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人間不信の冒険者達が世界を救うようです  作者: 富士伸太
一章 サバイバルは剣の輝き
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聖剣探索 2

タイトルの副題部分(あるいは~から先の部分)を削除して、

「人間不信の冒険者達が世界を救うようです」のみをタイトルとしました。

今後ともよろしくおねがいします。


 絆の剣、と言われて、目の色を変える者はいなかった。

 全員が首をひねっていた。


「……なんだそりゃ? ティアーナ、知ってるか?」


「聞いたことないわね」


 カランもゼムも知らないらしく、首を横に振る。

 それを見たヴィルマがにたりと笑う。


「知るはずがないさね。絆の迷宮だけに現存する伝説のアーティファクト。信頼で結ばれた人間どうしの力を結集させて何倍もの力を生み出す、まさに理想の冒険者パーティーのために生み出された聖剣なのさ」


「ふーん」


 ニックは、つまらなそうに溜息を吐いた。


「なんだい、興味無いのかい」


「絆だの信頼だのを力に変えると言われてもな。正直、与太話としか」


 それがどれだけ儚いものかを、ニック達は心にしみて理解している。

 ティアーナ、カラン、ゼムの三人も、ヴィルマの言葉に心躍らせることはなく、ニックと似たような顔をしていた。


「はぁ……冷めた奴らだねえ。面子としちゃぴったりだってのに」


「なんだそりゃ?」


「ニック。お前は絆の迷宮に潜ったことはあるかい?」


「ねえよ」


「それはなんでだい?」


「……武芸百般は脳筋しかいなかったんだよ。下層は魔術師や神官がいねえと面倒だって話だし、素材が手に入らねえから金も稼げねえ。行く理由がねえよ」


「だろうね。でもあんたらは今、職業としてのバランスは理想的だ。……というか、前衛後衛がバランス良く揃った理想的なパーティーを勧めるために絆の迷宮はそういう構造になってるんだがねぇ……」


「迷宮の都合なんざ知らねえよ。んじゃ、パーティー構成が良いから声をかけたってことか?」


「別にあんたらだけじゃないがね。幾つかのパーティーには既に潜ってもらって、最下層まで進んでる。量産品のアーティファクトは幾つか見つかった。でも肝心要の絆の剣だけは見つかってないのさ」


「最下層に無いなら、無いんじゃねえの?」


「いや、古代のアーティファクトによる迷宮はだいたい隠された階層があったりするのさ。これを見つけてきたら高値で買い取るよ」


 それが、ヴィルマの提案だった。


「何も見つけられなかったときはどうなる? 報酬無しか?」


「定額の報酬は支払う。1パーティーにつき3万ディナ」


「……3万か」


 一人頭で割って、7千5百ディナ。

 F級パーティーとしては順当な金額だが、今のサバイバーならば他の迷宮を探したほうが儲かる。

 だが宝物を見つけることができれば話は別だ。

 思案のしどころだなとニックは思い、仲間達の顔を見渡した。


「どうする?」


「うーん……移動距離とか探索する日数とか考えると微妙じゃないかしら。もしかして場所は近いの?」


 ティアーナの問いに、ヴィルマが答えた。


「交通費とかせせこましいことは考えなくて良いよ。冒険者ギルド本部の中にあるんだから、ここから三十分てところさ。最下層に行くのだって大体3時間。一日働く時間をそのまま探索にあてること、最下層まで行くこと。ちゃんとやってくれるなら報酬を渋ることもないよ」


「あ、訓練用のアーティファクトだもんね、外にあるはずが無いか……。それなら悪くないんじゃない?」


 ティアーナの言葉に、カランもゼムも頷く。

 それを見たニックが、ヴィルマに向き合う。


「……それじゃあ」


「行く気になったかい?」


「いや、もっと条件詰めさせてくれ。魔剣とやらを拾ってきても「これじゃない」とか「状態が悪い」と言われて値引きされたらかなわねえ。もっと具体的に取り決めしてくれ」


「……あんた、疑り深い奴だね。商人にでもなった方が良いんじゃないか」


「うるせーな、アバウトな話で冒険する方が信じられねえんだよ」


 ヴィルマはニックの態度に溜息をついた。

 だが最終的には条件は整った。

 見取り図、出現する敵、探索済みの場所、逆に探索が完璧でない場所。

 探して欲しい魔剣の詳細。魔剣の状態にかかわらず報酬は発生するか。

 他に発掘品が出たら買い取りしてくれるのか。

 面倒な冒険者を相手にしてきたヴィルマがうんざりするほどニックは情報を引き出す。

 そして、


「……悪くない仕事だな」


 ニックが頷くと、他のメンバーも頷いた。


「よし、この仕事受けるぜ」


「ここまでしつこく話をして蹴ったら怒るところだよ。さっさと行ってきな」


 こうしてサバイバーの4人は、絆の迷宮を攻略することとなった。







「ここが絆の迷宮……確かに、迷宮ってよりは古代遺跡そのものね」


 サバイバーの面々は今、『絆の迷宮』の入り口をくぐった。

 そこでティアーナが石畳を踏みながら興味深そうに呟いていた。


 神経質なまでに碁盤目に揃えられた石畳は、現代に生きる石工や大工には作れない代物だ。通路の石畳だけではない。人間の行き来を感知して自動的に開く扉や、自動的に点灯する燭台など、どれも古代文明のなせる技に他ならない。


「話には聞いていたがちょっと異様だな……オレはこんなところ潜ったこともねえ。前情報はあるけど手探りみたいになるかもな、悪い」


「ま、本来迷宮探索とはそういうものでしょう。僕も遺跡には無知ですが頑張ります」


「ウン、こういう探索も冒険者らしいゾ」


 ニックは力なく呟いたが、ゼムとカランが元気づけるように言葉を返した。


「そうだな。まあ、マップはあるし魔物……というかゴーレムの特徴も書いてあるし、慎重に行けば問題無いはずだ」


 ニックの言葉を皮切りに、4人は歩みを進めた。


 彼らが通路を歩くと、すぐに広い部屋に出た。

 そこには、既に待ち構えている存在が居た。


『グロロロロ……』


「……あれがゴーレムだな」


「何というか、無機質ですね」


 ニックとゼムが呟く。

 まるで積み木を重ねて人型にしたような、不格好な姿だ。

 これが『絆の迷宮』から排出されるゴーレムだ。


「1階層に出るのはウッドゴーレム、情報通りだ。カラン」


「ウン」


 カランが一歩前に出る。

 ひゅうと息を吸い、そして吐いた。


『グガアアアーーーー!!!???』


「木だからよく燃えるなぁ……」


 カランのファイアブレスだけで事足りてしまった。

 上階層にいるゴーレムは、ゴブリンより若干強い程度だ。

 サバイバーの面々にとって何の問題もなかった。


「いっちょうあがり、だナ」


「よし、続けて進もう」


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