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変態なおっさんをヒロインの一人にしてみました!  作者: メリーさん
第一章 正しい魔法の使い方
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第一章14 魔物3




 炎が消滅した場所には焼け焦げた肉片が転がり、ゴブリンは全滅していた。

 ハヤトは思わず声を漏らす。


「危なかったっす!?レベル二十越えのゴブリンが減ったとはいえ二十体はいたっすよね!?普通であれば無理な数が一撃っすよ!一撃!俺、危うく死にかけたっす!!!」

「はあ?早く片付けたのに文句があんのか?怖かったんならうちの胸を貸してやるよ」


 アンナは男らしく言い切ると、あたふたしているハヤトを胸に抱き寄せた。

 ナイトは生き残りのゴブリンがいないことを確認して剣をしまう。


「ハニーの言う通りだ。魔物のレベル二十と生物のレベル二十ではステータスがかなり違うのは周知の事実。魔物相手の初陣で怖かったんだろう?」

「怖かったっすけえど、怖かったのは魔物ではないっすよ!」

「はっはっは。怖いものは怖いと思っても恥ではないぞ」

「だから違うっす!」


 ハヤトの怖がりようはアンナとナイトがかつての自分を見るようであり、アンナとナイトはハヤトに温かい目を向けた。

 今のハヤトでは、水準(レベル)二十の魔物を一対一で相手にした場合、どうにか倒せる程度の実力しかない。

 リュウゼンの一番弟子とはいえ、魔物の大群相手に白兵戦するのは怖い気持ちが残っている。一対一でどうにか相手をすることができるゴブリンを、二十体まとめて一撃で葬った魔法が直撃するのは、想像するだけで恐怖心を抱いても可笑しくない。


 アンナは胸の中で顔を真っ赤にさせるハヤトを落ち着かせるように、肩を更に寄せて胸を押し付けた。

 ハヤトは成人であるものの幼さを残す童顔。

 そんなハヤトは、顔を真っ赤にさせて目には涙を浮かべている。


「今ぐらいなら、うちの胸は貸してやれるからな」

「ちょ!?師匠が大変な顔しているっす!?離してくださいっす!?」

「男ならこれで落ち着くだろうが?」

「そ、それはそうっすけど、そうじゃないっす!?」


 リュウゼンは、弟子(ハヤト)が村でも一番を争う巨乳をもつアンナの胸を堪能していることに嫉妬した。

 ナイトはニヤニヤ笑いながら、アンナの肩に腕を回す。


「ハニーは俺のものだぞ?それに俺ならハニーの顔を見るだけで落ち着けるよ」

「てめえには聞いてねえよ!」


 優しい口調のナイトに腕を回されたアンナは、躊躇(ちゅうちょ)なくナイトのみずおちに肘を叩き込こんだ。アンナの拳はわなわなと震え、アンナの頬はそれとなくほんのり赤く染まる。

 アンナの顔は、なぜか耳まで赤くなっていた。

 ナイトは、ゴブリンより重い一撃を受けたみずおちをさすりながら数歩下がる。


「ず、ずいぶんと重い攻撃もできるようになったんだね、ハニー」

「ヴン?仲間が守ってくれるとは、限らねえだろうが!!!ついさっきだって手を抜きやがったな!!!数匹だったけどわざと通しやがって!職業(ジョブ)暗殺者(アサシン)なんだからアサシンらしくサクサク倒せただろうが!いいとこ見せられないからって余裕ぶっこく暇があれば1匹でも多く倒せよ?」

「ハニー?目が笑ってないよ?ほら笑顔、えが……はい、すいませんでした」


 ナイトは反射的に誤った。

 アンナとナイトのイチャイチャぶりを見ていたリュウゼンは、真剣な表情で大きな胸の動きを確認する。


(うっひょおおおおお!!いい感じにつぶれていんぜ、ぐふふ)


