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変態なおっさんをヒロインの一人にしてみました!  作者: メリーさん
第一章 正しい魔法の使い方
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第一章9  子供の世界




 とある村に魔王と勇者が誕生してから、早五年。

 魔王も勇者もすくすく育ち、二人は競い合うように成長していた。

 魔王が歩けるようになれば勇者は走れるようになり、勇者が二段階ジャンプをできるようになれば魔王は空を飛んだ。

 魔王ユウキと勇者エルザは、お互いにひかれ合い競い合い、いつの日か……


「これは僕の物だああああ!!!」

「それはみんなのものですよ!!!今日こそやっつけてやりましょう、魔王!!!」


 現在、二人は村の中でいがみ合っていた。

 二人がいる場所は、教会の前の広場。

 子供たちが預けられる場所。

 二人の子供が、ごっこ遊びで向かい合っている。


 ユウキは翡翠色の髪をショートボムにまとめ、エルザは緋色の長い髪をポーニーテールでまとめている。二人とも子供用の冒険者服を着込んでおり、腰には木製の剣がぶら下がっていた。

 服の見た目だけで言えば瓜二つであり、双子コーディネートのような服装。

 その服装は、ユウキとエルザの両親が裏で合わせて、五歳の誕生日プレゼントで送った物だ。


 しかしお揃いの服装とは裏腹に、彼女たちは決定的な違いがあった。

 ユウキもエルザも五歳児の子供ではあるが、先天性職業として魔王と勇者を担っている。魔王がルールブレイカーとしたら、勇者はルールメーカー。


 魔王は思うが儘に行動し、勇者は集団を律するために行動する。

 勇者は、民のため皆のために規則を作り規則を破る者をどうにかしないといいけない。いけないのだが、勇者はまだ親の心など知らない子供の年頃であり、規則も正義も何かとわからない。勇者とは何か、明確には分からない。


 それでもエルザは、自身が思い描く勇者になりきっていた。

 そして勇者になりきっている幼女と接する元おっさんは、親の心や勇者の心を理解したうえで幼い勇者に対抗していた。魔王として勇者を手懐けるために。


 勇者は何も持っておらず、魔王は自分で作った魔王らしいマントを身につけている。そしてその首元には勇者のイメージで作られたネックレスがぶら下がっていた。


 ユウキは、魔王設定であるのに勇者のネックレスも装備している。

 実に大人げないとしても、エルザには魔王と敵対しないための地盤が必要だ。ユウキが悪ではないと知ってもらうためにも、ユウキは悪という存在になりきる。


「おい、ユウキ。少しぐらい衣装を譲ったっていいだろうが」


 穴をひたすら掘る人にすら突っ込みを入れられてしまった元おっさんは、状況を分かったうえで勇者と小競り合いしていた。

 なぜなら元おっさんは、悪になりきり悪という固定概念を植え付ける必要があるからである。

(将来、魔王というだけで殺されたくはないからね!)


「今日こそはエルザがその命頂戴しますううううう!!!」

「ぐふふっ。この僕に敗北などありえなぁい!!!」


 ユウキは腰に手を当てて胸を張った。

 命を頂戴すると物騒なことを言っているが、あくまでもごっこ遊び。頂戴するのはユウキが作った勇者のネックレスだ。勇者が装備することでステータスが二倍になる一級品という設定のネックレス。魔王が勇者から奪った装備を勇者が取り返す場面である。


 実際は少ししかステータスが上がらないとしても、エルザは役になりきるためにネックレスを欲しがった。

 ごっこ遊びをする時に、それらしいものを毎回の様に作ってくるのがユウキ。ユウキが作るものは丈夫で出来栄えがいい。特に見た目は心を擽る。性能も引けをとらないこともある。

 ユウキは、子供のあやふやなイメージで、イメージ以上に衣装や玩具を作ってくれる。

 まるで見たことがあるかのように、手際よく作っていく。


(私もみんなに慕われるようなカッコいい勇者になりたいです!)

