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変態なおっさんをヒロインの一人にしてみました!  作者: メリーさん
第一章 正しい魔法の使い方
16/34

第一章13 魔物2




 名前:「リュウゼン=フウノ」

 性別:「男」

 種族:「人」

 職業:「聖剣」「戦士」「王国騎士」「村人」「狩人」

 技能:「剣術」「集中」「魔力操作」「水準強化」「鑑定」「生命回帰」

 加護:「精霊に嫌われしもの」

 年齢:30

 水準:129

 体力:187

 魔力:68

 精力:145

 物攻:91

 物防:91

 魔攻:54

 魔防:54

 敏捷:112


 ゴブリンが飛び出してから実に一秒にも満たない間に、四人は対応していた。


「『鑑定』。上位種なし。レベル下は二十、上は三十四」

「『身体強化』ああ!」

「『並行詠唱』。■□▼……」

「『攻撃力上昇』っす!」


 リュウゼンが自身の能力を底上げすると、紅一点のアンナは魔法の詠唱を始める。

 素早く鑑定したナイトは、鑑定で見たレベルを読み上げ一匹目を狙い前に出た。


「まず一匹。来い、ハヤト」

「え?俺っすか?」

「ゔん?」

「行くっす!行かせていただきますっす!」


 ナイトの有無を言わせない声に、ハヤトは気を引き締めて剣を手に取る。

 ハヤトはナイトの動きに遅れないように続くと、身体強化の下位に当たる攻撃力上昇の技能によって上昇した攻撃力を確かめるように剣を一振りした。


「いくっす!」


 リュウゼンたちとゴブリンたちの間にはナイトが先行しており、ナイトは早速二匹目に狙いを定めている。ハヤトはナイトに続くように前に出て、棍棒を振り上げているゴブリンを間合いに入れた。


(ナイトさんの動きは無駄がないっす)


 魔物は脅威だ。

 生後一年であり、レベルも三十前後しかないにもかかわらず、成人している人と同じぐらいのステータスを誇る。それどころかレベル百を超えている人でさえ、レベル三十に満たない魔物に殺されることもある。

