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変態なおっさんをヒロインの一人にしてみました!  作者: メリーさん
第一章 正しい魔法の使い方
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第一章12 魔物1




 ユウキは、二つ目以降の型の解読を諦めた。

 読める範囲だけの文を読んでも、内容が分かりにくく途中で飽きてしまい、ユウキはかわりに日本昔話や勇者が出てくる有名なゲームを参考に組手の基本と称して面白おかしく語った。そんなこともあり、聖剣突きというただ剣を突きさす技をことが勇者のイメージにはまったエルザは、目をキラキラ輝かせて勇者ごっこをしている。


 辺境の村の中でいたって平和な日常が過ぎている頃、大人たちは各々が生業を全うしていた。

 子供の世界を大人になっても繰り広げることはまずできない。

 彼らは生きるために今日も働く。


 辺境の村から少し離れた森の中で、四人の大人が歩いていた。


「ダーリンッ♡ 」

「何だいハニー?」


 一組の男女は手を取り合い、一組の師弟は雑談しながら歩く。

 大人の一人であるリュウゼンは、弟子を連れて今日も魔物狩りの集団で村周辺に魔物がいないか見回っていた。


 彼らが住む辺境の村は、街から離れ未開拓地に最も近い場所であり、国境に最も近い村になっている。町から離れれば離れる程、町からの物資もままならず同時に魔物は増加していくため、平穏とは程遠い危険のような状態と隣り合わせであった。

 いくら村に結界が張られているとはいえ、結界も万能ではない。

 魔物が大量発生し、魔物暴走等が起きてしまえば村の結界は数の暴力によって破られてしまうだろう。

 村の安全を維持するためにリュウゼンたちは適度に魔物を狩り、ついでに食料の調達や素材の回収に勤しんでいた。


「はあああああ、早くソフィーと娘たちに会いたい」


 リュウゼンはため息を吐いた。村から出て魔物の間引きをしている時に、甘々な夫婦の雰囲気を作り出す二人から視線をそらぜば、リュウゼンの視界には弟子が入って来る。


「ちょっと師匠。いくら嫁さんや娘さんたちが可愛いからといって、毎日聞かされるこっちの身にもなってほしいっす。ここが結界の外だということを忘れそうになるっていつも言っているっすよね!」

「そんなこと言われてもな。毎回こいつらを見てしまうと、ソフィーに会いたくなるってもんだろ?」

「いや、俺に言われても困るっす!?」


 荷車を引きながら可愛い嫁を想起しているリュウゼンに対して、弟子であるハヤトは死んだ目で呟いた。ハヤトは成人しているものの彼女がいない=年齢の男の子。

 嫁さんの前に彼女すらいないハヤトには、今ここにいる大人たちに気持ちを正しく理解することはできない。

 リュウゼンたちが一組の男女に視線を向ければ、まるでハートマークが出現しているかのような甘々な空間が出来上がっているように見えた。


(あんな出来事があっても夫婦でいられることがすごいっすよ)


 リュウゼンたちの隣には森の中にもかかわらず腕を組み合って歩く男女がおり、女性の方は頭を男の二の腕に寄せて歩いている。

 最強の剣士の一角であるリュウゼンに弟子入りしているハヤトは、村の外ではイチャイチャする人達と一緒のパーティーで、村の中では師匠のイチャイチャを見せつけられることにうんざりした気持ちを募らせる。

 時折、夫婦の中が悪くなった時に村の酒場で愛のトークを毎回の様に聞かされるのがハヤトの役目だ。ハヤトは、辺境の村に住んでいる夫婦たちが、異常なほどにお互いを求めていることを知りつつも、時と場所を考えない夫婦にジド目を向ける。


「本当に困るっす」

「困るって言っても、ハヤトも本当は分かっているんじゃないか」

「そう言われても、あまり実感はないっすね。師匠はどうして、ソフィアさんたちに会いたいと思うっすか?いずれ消えてしまうかもしれない人と一緒に居たいという気持ちが、俺には分からないっす」