(ぐふふっ、可愛い衣装を作れば、それだけ好感度もアップだな!ぐふふふふっ)


 ユウキが、エルザに幼いころから教育しているとは思わないエルザは、自分の先天性職業を知ってからは、英雄に憧れた。

 女の子が憧れるようなことからは程遠いが、エルザは勇者に誇りをもち、どこかにいるであろう魔王とも仲良くなりたいと思っている。


 マーベルから聞いた魔王伝説は、あまりにも後味が悪かった。

 協力し合っていた勇者と魔王が、互いに殺し合うことになるなど、エルザには許せない。

 たとえ魔王が悪だとしても、悪い行いをしてしまうには理由があるはずだ。

 かつての勇者が悪だとしたら、勇者として認めたくない。


 聖女のマーベルと神官のノークスに育てられたエルザは、何が悪で何が量なのか未だに分からない。しかし、人にされて嬉しい事と人にされて嫌の事の分別ができる思考を持っていた。


 だからこそエルザは、物語のような悪者をやっつける勇者になるんだと意気込み、ごっこ遊びの時から正々堂々と立ちはだかる。


 勇者が魔王から物を奪ってしまってはどちらが魔王なのか分からない。

 勇者ならば勇者らしく、勇者のネックレスを取り返そう。

 エルザは躍起(やっき)になった。


「魔王が魔王の衣装と勇者の衣装の両方を身につけるのはずるいにもほどがあります!!!」

「ふははははは!!!当たらんな当たらんぞ!!!」


 エルザは木刀を抜くと、一瞬で踏み込む。

 子供にしては鋭い一太刀を振るうエルザに対して、ユウキは手をわきわきさせて様子を伺った。


 衣装は、ユウキが前世の知識を生かして作った物ではある。しかし、同時に村の子供たちの共通の玩具でもあった。

 勇者専用装備や魔王専用装備などお遊びで作っても。

 実用性があったとしても。

 ユウキが作った玩具は、使い終われば子供の玩具箱に放り込まれているようなものだ。

 ユウキは、今まで作った装備を組み合わせて身につけ、魔王になりきる。


「早い者勝ちという言葉があるのを知っているか!!!」

「くっ……」

「ぐへへっ。どこからでもかかってくるがいい!!」


 どちらかというと聖騎士が言うような台詞が、完全に悪役の台詞になっていた。

 ユウキはエルザに対してわざと子供らしい威嚇をして、マントの下から手を横に振るう。

 するとマントがたなびいて、首元のネックレスが太陽の光に反射した。


「っく、卑怯です!勇者の装備を奪わないと勝てないのですね!」

「口だけは一流でも、これは取り戻せないぞ!」

「なんですって!!!」


 エルザとユウキはお互いに距離をとり、いつでも相手の動きに反応できるように様子を伺う。


 静かな沈黙が続き、手を休めていた穴掘りお兄さんが再び穴を掘りはじめる。


 ……………


…………………………


「やあああああ!」


 沈黙の拮抗を破ったのは、エルザだった。

 空を走ることができるユウキの脚力を発揮すれば、並大抵の子供には勝ててしまう。

 しかしユウキはエルザが本気で動いても大丈夫な相手であり、エルザが優位に立つためには、ユウキより先に動く必要があった。

 エルザがユウキの挑発口調に引っかかったともいう。


「ふん!」


 音を置き去りにしたエルザは、素早い動きで回し蹴りを放った。


「うおおおおお!危ないよおおおおお!暴力は良くないよ!」


 暴力はいけません!

 仲良く話し合いましょう!


