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変態なおっさんをヒロインの一人にしてみました!  作者: メリーさん
第一章 正しい魔法の使い方
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第一章18 野菜の収穫1




 教会前広場。

 そこは、村の子供たちが集まるには十分すぎるほどの広さがあり、日中は大抵子供たちが多くいる。安全のために、四歳以上の子供はここに集められ、三歳以下の子供は母親の手によって育てられる。

 広場に来るようになれば、親の手は借りない。基本的な介入は、聖女であるマーベルしか行わず、子供体は自由に過ごす。

 寝てもよい。

 何もしなくてもよい。

 ただ日向ごっこをして横になっていてもいい。


 教会に預けられる時は放置している状態であるのににもかかわらず、子供たちは、みんな常識を学び、文字を覚え、戦闘術を学ぶ。

 子供たちは、何かしらの術を磨くために日々を過ごしている。


 ユウキは、周りの子供達が真剣にタクトの話を聞いている中、同じようにタクトの話を聞いていた。


(ぐぬぬっ……前世を換算すれば、僕の方が年上なのに……)


「ユウキ、また歯を食いしばっていますよ?」

「そんなことないよ、それよりエルザは、タクトの話を聞いていなくていいのかい?」


 ユウキは、無意識に食いしばっていた顎の力を抜き、両手で顎を擦った。

 ユウキは柔らかい体をした女性たちとの関わりを持ち、前世の頃に味わえなかった愛を知った。

 他者から認められていたことを自覚したことで、必要不可欠だった欲求が満たされ、ウェンディがどうしてこの世界に転生させたのか考えるようになった。


 少し成長したユウキを見たエルザは、いつものように満面の笑みを浮かべる。


「タクトさんの話は、すごく分かりやすいですよ!」


(うぐぐっ、眩しいこの笑顔……)


 ユウキは、慌てるようにして再び前を見た。

 そこには、子供たちの前に立つタクトがいる。タクトは、子供たちの目を引くような手振りで、座学の内容を教えていた。


「つまりだ、物事を進めていくには、順序立てが必要ってわけだ。自分が目指すべき姿、どんな大人になりたいのか明確に想像できるようにしよう。想像できないなら、いくつかのことをやってみれば、見えてくるものもある。俺が穴を掘っていたのも、槍術のスキル上げに効率的だったんだが、穴掘りを外から見るのと、実際に行うのとでは雲泥の差があったな」


 タクトは、目を全員に配ると、最期にユウキとエルザに目を向けた。


「俺の場合は、槍術は守る手段に過ぎないが、槍を含めた武術は使いようによっては、人に害をなすこともある。目指すべき姿と確かな道筋があれば、人はどんな姿になってなれるものさ。英雄にだって、なれるかもしれない」