 ハヤトはリュウゼンだけに聞こえるような声で呟いた。

 ハヤトの声を聞きとったリュウゼンは、ハヤトの頭を乱雑に撫でる。


「そういうことを考えているからまだまだ」

「元々は冒険していた頃の話を聞きたいから付き合っているっすけど、想い人に出会ってからの冒険はほとんど女性関連の話しかしない師匠が悪いっす!剣技の開発方法や、魔物の倒し方とかいっぱい聞きたいことがあるっす!話半分が色恋沙汰だと、聖剣と言われた師匠の力の一片が分からないっすよ!」


 ハヤトがきっぱり言い切ると、リュウゼンはおどけるように答えた。


「そんなこと言われてもなあ。昔みたいに剣だけを振ってちやほやされる時代は終わりを迎えちまっているし。今や俺に振り向いてくれるのはソフィーと娘しかいなくなっちまってよ。俺はもう家族のために剣を振るうって決めてんだ」

「ほらまた話を逸らしたっす!そんなことドヤ顔で言われても、最強剣士が独身だったら、誰だってちやほやしたくなるもんっすよ。俺が子供のころに見た武勇伝も今や昔。今の師匠は今や可愛い奥さんと娘さんに囲まれて偏狭な村に引きこもっているおっさんっすよね?娘さんが可哀想っす」

「娘はやらん!」

「俺、娘さんが欲しいなんて一言もいっていないっす!」

「なんだと!俺の娘が可愛くないっていいたいのか!」

「もちろん可愛いっすよ!でも流石に年下すぎるっす!」

「大丈夫だ。ノークスとマーベルは二十歳差あるからな。諦めなければいつかいい出会いはあるだろうよ」

「あの人達は例外っす!何なんすか師匠は……」


 結局強さの話を逸らされたハヤトは、相槌を打ちながら周囲に警戒する。

 冒険とは全く関係ない話をしながら魔物が徘徊する森の中を歩いているものの、四人は談笑しながら周囲に気を配るようなこともしていた。

 いくら話の内容が色恋沙汰であっても、命がかかっている場所で気を抜くようなことをしない。剣や冒険に関することに対しては真剣だ。


「足跡みたいのがあるっすねえ……そういえば、師匠。足跡と言えば、最近ユウキちゃんが夜の村をウロウロしているみたいっすよね?」


 音と技能を駆使して周囲を警戒するハヤトが親馬鹿のリュウゼンにユウキのことを訊ねると、リュウゼンは経った今知ったかのようにびっくりした声を出す。


「何?なぜだユウキ。俺と一緒にお風呂に入るのがそんなにいやだったのか?それとも行ってきますのちゅうが嫌だったのか?ソフィーもユウカも一緒にお風呂に入ってくれるし、ちゅうもしてくれるというのにいいい!!!おかしいと思わないか!!!」


 リュウゼンは鼻の下を伸ばしながら、天を仰いだ。

 ハヤトは周囲を警戒しながら、リュウゼンの方に目を向ける。


「リュウゼンさんの頭の中の方が可笑しくなっていると思うっす。ユウキちゃんが非行しているのって絶対リュウゼンさんが原因だと思うっす!」

「そんなわけあるか!!!俺はいたって正常だ!」


 リュウゼンがたとえ自分の娘が相手だろうが可愛い女性相手に鼻の下を伸ばしてしまう変態であっても、リュウゼンは親馬鹿だ。家族の話ばかりする親馬鹿で変態であることがリュウゼンの正常だった。

 リュウゼンは、生まれ落ちた時から精霊に嫌われ、魔法も剣も三流以下だったが、魔法も使えなかった少年は、ただひたすらに剣を磨き続けた。女性から見下される目線を向けられてきた男のこじらせ方は、どこかの異世界の魔王と一緒であった。