 幼稚園や保育園があれば言われることであるし、日本の親御であれば子供に対して必ず教育するような内容だ。

 しかし、この世界は魔王や勇者がいるファンタジー世界。

 村の外に一歩出れば、魔物がいる。邪神の加護により魔物はとても強く、子供が気軽に村の外に出ることはまずできない。

 そんな世界だからこそ、自分を守る能力が必要であり、子供のころからでも刃物を使わない格闘技で勝敗を決めることもよくある話だった。


 それにエルザは、ユウキと同年代であり自然と分かっていた。

 自分が本気でかかっても、ユウキと互角だと。ユウキ相手に本気でぶつかっても、大きなけがはしないと。

 どちらが上なのではない。

 ユウキに負けたくないからこそ全力の二分の一程度の力で挑む。


「せいや!」


 音を置き去りにした回し蹴りは空気を切り裂き、振りぬいた先にあった木に切れ込みが入った。


「うおおおおお!危ない危ない!」


 エルザの蹴りをユウキはしゃがむことで回避した。

 エルザには、空気を蹴って進撃を飛ばすことができるだけの力がある。

 いくら丈夫な体だとはいえ、当たれば痛い。

 ユウキは冷や汗を流しながら、手をわきわきするのを止めない。


「ふはははは!どうした勇者よ!そんな遅い蹴りでは僕にダメージを追わせることも出来ないぞ!!!」


 ユウキは、実に悪者口調で高らかに笑う。

 空中を蹴ることができるユウキの本気の蹴りに比べれば遅いかもしれないが、エルザの蹴りは普通の五歳児が出せる蹴りではない。

 余裕の素振りを崩さないユウキに対して、エルザはにやりと笑って目を光らせた。


「私の目的は魔王ではないのですよ!」

「……なん……だと?」

「私の目的はこれです!」


 エルザは自分の足にかかっていた物を空中に投げ、その物を素早く掴み取る。

 その物は、つい先ほどまでユウキの首元にかかっていたネックレスだった。


「いつの間に……そ、そうか!さっきの蹴りは僕への攻撃ではなく、勇者のネックレスだったというのか!!!」

「確かにネックレスは返してもらいました!次は私の番ですね!」


 エルザは鼻の穴を膨らませて、ふうんと息を吐く。

「これで二倍倍の力が出せます!」


 ここからは全力のサバイバルだとエルザが気を抜いた瞬間をユウキは見逃さなかった。


 エルザが気を抜いた瞬間、ユウキはエルザの背後に回り脇の下をこちょこちょとくすぐった。

 エルザは皮膚を撫でられたくすぐったさにネックレスを落としてしまい、ユウキに取られてしまう。


「ぐへへっ。ネックレスを返してほしければ、僕を倒すことだ」


 ユウキはエルザに接触することでだらしない顔を浮かべ、エルザはくすぐったさを紛らわすために裏拳を放つ。


「くっ…卑怯者おおおおおおおおおお!」

「ぐへへっ……どうだい?参ったかい?」


 ユウキはだらしない顔をして、エルザの足に抱き着く。ちゃっかりとユウキの首元には、勇者のネックレスがかかっていた。


「ぐっ……せっかくの勝機が……」


 エルザは、ユウキのくすぐりから逃れようと思っても、魔力回路にはユウキの魔力が満ちており、筋肉がうまく動かない。

 頭は冴えているというのに、体はユウキの攻撃を受け入れてしまっている。


「ぐずっ、卑怯でずよ!!!」

「魔王が勇者を待つと思わないことだなぁ……」


 ユウキが抱き着いたのは幼女趣味(ロリコン)だからではない。

 ごっこ遊びであっても、ユウキは悪の魔王ととして勇者を封じ込める。

 手段はいくらでもある。その中から、ユウキは抱きつくことを選んだ。抱きつくことは、ユウキの願望の一つである女性の温もりを求める方法だからだ。

 こじらせていた頃の名残として、ユウキは相手が女性であれば、あらゆる手段を用いてボディータッチを試みる変態になっていた。

 おっさんが幼女に抱き着きに行くことは、父親でもない限り、事案が発生してしまう出来事。

 ユウキは元おっさんであるにもかかわらず、エルザの足元を掴んで押し倒した。


 なぜなら自分も幼女だから。

 ユウキは、女の子に触れても気絶しないことに幸せを感じていた。気になる女の子がいれば、まず触れあう。握手、肩をよせる、気を引くために触れる。むふふな関係を築くために少しずつボディタッチが増えていき、気がつけば抱きつくことが当たり前になっていた。


 ユウキは、エルザに教育の計画を行っていた。

 将来マーベルみたいな美人に育つであろうエルザに今のうちに唾を付けて、いつでもぱふぱふできるようにしよう。

 どうしてそんな考えになったと言わんばかりの計画だが、ユウキはいたって本気だった。

 ユウキは、年齢を問わず虜にしてしまう魔力回路のマッサージを駆使して、エルザの体に快楽を教え込む。


(ぐへへっ……僕の魔力回路の虜にしてやるぜっ……)


 ユウキは鼻の下を伸ばした。


「ぐへへっ。魔王から逃げられると思うなよ」

「きゃっ!何するのですか!!!」


 ユウキが元おっさんであることを知っているのは、ユウキを除いて女神様しかいない。

 ユウキが両親であるソフィアとリュウゼンに「僕、実は前世の記憶があるんだお」といっても、まず信じないだろう。そもそも何を言っているのかからないだろうし、実の娘が突然意味不明なことを言いだとして、戸惑ってしまう。

