彼らの目の前では、前衛二人がせわしなく動いていた。


「そら、カラン!」


 ニックがブロンズゴーレムを相手にして、縦横無尽に動く。

 ブロンズゴーレムは、隙あらばナイフで切りつけてくるニックにかかりきりだ。

 体が重すぎて鈍重でニックに攻撃を当てられないのだ。


 そして、隙だらけになった瞬間をカランは見逃さなかった。


「てやああっ!!!」


『グガガガアーッ!?』


 カランの竜骨剣がブロンズゴーレムの首を両断した。


 銅の体ともなると、ファイアブレスで溶かし切るのは難しい。

 また風や冷気もそこまで有効な手立てとはならないため、ティアーナの魔法で倒すのも効率が悪い。


 そのため中層では、ゼムが支援魔法を事前に用意し、ニックが撹乱、そしてカランがとどめを刺すという普段のパターンで行動していた。


「よし、1体目倒したゾ!」


「もう一体も頼むぞ!」


 ニックが、残りのゴーレムの膝にナイフを当てる。

 斬撃ではない。

 重心や構造を見抜き、ひっかけて転ばせたのだ。


「そりゃッ!」


 そして転んだゴーレムに、カランが竜骨剣を振り下ろした。

 ゴーレムは一瞬だけびくんびくんと動き、そして動きが途絶えた。


「……私だけやること無いわね」


 ティアーナがつまらなそうに溜息をつく。


「まあ、戦闘が始まってしまえば僕も手持ち無沙汰ですし」


「ゼムは支援魔法かけてるじゃない。まあこっちは楽で良いんだけれど」


 そんな退屈そうなティアーナの言葉に、ニックが返した。


「下層からが本番らしいし、もうすぐ嫌ってくらい働くことになるだろ」


「それもそうね」


「ああ、それまで温存しといてくれよ。あとカラン、怪我はないか? 水飲むか?」


「怪我はなイ、大丈夫」


 カランはニックから水筒を渡され、こくこくと飲む。


 カランとニックが連携してオーガを倒したとき以来、カランは妙にニックの指示を聞くようになり、ニックもカランの面倒を見ることが多くなった。ゼムとティアーナが、微笑ましい目でそれを見つめる。


「なんかあなた達、兄妹みたいね」


「……う、うーん」


 カランは竜人族であり、それゆえに年の割に体格に恵まれている。

 人間と竜人族の寿命はほぼ同じだが、成人までの成長は竜人族の方が早いのだ。

 それを知らない人が見れば、ニックよりもカランの方を年上と見るだろう。


「なによ、イヤなの?」


「そういうわけじゃねえよ。ただ、もうちょっとガタイがあればできることも増えたんだがなぁ……と思って」


 はぁ、とニックが溜息をついた。


「ニックさん、十分器用だと思いますけどね。僕なんて背丈があっても腕力はありませんし」


「……むしろニックが前衛でダメージ受けたり、倒れたりしたら、ワタシ達全員がマズイ。この仕事受けるときだってそんなに深く考えなかっタ。迷宮の地図とか敵とか、ワタシ達だけじゃ詳しく調べられなかった……。だからホントは、ニックにはあんまり前に出て欲しくなイ」


「カランの言う通りよね」


 このパーティーは、ニックが要となっていた。

 依頼を受けるにも迷宮を潜るにも、ニックの案内があってこその成功だとニック以外の全員が気付いている。


「う、うーん……。別にオレくらいの斥候は居ると思うがなぁ……? それに前もって調べた情報も完璧じゃないぞ。ここに出るブロンズゴーレムは1体ってはずだったが2体出てきたし」


「そこは仕方がないでしょう。魔物の出現数はどうしたってブレるでしょうし」


「それに、普通の斥候はオーガとタイマン張れないだロ。それに……」


「ん? なんだ?」


 ニックがカランを見る。

 カランは、言いかけた言葉を出すか迷った。

 他の奴に任せるつもりはない。

 それを面と向かって言うのは、何故か恥ずかしかった。


「……いや、なんでもなイ」


「なんだよ」


「だから、なんでもなイって」


 カランがそっぽを向いて水を飲み干した。


「はいはい、遊んでないでそろそろ行くわよ」


「お、おう」


 ニックの頭には疑問符がついたままだったが、ティアーナに促されるままに立ち上がった。


「まあともかく、仕事を片付けるとするか」


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