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87、【怠惰】とカレーパン争奪戦2

大ジャンプ後の着地の衝撃も風魔法で軽減しつつ、そのまま止まることなく次の屋根を目指して走るフェゴールに手を引かれながらベルも付いて行く。


魔術師ギルドは大きいだけでなく屋根が三角なので冒険者たちは大きく迂回しているが、一部の冒険者は屋根にカギ爪付きのロープを投げて直線距離で向かってきたり、さらには屋根の傾斜をものともせずに駆け上がる手練れもいるようだ。

それだけ能力が高いなら昼間から酒を飲まずに仕事をして欲しいところである。



「屋根の上だから地理が分かりにくいけど、もうちょっとで中央通りがあるハズよ。そこを思いっきり飛んで一気に引き離すわよ!」

「分かった、頼んだよお姉ちゃん。」

「任せなさい。」



平らな屋根を飛び石の上を歩くかのように軽やかにジャンプしていく二人。

やがてフェゴールが言う通り、この町のメインストリートである中央通りが見えてきた。

町の正門と町の中心とも言える冒険者ギルドを繋ぎ多くの人々が行き来する中央通り、その幅は馬車四台が余裕をもって通れるほどに広く取られている。


その馬車四台分の大きな溝を目の前に、二人は臆することなくその足取りを加速させていく。



「魔法はこっちで合わせるから心配しないでね。」

「心配なんてしないよ、だってお姉ちゃんが付いているから。」

「嬉しい事言ってくれるじゃないベル。さぁ、飛ぶわよ!」

「「せーの!!」」



掛け声に合わせた二人のジャンプは道の幅から考えればはるかに小さい跳躍だったが、タイミングよく発動した風魔法に背中を押されて大きな推進力を得た二人は空を駆ける。

大通りを行く通行人の注目が二人に注がれたが、それも二人が反対側の屋根にたどり着く間の一瞬の出来事であった。



「これだけ距離を離せば……うん、うまく足止め出来ているみたい。」



魔術師ギルドの三角屋根を超えてきた身体能力の高さをもってしてもこの距離は厳しいようで、冒険者たちは先ほどのカギ爪付きのロープを使って地上に降りてからベルたちの方向に向かってきているようだ。

大通りと言うだけあって馬車の通行量も人通りも多いため、それが程よく足止めになっているようであった。


しかしフェゴールの目線は下にいる冒険者には向いていなかった。



「まだ何人かが来るわ、逃げるわよ。」

「うそッ!?」



ベルも釣られてフェゴールの目線の先を追うと、そこには行きかう馬車を足場にして強引に接近してくる何人かの冒険者の姿があった。

馬車の動きに合わせて飛んでいるため二人の現在位置にピンポイントでたどり着くのは難しいようだが、それでも一旦下に降りたグループより早く反対側にたどり付くだろう。


それを見たベルはフェゴールの言葉に従って慌てて走り出した。

逃げる事だけに集中しているベルとは違って走りながらも策を練っている様子のフェゴールだが、この辺りも疲れ知らすの人工モンスターであるマナドールの体だからこそ成しえるスタミナの差が出ているようだ。

流れる汗の分だけ喉が渇いたベルはストレージリングから取り出したスポーツドリンクをクイッと飲みこんで、余った分を再びストレージリング内に戻した。


しばらく冒険者を避けながら屋根の上を飛び回っていると、フェゴールが少し言いにくそうな表情で思いついた事を話し始めた。



「このまま逃げてもいつかは追いつかれるわ。だから二手に分かれましょう。私がここで魔法を使って足止めをした後にベルが向かった方向と違う方に逃げるから。」

「大丈夫お姉ちゃん?」

「もちろん、任せておきなさい。」



その言葉と同時に急停止した後に振り返ったフェゴールは今まで自分たちに使っていた風魔法を冒険者側に向かって放った。

魔法攻撃力が0のフェゴールが放つその魔法に攻撃性能は無いが、少女二人を宙に飛ばす程の強風が向かい風として冒険者たちの間を通り抜ける。


冒険者の位置が離れている事とここまで付いてきた冒険者の能力が高かった事により大した妨害にはなっていないようだが、こうなることが分かっていたからこそベルを先に逃がして二手に逃げることを提案したのである。



「チッ、二手に分かれたぞ!」

「だがあの指輪を持っているベルがパンを持っているんだよな?」

「いや、あのサイズのアイテムならこっそり渡すことも出来るはずだ。だから俺たちも二手に分かれるぞ。下にいるヤツらにも伝えておいてくれ!」

「「了解!!」」



程よく勘違いをしてくれた冒険者もベルたちに合わせて二手に分かれて行動するようだ。

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