 話した内容が、「精霊さんがお花畑でお茶会していた!」とかならまだしも。

 ユウキが真実を語って信じたとしても。

 ソフィアとリュウゼンは、ユウキに「今の自分を見るんだと」と言うことは間違いない。ユウキは、前世の記憶のことは語らずに、幼女ライフを楽しんでいた。


 元おっさんであるユウキは、生まれ変わって悟ったのだ。


 失ったものが多すぎたことに。

 ご飯は自分で食べられない。

 排泄物は垂れ流し。

 そして、かつて空を走れるほどの強靭な肉体は、大人の男性が捻っただけで折れてしまいそうな弱い体になってしまった。


 得るためにはどうすればいいのか。


 自分で獲得するしかない。

 一流のスポーツ選手が言えば納得させられる言葉であっても、ユウキが獲得したい根本は変態性を帯びている。母親に抱きつきたい。好きな女の子に抱きつきたい。

 ユウキがしたいことは、欲求の分類では、初期にあたるような物。一人の人間として尊敬できるような動機ではなかった。


「くんかくんか、ああ、勇者の匂いがするな」

「さ!?いやあ、止め、くすぐったい……っぷ」


 ユウキは息を大きく吸うと、尻餅をついたエルザの太腿の内側をまさぐってくすぐった。

 三十年近く女性に触れるだけで気を失う体質であったが、母親や幼馴染と言う女性に触れても気を失わないことで三十年間潜んでいた変態性が開花していた。

 そもそも、潜んでもいないが、それだけ、変態性が著しい。


 ユウキは、もしも今相手しているのがエルザではなくマーベルやソフィアであれば、子供のような笑顔を向けて、その胸に顔を埋めることは間違いない。


「ぐへへっ。このまま僕のくすぐりを受け入れてしまえ!!!ぐふふっ、将来が楽しみだなあ」


 ユウキは、将来美人になるであろうエルザに対して、「ユウキは優しい。ごっこ遊びは楽しいもの」という記憶を植え付けようとしていた。


「ぐふふっ……どうだ、気持ちいいいか?」

「っぷ、はははははっ、ふふふふふふはははははは!!!」


 おっさんが行えば、気持ちわるい行動でも、幼女同士や姉妹同士であれば、気持ち悪い行動に見えなくなることがある。穴堀お兄さんは、ユウキがエルザに抱きついている姿をみても、穴を堀続ける。

 実際にエルザも気持ち悪いとは思っておらず、ユウキによる内と外からの攻撃に笑いを押さえられないでいた。


(あ、エルザの顔がふくれっ面になってきた。そろそろガス抜きしないと、後で殴られる)


確かにユウキの攻撃は笑いが抑えられないほど刺激的であった。しかし同時に、エルザは同年代で同じ女の子になすが儘にされることにいら立ちを覚えていた。


 勇者は負けない。

 五歳歳児ととはいえ、エルザもれっきとした女の子。

 楽しいと思うと同時に、羞恥心と言うものはある。

 ユウキがだらしない笑みを浮かべていた力を緩めてしまった瞬間、エルザは待っていたかのように上下逆になりユウキのお腹をくすぐった。


「はっ!?し、しまったあ(棒)」


 勿論、ユウキがわざと緩めていた。

 ずっとくすぐっていれば、無意識に相手が上だと思わせてしまう。

 適度に立場を逆転し、自分たちは平等の存在だと思わせていた。


「ぐへへっ。今度はエルザの番ですね!!!二倍になったステータスの力をとことん味わうことです!」


 つい数秒前までぐずっていたはずのエルザは、一瞬にしてユウキから勇者のネックレスを返してもらい首元に付ける。

 エルザは、ユウキの体を押さえつけると、ユウキと同じような手つきでくすぐり返した。

 勇者は、勝機を失わなければ必ず勝つ。


「あ、そこは駄目!?駄目だからね!エルザさん!そこは駄目だよ!?」

「でも、此処を擦ると気持ちいですよ?最近気がついたんです!」

「それは駄目だから!?お兄さんも見ているから!エルザさあああああん!!!ああああああああああ!ああああああああああああああああああああ!!!あっ」


 穴掘りお兄さんと目が合って視線を逸らされたユウキは、顔が熱くなるのを感じながら本気になったエルザを振り解けない現実に悲鳴を上げた。




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