 生後一年の人が生後一年の魔物と比べてしまえば、天と地ほどの差が存在している。


「ギウギャ!」


 生物と魔物の圧倒的差をものともしない動きを見せるナイトは、ゴブリンの攻撃を(かわ)していた。余裕を持って躱し、的確に急所を突く攻撃を繰り返している。

 ゴブリンたちの手には、お粗末ながらも制作された棍棒が握られており、全力で振るわれればノックバックされても何ら不思議ではない攻撃力を備えていた。


「グギャアアアアアア!」

「遅い」

「グ、グギャアァ」

「くっ、お、遅いっすよおお!」


 ハヤトは大ぶりで振り上げたゴブリンの手に狙いを定め、ゴブリンの手を剣で叩いて棍棒を叩き落とした。

 圧倒的ステータスの差があったとしても、急所は存在する。

 魔物とはいえ肉体を動かすには、抗えない(ことわり)も存在する。

 棍棒を握る筋肉を叩けば、棍棒を握る力が変化する。

 ただでさえ粗い作りである想い棍棒は、手の筋肉を叩かれたことで握っていられなくなるには十分な一撃だった。


「グギャ、グギャギャ!!!」

「グギギギグ!」


 しかし、いくら武器を持っていない状態にしたとはいえ、ゴブリンは魔物だ。

 魔物は脅威だ。


 生物は、攻撃力が百あったとしてもその力を最大限発揮するには努力が必要であり、常に百%の力を発揮することは難しい。

 だが魔物は生物と違い、百の攻撃力があれば常に百の力を発揮することができる。

 それこそ一撃でももらえば、戦闘に即座に復帰するのが難しい程、魔物は強い。


 その脅威の魔物であるゴブリンは、棍棒を落とされたことで怒りをあらわにし、手を剣で叩いてきたハヤトに近づいていく。


「グギャギャ!グググギャギャ!!!」

「『聖剣突き』!」


 ハヤトは構えていた剣を素早い動きで、ゴブリンの眼球に鋭い突きを放ち、脳天を貫いた。

 いくら百%の力を発揮し続ける魔物とはいえ、初代聖剣が開発した技を前にすれば、防御力が薄い眼球の後ろの頭蓋骨を貫くことは容易だった。


「一匹目っす!」

「グググギャ!」


 ハヤトによって棍棒を手放したゴブリンは鳴き声を上げる。


「しぶといっすね」


 人に対して行えば、即死してしまうような攻撃をうけているにも関わらず、ハヤトの攻撃はゴブリンの体力を削りきるには足りなかった。

 脳天を貫かれたゴブリンは、怒りを露わにしたままハヤトの腕を掴む。その様子を見ていたゴブリンは嘲笑うようにニマニマと歯を見せている。


「グギャギャ!!!」

「グギギギ!!!」

「相変わらず品がないっすね」


 小手を掴まれたハヤトは、剣を振りぬき一匹のゴブリンの体力を削ぎ落した。


「きりがないっすね!」


 ハヤトが思わずつぶやいた愚痴は森の中に静かに消えていく。

 ナイトはハヤトに言い返しながら八匹目のゴブリンを(ほうむ)った。


「無駄口叩くならい一匹でも多く足止めしろ。こいつらはおそらく逸れか調査班の集団だ。今ここで逃げられる前に葬る。もうすでに規模が大きくなっているかもしれない」


 ナイトは九匹目のゴブリンの頸動脈と大腿動脈を切断した。

 ゴブリンの体から赤い血が辺りに飛びかい、ナイトが放った蹴りによってゴブリンは水平に飛んでいく。


「グギャアアアアア!」


 木にぶつかったゴブリンは、起き上がろうと前かが忌なったまま地面に頭をぶつける。


「グ、グギャアァ」

「一匹たりとも逃がすな」

「了解っす」


 ハヤトが右側に押さされれば、ナイトは左側のゴブリンを相手取る。ナイトが十匹目に狙いを定めたときに、ハヤトは二匹目のゴブリンを葬った。

 背中を合わせたナイトとハヤトは、魔法を詠唱している音を聞き、魔力が爆発的に高まっているのを感じとった。


「っち、こいつらにハニーの存在がばれちまったな」

「いくら隠れても、これだけ魔力が高まれば、いやでも存在感は高まるっすよっと!」


 ナイトに葬られたゴブリンは、血と一緒に有り余った精力のしぶきを上げる。


「赤い血も白いやつもまともに受けるなよ」

「分かっているっす!血は落ちにくくて他の魔物の目印にされて、白いものは状態異常に影響を与えるんすよねっと!」

「分かっているなら、決して浴びるなよ」

「ナイトさんがもっと慎重に攻撃してくれれば、まず浴びない思うっすよっと!」


 魔物は魔力の濃度が高い場所で発生する種族であるが、魔物は通常の方法と別にして、数を増やす方法が存在する。

 ゴブリンの場合は、精力に物を言わせて繁殖する方法がある。

 オスのゴブリンの群れに母体となる種族がいれば、ゴブリンが大量発生し、魔物暴走が起きる場合もある。

 戦闘開始直後にアンナが隠れたのは、ゴブリンの生殖の母体となる存在を隠すためだった。

 しかし、いくら隠れたといっても、魔法の詠唱をして魔力が高まれば、ゴブリンにもアンナの存在がわかるには十分だった。


「グギギ!ムコウニメスガイルゾ!」

「グギギッ!」


 三十匹近くいるゴブリンが集団となっていたことから、すでに大規模な巣があってもおかしくない。母体を求めた逸れであることもよくある話であり、ゴブリンたちがナイトとハヤトの後方にいる母体(アンナ)の存在を確認すると、荷台の上にいるアンナにめがけてかけ始めた。