 タクトは、シャベルを地面に突き刺すと、おもちゃ箱から本を取り出した。


「さて、この後は、通貨の勉強をするべきなんだろうが、まあみんな知っているよな。明日、復習がてら再確認するから、怪しい奴は覚えておけよ。今日はここまでだ!」


 タクトは本をおもちゃ箱に投げ捨てると、シャベルを持って他の男の子を連れて広場から離れていく。


「よおしお前ら!今日は、大根採取の依頼だったよな!」

「この通り、依頼は受けてきている。早く動かないと、大根が、大根さんになってしまうよ」

「ガルヴィは心配性だな。半日程度遅れたって大丈夫だって」


 冒険者組合に登録しているタクトたちは、村の依頼を定期的に受けていた。


 冒険者組合は、登録している者達に仕事を紹介する組合だ。

 冒険者組合証があれば、各村や街、国に行き来する際の身分証明になり、村から出て他の村に行くことができる。

 冒険者組合証がなければ、住んでいる場所以外の村や街に入ることはできない。


 冒険者組合証は、いわば身分証明証であり、同時に他の村や町に行くには必要不可欠なものだった。


「私も早く依頼を受けたいです!早く行きましょう、ユウキ!」


 ユウキが立ち上がると同時に、エルザはユウキの手を引いていく。

 エルザが手を引く先にある建物は、冒険者ギルド支部の建物だ。


「「うふっふん、うふっふん。冒険者!」」


 エルザとユウキはスキップをしながら、広場から離れていく。

 冒険者組合証を手に入れるには、村の外に出ても魔物から逃げるだけの力がある者に限り、年齢が七歳以上の者でないといけない。

 今日は、エルザの誕生日である。


「「うふっふん、うふっふん、冒険者!」」


 ユウキは、昨日のうちに登録することはできたが、どうせならエルザと同時に登録しようとして、今エルザに手を引かれている。


「見えてきましたよ!」

「そうだね!」


 ユウキの目には、見飽きた建物が映る。

 教会より質素な感じの雰囲気であり、建物は全体的に白い。

 村長の家ほどの大きさはなく、一軒家程度の大きさしかないが、その建物は、冒険者組合支部の建物。

 王都から最も離れた村であり、火の国の国境に最も近い場所にあるこの村は、辺境すぎてまず他の冒険者がやって来ることはない。

 やって来る人達も、食料や頼んでいた物を持ってくる商業組合の人達ばかりであり、純粋な冒険者が泊まるために来ることも少ない。


 ユウキとエルザが建物の扉の前に立つと、透明の扉が自動で開く。

 建物の中には人はほとんどおらず、いる人も受付に座っているおっさん一人。ユウキとエルザは、おっさんに声をかけた。


「たのもう!」

「今日は私の誕生日ですよ!ということで、冒険者組合証をください!」

「良く来たね。待っていたよ。これがユウキ君の、こっちがエルザ君のだ。説明は既に満点をとっている二人ならいらないだろう」


 おっさんはにこやかに笑うと、受付の中から冒険者組合証を二枚取り出した。

 冒険者組合証には、共通して拠点場所の名前と発行した日付が記載されており、個人を特定するための個人情報が添付されている。


 拠点場所:風の国 最果ての村

 発行日付:邪歴987年4月8日

 有効期限:邪歴988年4月7日


 名前:ユウキ

 性別:女性

 生年月日:邪歴980年4月7日

 組合ランク:総合0

 顔写真:寝顔


「んな!?」

「えええええ!村長さん!ちょっとこの写真いつの間に取ったんですか!」


 ユウキとエルザは添付されていた写真を見て、驚きの悲鳴を上げた。

 顔写真の欄にはユウキとエルザの顔は口元からは涎が零れており、幸せそうな寝顔が冒険者組合証の顔写真として貼り付けてあった。

 受付の中にいるおっさん――ガメッシュは、さわやかな笑顔を浮かべたまま、にやりと笑う。


「何って言われても、秘蔵の中の写真から一番色気のある顔を選んであげたんだ。ぜひ感謝したまえ」

「この幼女趣味野郎が!……ぜひ僕にもエルザたんの写真を分けてください!」


 ユウキは、受付の前に飛び込むと、ガメッシュの肩を掴んで訴えた。

 ガメッシュの肩には、ユウキの指が食い込み、骨からはミシミシと鳴らしていけない音が響く。


「ちょっと!ユウキ!あなたまで何しているんですか!すみませんガメッシュさん。ユウキには後で言い聞かせますから!ほらユウキ!ガメッシュさんの肩を掴んでいないで、早く大根採取の依頼を受けましょう!ガメッシュさんの肩からなってはいけない音が出ていますから!お願いしているんですよね!?」