 アンナのロープの下には、しっかりと正された服が服の下にあるふくらみによって押し出されている。

 リュウゼンの瞳には、より魅力的に見える。


 アンナが来ている服は、魔法教会から支給されているものであり、魔法の学校を卒業した魔法使いなら誰しもが持っているもの。着用者の魔力を高め防御力と魔法防御力も高い優れもの。

 そんな服がはちきれんばかりに膨らんでいるのだ。

 男ならつい見てしまう。


 リュウゼンは、妻と娘のコスプレ姿を想像し「お?いいんじゃね?」と思い、鼻の下を伸ばす。


「今度ユウキに作らせよう」

「ほら、ずっとこっち見ていたリュウさんがまた娘のことを考え出したぞ?そろそろ魔石の回収を始めようぜ」

「やっと離れてもらえたっす」


 アンナは、男たちから向けられるいやらしい視線とだらしない顔に気づいているものの、いつものようにあたふたしているハヤトを胸から離した。

 アンナはナイトと目配せをして、周囲に魔物がいないことを確認する。

 ナイトが頷いて周囲に魔物がいないことが分かると、リュウゼンは手を叩いて素材回収を促した。

 周りを見渡せば、木々が鬱蒼(うっそう)とした森の中で、ゴブリンのし甲斐が転がっている。


「おいハヤト、こっちにこい」

「分かったっす!」


 リュウゼンがハヤトを手招きすると、ハヤトはリュウゼンの元に向かった。

 リュウゼンは、使える素材の回収と、倒した魔物の処分の仕方を教えることにした。


「ゴブリンのほとんどが丸焦げだが、素材回収よりまずは命の確保が優先だ。素材を調達しないといけない依頼の場合はまた別だが、まあ自分の力量を間違えなければ、まずそんな依頼は受けないべきだ」

「うっす」


 ハヤトは、村の中でも何回も聞かされた話を聞いた後に、気を引き締める思いの代わりに返事をした。


 魔物退治はあくまで魔物の間引きに過ぎない。

 リュウゼンは、冒険者の先輩としてハヤトにある程度の知識と生きるすべを教えようと、魔物から共通して取れる素材である魔石の数を数えさせる。


「魔物は丸焦げにして倒しても、魔石の数と一致する。魔石は魔物の数を確かめるうえで数えた方がいい。魔石は魔道具にも用いられているしな」

「一、二、三……………………………二十六、二十七、二十……二十七個っす」

「魔石が二十七個か……(多いな)……」

「どうしたっすか?師匠?」


 リュウゼンは、魔石の多さにゴブリンの数が本当であったことに驚いた。

 小型の魔物なら集団で行動していることもあるが、人型のゴブリンが二桁に及ぶ集団を形成していることは滅多にない。

 あるとすれば、大量発生しているときに限る。

 最悪状況は、ゴブリンが進化していることや、魔物暴走(スタンビート)によって村を守っている結界を突破されることだ。

 

 ハヤトを除く三人が眉間に皺を寄せたことで、ハヤトは思わず唾を飲み込んだ。


(ナイトさんが戦闘中に言っていた憶測が、既に起きているものかもしれないってことっすか?)


 ハヤトの視線に気がついたリュウゼンは、咳払いをして間を挟むと、素材の回収方法の続きを説明し始める。


「おっほん。アンナが魔法で一掃したから魔石しか残らなかっただろ?素材が少ないゴブリン相手だから魔法で一掃したが、これだと魔石以外の素材がない。魔石以外の素材を採取したかったとしても、危険を感じたら欲張らずに倒すことだ。……ってこれはさっきも言ったか。まあ、素材の採取を失敗したとしても違約金を払うだけで、次に別の依頼を受けることができるからな。それに死んじまったらアンアンすることも出来ないからな」

「……師匠、それは女性の前で言うようなことではないっすよ?」


 リュウゼンは、ハヤトとの視線から逃れるようにちらりとアンナのことを見た。

 ハヤトもリュウゼンの視線につられるように視線を動かすと、しゃがみ込んでいるアンナの大きなお尻と胸が強調されていた。


(魔物の素材に関して何か教えてもらえると思えば、最後のどうでもよさそうなことに少しがっかりしたっす。これでも最強の一角の人であることが残念っす。でも、師匠の言う通りむっちむちな体っす……は!?駄目っすね!)