「ひいいいい!師匠!数が多すぎるっす!」

「すまないハニー。数匹そっちに行った!」


 ハヤトとナイトの二人が飛び出して相手をしていたが、二人では処理しきれない数に押し切られ数匹のゴブリンが荷台にめがけてかけていく。


「弱音を吐くな!!この程度どうにかできる!死なないように耐えてくれ!」


 リュウゼンが投げナイフを構えながら大声を上げた。


「そんなこと言われても怖いものは怖いっす!」


 ハヤトは悲鳴を上げながら、一心不乱に剣を振るう。

 多少の粗さが残るものの、師匠に教わった基本的な太刀筋は見事なもので、四十八手とは言わないものの聖剣突きを主体とした八通りの剣筋を駆使している。

 ハヤトは圧倒的な強さを誇る魔物を相手に引けを取らない立ち回りで、ゴブリンの攻撃をどうにか防いでいた。


「はあああああ!『聖剣突き』!」

「っち。数が多い!」


 ハヤトとナイトは、致命傷な一撃を受けないように重い攻撃をかわしていく。

 約三十匹いたゴブリンの群れを二人だけで相手にするには、数が多かった。


「魔法はもうすぐか。だったら『デコイ』!!!」


 リュウゼンは、近づいてくるゴブリンを投げナイフで牽制しながらアンナの魔法を見て、デコイを発動させた。


 デコイは本能の部分に関与し、デコイを使用した者が目的のものであると誤認させるスキル。

 知能が低く本能が主体となって行動しているゴブリンたちに有効なスキルだった。


「ギギャギャ!」

「ギギギギャ!」


 ゴブリンたちはリュウゼンのスキルに刺激され、他の人達にめくれず、リュウゼンに向かって一斉に駆けていく。


「ギギッ!ゼッタイツレテカエルゾ!」


 ゴブリンの集団の中でも一回り大きなゴブリンがにやりと笑うと、荷台の上に乗っているアンナもにやりと笑う。


「てめえらみたいな(きたね)ええものには興味ねえんだよ!!!」


 ゴブリンたちが荷台の前にいたリュウゼンに飛びかかった瞬間、アンナは完成した魔法を発動させた。

 アンナの顔を見て見れば戦闘前まで「ダーリン♡ 」と言っていた人物と同一人物であると思えないほど目つきがつり上がっている。


「くらいやがれ!!!『ファイヤーアロー』『ライジングボルト』おお!!!」


 アンナの低く威圧感のある声と同時に、森の中に魔法が走る。

 数多くの稲妻は走り、炎の矢がゴブリンに降り注ぐ。


「しにやががれえええ下種どもがあああああああ!!!」


 リュウゼンは、魔法の射程範囲に入らないために、その場で上空に飛び跳ねた。リュウゼンを見上げていたコブリンたちは、魔法の嵐に飲まれていく。


「グギャ?グババババババ」

「アヅイ!アヅイ!ナンナンダ!コレハ!」

「おい、こっちまできそうだぞ?」

「あちっ……あ、危ないっす!」


 ナイトも魔法の射程範囲から出るために慌てて飛びのいていき、ハヤトは逃げ遅れて魔法の熱気を浴びた。


 戦闘指示から遅れると命の危険があるとはいえ、避けての一言もなく放たれた魔法。

 アンナのドスの効いた低い声によって生み出されたその魔法は、少し(かす)っただけで小手が歪む威力があった。


 かすっただけで皮膚が焼ける威力の魔法。

 剣術では急所を狙わないと倒せない魔物を一瞬で飲み込む威力。


(ゴブリンを相手にする時より怖いっす。いくら信頼しているとはいえ、多少の文句が言いたくなるっすよ!)


 ハヤトは、立ち込める炎の陰から口角があがっているアンナの笑顔に文句を言おうと魔法の残骸を見た瞬間、全身が縮こまった。


「これは……まじっすか?」


 炎が消滅した場所には焼け焦げた肉片が転がり、ゴブリンは全滅していた。




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