 寝顔に驚いていたエルザは、鼻息を荒くさせていたユウキを取り押さえ、受付の上に置かれた冒険者組合証を手に取る。


「行きますよ!ユウキ!」

「二人とも不備はないと思うけど、もう一度確認してね」

「依頼も受けていることになっています!さあ!ユウキ、写真ならまた今度一緒に撮りましょう。それに、今は写真より大根採取です!タクトさんも待っていますから!」

「は、はなせええええええええええ!」


 ユウキはエルザに手を引かれて受付から強引に引きはがされると、冒険者組合証を手に持って外に出た。


「は、はなせええええええええええ!首が閉まるうううううううううう!?」

「村の外に出ないで経験を積める機会は少ないですよ!早く行きましょう!」


 エルザは久しぶりの実戦に胸をわくわくさせながらユウキの襟元を掴んで駆けていく。


 大根採取。それは、作物の収穫。作物を育てる者は値は、必ず育った作物の全てを採取しなければいけない。作物を放置することは禁じられている。

 大根採取を含め野菜の収穫は、村人の中で戦える人が率先して行い、戦えない人でも水準を上げることができるものでもある。


 ユウキとエルザは、冒険者組合の建物から出た後に、タクトたちが向かった大根畑に足を向けた。


「ほら、急ぎますよ!」


 襟元を離されたユウキは、エルザの隣を並走する。


「ちょっと待ってくれよ、エルザたん。大根は逃げないんたぞ?」

「何言っているんですか!私たちも今日から、戦える側ですよ!大根さんは無理ですけど、大根ちゃんまでならどうにかできるのです!」


 エルザは短剣の柄に手を当てて微笑んだ。

 そのまま大根畑に足を向けたユウキとエルザは、走り回る大根ちゃんが物理的に目に飛び込んできた。


「うわあああああ!?目があああああ、目に蔦が当たったよおおおおお!?」

「あの大根、エロいぜ」

「ぎやあああああ!爆散しやがった!せっかく育てたのに!」


 走り回る大根たち。作物は成長しきると、魔物化する。

 大根の場合は、大根ちゃんになって動けるようになる。動けるようになり更なる成長を遂げると大根さんになり、体当たりだけで水準百未満の人は爆散する攻撃力を持つようになる。


 ユウキの腕の長さと同等かそれ以上の長さと太さを誇る大根ちゃんたちは、我先に生き延びようと必死に駆け、諦めた大根は魔力を集中させて爆散していた。

 村の中を生き生きと走り回る白い物体の姿。飛び散る白くて透明感のある塊。白い二本の足を器用に動かして、頭らしきところには緑色の葉が髪のように揺れている。

 デフォルトのような目が愛らしさを表現している。

 だが、大根ちゃんは採取しなければ、大根さんになってしまう。大根さんになってしまえば、彼らば一本だけで村程度であれば滅ぼせる力を秘めている。


 目に飛び込んできていた大根ちゃんが諦められる前に素早くとどめをさすために、ユウキとエルザは短剣を引き抜いた。


「よおし!私もいくぞおおおおおお!」


 エルザの声を遮るように、また別の場所から大きな声が発せられる。


「そっちに一本いったぞおおおおお!」

「大根さんにするごとに罰金を課せられるんだからな、一匹も逃がすなよ!収穫だあああああ!!!」

「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」」」」


 大根の採取を素早く終えたタクトたちは、大根ちゃんに進化してしまった大根たちを追い掛け回していた。

 歓声を上げた子供たちとそれに混じる大人たち。

 毎年ある光景であり、それは作物を育てる人達の宿命みたいなものだ。


 ユウキとエルザは去年までは大根の採取までしかできず、大根ちゃんを運良く倒すことができても追いかけ続ける体力がなかった。

 それでも、瞬間的な戦闘力は子供たちの中でも引けを取らなかった。そんな状態の去年より成長したユウキとエルザは、子供たちに混じるように大根ちゃんを追いかける。

 狙いを定めたユウキは、短剣の刃を大根の芯にめがけて突き立てた。


「何で毎年、四月に走り回るんだ!おかげでエルザたんの写真をまだじっくりとみれてないんだぞ!」

「ユウキとエルザが来たぞ!」

「あの大根ちゃんは僕の物だ!」

「お姉ちゃん来るの遅いよ!ご飯が逃げちゃう!」

「うんユウカ。遅れた分は取り返すから大丈夫さ!」


 ユウキとエルザに気がついた子供の一人が大声を上げるも、他の子供たちは勇敢に大根ちゃんを追いかける。

 ユウキは目を吊り上げて、大根ちゃんから経験を積んでいく。


「僕の写真もいつ取ったのか、問い詰めていないんだぞ!ガメッシュさんがとぼける前に聞きだしたかったんだ!」

「ユウキ!右前方の個体に魔法を叩き込め!」

「ふははははは!今日の僕なんか調子よくね!……そういえば、何か考えていたような?……まあ、いっか!」


 ユウキは、次第に写真のことを忘れて、大根採取を楽しんでいた。



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