 ハヤトは、首を振って思考を切り替える。


「それより、ゴブリンの死体処理の方法とゴブリンの素材の回収方法を教えてほしいっす」

「ははは、分かっているさ!」


 リュウゼンは、二十七体にも及ぶゴブリンの群れが村の近くまで徘徊し始めていることに対して、少しばかり不安を覚えていた。弟子に不安を見せないように、いつものように振る舞ったつもりが別のベクトルで心配されてしまっていた。

 リュウゼンの渾身のボケの題材である二人の目と鼻の距離で話していれば、周囲を警戒している人の耳にも届く。

 アンナは、杖を乱暴に振りながら、地団太を踏む。


「聞こえているんだよ!変態野郎があああ!!!さっさと魔石を集めたらまとめて埋めるんだろうが!!!」

「すまん!出来心だったんだ!」


 魔石の回収をしていたリュウゼンが大げさに言うと、アンナは舌打ちしながら大きな息を数回吐いた。

アンナは魔石の種類を見定めていた作業の続きを行うために、再び魔石と死体に目を移す。

 ゴブリンの死骸を他の魔物たちが食べ物として食べないように、食べることができなくなるまで処理し、土に埋める。これをしなければ魔物の共食いが起き、魔物が強化されてしまうからだ。

 リュウゼンが下ネタで不安を誤魔化そうとしていることを察したアンナは、イライラしながらもリュウゼンの方に杖を向ける。


「すまんで許されるほど甘くねえよ!てめえはうちらのパーティのリーダーだろうが!うじうじ考えるぐらいなら相談してサックっと決めやがれ!!!」

「ハニーの言う通りだ。魔物退治は、村で平和に暮らしている人達が魔物に連れ去られないようにするために必要な仕事。これだけのゴブリンがいたこと自体が少し以上かもしれないというのはハヤトを騙すことができても俺たちは騙されない。俺が森の先まで見てこようか?」


 アンナが死体に目を向けながら言うと、ナイトは体を大きく動かしなら言った。

 ナイトは周囲を警戒しながら、間接と筋肉、魔力をゆっくりと大きく動かしていく。

 

「ハニーが焼き払ったゴブリンの群れの数からして、近くにゴブリンの巣があっても可笑しくないだろう?」


 長年冒険者をしていれば誰でも理解する感性がある。ナイトのこれからの動きを感じとっていたアンナは、ナイトを睨んだ。


「っち。てめえは、はなから行く気だっただろうが」

「流石はハニーだね」


 ナイトは、軽く笑いながら、リュウゼンの方をじっと見る。


 暗殺者(アサシン)は気配を消して行動できる職業だ。魔物にばれないように魔物の巣を特定できるのは、このメンバーの中ではナイトしかいない。

 戦闘が始まった瞬間にアサシンとしてのこの後の動きを考えていたナイトは、アンナに考えていた事がバレバレだったことに思わず笑い、少しずつほぐしていた筋肉や関節に魔力を浸透させた。

 ナイトは、準備運動を済ませると、武器の数の確認をする。

 ナイトの姿をみたリュウゼンは思わす頭上を見る。


(やっぱりこいつらは強いな)


 リュウゼンは思ったことを胸に秘め、村を守るパーティーのリーダーとしてナイト命じた。


「――陽が沈むまでに原因を突き止めろ」

「くっくっく。リュウさんのその目は久しぶりに見たな。ここ最近、平和ボケしたと思っていたけど、違うみたいで安心したよ。見つけ次第戻る」


 村には守りたい宝がいる。

 リュウゼンの真剣なまなざしを見たナイトは、気配を消して魔物がいる森の影に消えていった。




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