 そんなリュウゼンは精霊と関わる属性魔法が使えず、魔法を基本として話される内容は共感しにくいため、魔法を徹底的に理解し、そして剣という武術だけを鍛えた。

 しっかりしても見向きもされないなら、自分がしていて楽しいことを繰り返す。

 リュウゼンはそうして聖剣と呼ばれるだけの力を手に入れた。


 可愛い娘との愛の育み方に否定的な言葉に怒りを乗せて、リュウゼンは腰にぶら下がっている投げナイフを掴む。


「下種は死ねえええ!」


 リュウゼンはハヤトがいる方を睨むと、掴んでいた投げナイフをハヤトの顔に向かって投擲した。


「ひえええええぇぇぇぇぇ!!!」

「魔物発見!前方二百五十程度、数三十前後!」


 ハヤトの口から悲鳴が零れる。

 リュウゼンは、鬱蒼とした森に響いていた話し声を遮るように、戦闘の合図を下ろした。

 ハヤトも顔の横をすれすれにナイフが飛んでいったもののすぐに緊張感を高め、他の二人も緊張感を高める。


……………ガサガサッ……………


 緊張感が高まり、森に静けさが戻ると、みんなの耳には、ガサガサと草木を分けて近づいてくる魔物の足音が聞こえてきた。


 待ち伏せをしない辺り、知能が低いか、自信がある強者か。それとも強者から逃げてくる弱者か。


 木々の隙間から空を覗いても、鳥が逃げるそぶりは見られない。


 各々が使い古された防具を身に纏い、持ち歩いていた武器をいつでも使えるように準備していく。

 その動作は勿論のこと、磨かれた武器や、足音を立てないで歩いていた姿は、しゃべり声を除けば、彼らが元戦歴の強者であったことが伺える。


 ……………


 …………………………


 五秒それとも十秒だろうか。

 話し声がぴたりとやみ、静寂な森の中で草木を踏み潰す音が次第に大きくなってくる。


「ギギッ!!!メスノカオリ!!!」


 魔物が飛び出して来た瞬間、リュウゼンたちの中で唯一の女性である魔法使いは素早く荷台に乗り移った。


「ゴブリンみたいっす」

「ゴブリンみたいではなくゴブリンだ!いつも通りで行くぞ!!」


 ハヤトが半信半疑で魔物名前を言うと、リュウゼンは素早く指示を飛ばす。

 集団とは言っても、村の守りにも大人を残しているため四人のパーティーに過ぎない。


 最強の剣士の一角にして聖剣であるリュウゼン。

 リュウゼンを師匠にもつ一番弟子のハヤト。

 紅一点の魔法使いであるアンナ。

 黙々と周囲を伺う短剣使いのナイト。


 四人であれば冒険者の一パーティー分に当たるものの、村の守りにしては少しばかり少ない。

 人数が少ないにもかかわらず人数を増やせないのは、辺境の地の村で森の中に行ける人材は少ないのが大きな事実だった。


 人数が少ない。

 邪神の加護を得ている魔物は強い。

 強い魔物がいる森の中に行けるリュウゼンたちは、四人という少ない人数にも関わらず、魔物を相手にするだけの実力があった。


 行くぞ。

 リュウゼンのその一言が飛び出る前に、他の三人もすぐさま動き、ゴブリンを相手にしていた。リュウゼンが指示をだしたのは、どんな動きをするのか共通の認識を確かめるために行ったに過ぎない。

 ゴブリンが飛び出してから実に一秒にも満たない間に、四人対応していた。


「『鑑定』」


【一番レベルの低いゴブリン】

 名前:「空白」

 性別:「男」

 種族:「ゴブリン」

 年齢:1

 水準:20

 体力:120

 魔力:15

 精力:510

 物攻:64

 物防:32

 魔攻:32

 魔防:32

 敏捷:41


【一番レベルの高いゴブリン】

 名前:「空白」

 性別:「男」

 種族:「ゴブリン」

 年齢:2

 水準:34

 体力:150

 魔力:22

 精力:680

 物攻:92

 物防:46

 魔攻:46

 魔防:46

 敏捷:61


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